ザ・坂の町。山の上の方まで家がびっしり
長崎の坂がすごい、という話はこれまでも何度か取り上げてきた。(すごい坂、ゴミ収集 、バスツアー)
その坂の町で、生活を少しでも楽にするために“珍妙なマシーン”が活躍してるという情報を得た。ので、さっそく見て回ることにした。
マシンを通じて、坂の町での暮らしが見えてきました。
※2005年12月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
独自の工夫
坂に住む人々にとって、階段の上り下りは深刻な問題である。身体が元気なうちはまだいいが、お年寄りにとってはかなり深刻な問題である。そこで、少しでも坂の生活を楽にすべく独自の工夫がとられている。
まずは下の写真を見てみよう
おお、そうか!
長崎では、いちいち坂を上り下りしなくても利用できるよう、電話ボックスの方が移動してくる。
…なワケないだろう
これ、見かけはまったく電話ボックスなのだが、正しくは「斜面移送システム」。階段が厳しいお年寄りのための移動リフトである。
こんなふうに乗る。↓
移動距離は全長80m。最大勾配は32度。
速度は1分間に15m。つまり5分ちょいかかって上まで上がる。
正直、歩いた方がずっと早いのだが、足腰の弱ったお年寄りには有り難いアイテムだ。
「助かるとさね~」
と言って利用されていた。
が、一度に二人までしか乗れないので利用者が多い時はけっこう待たされる。操作パネルの前でマシンを待ちつつ、己の身体の不具合などについて語り合っていた。井戸端会議ならぬマシン端会議だ。
マシンを呼び寄せたり操作するには専用のカードが要る。カードを挿入し、呼出ボタンを押すと上からマシーンが降りてくるのだ。
私はこのカードを持ってないので、今回乗ることはできなかった。
市役所に申請書を出せばカードが手に入るらしいが、利用できるのはお年寄りや身体の不自由な方に限られている。
サンダーバードの一号機は地球上のどこにでも1時間以内で移動できる高速ジェット機だが、長崎市移送システムの一号機はこんな感じ。その名も「てんじんくん」。
平成14年3月に作られた。
ネコが多い坂の町長崎らしく、その辺にはネコもウロチョロ。
本当は私も乗ってその乗り心地を確かめたかったが、意外と利用率が高く、待っているお年寄りが後を絶たなかったため断念。老後の楽しみにとっておくことにして次のポイント(2号機)へと急ぐことにした。
2号機を見に
この手のものは全種類見なければ気がすまない私は、次に別の場所にある2号機を目指した。
ちなみに、今回のネタはWEBマスター・林さんに教えてもらった。私は長崎に住むようになって5年目だがメールをもらうまで、まったくこの存在に気が付かなかった。つまりどういうことかと言うと、およそ普段足を運ばない場所(近所に住んでない限り)にあるということだ。
斜行移送システムがある辺りは階段が入り組み、複雑な迷路のようになってる。さきほどの一号機の時もそうだが、簡単に道に迷える。
しばらく階段を登ったり降りたりしていたら、道端のあちらこちらにホースがあるのが気になった。しかも、なんとなく臭い。
道を尋ねるついでにホースについても聞いてみた。
「あ、さっき汲み取りが来ててね。」
「えっ!?バキュームカーのホースってこうやって置きっぱなしなんですか?」
「いや、今日はたまたま…。」
なにやら肝心な部分は口を濁されよく聞こえなかったが、こういう斜面だと下水の整備も難しく、水洗便所の普及率も低いようだ。
そういえば昔、やはり長崎のかたから
「子供の頃、バキュームカーのホースに片足を乗せて、流れる振動を楽しんでいました。」
というメールをもらったことがあった。
しかも女性からだった。
そして発見
2号機は、だいぶ坂を上がった上の方にあった。
もっと下だろうと思い、けっこう探してしまった。
スッと上空を伸びていくレール。
桜の絵が描いてあるせいか、妙な観光ムードが出ている。この近くには立山公園という桜の名所があるので、おそらくネーミングはそこからとったものと思われる。
が、しかしこのリフト自体は特に展望台や観光施設に向うわけではなく、ただひたすら平常心で住宅地の間を上り下りしてるところがなんとも素敵だ。
2号機は必要なところに作ったというよりも、作れるところに作ったような印象を受けた。というのも、私が行った時は利用者が誰もいなかったから。おかげで、じっくり操縦席を見物することができた。
仕様は一号機とほとんど同じ。
・走行速度15m/分
・レール長51.3m
・最大勾配32度
片道3分半かかるので、やはり健常者なら歩いた方が早い。平成15年6月に完成した。
坂の町・ミニ知識
ところで、坂の町のちょっとした工夫として、ほとんどの階段には白いペイントが施されている。これはどういう効果があるかというと…
上から階段を見下ろしてみると、マークがある方と無い方とでは明らかに見やすさが違う。これにより、降りる時に目測を誤って踏み外す確率が減るというわけだ。
斜行エレベーター
次に向ったのは、同じく坂を登っていく乗り物なのだが
まったく別のソリューションを用いた「斜行エレベーター」というシロモノ。斜行リフトが庶民的なアジアっぽい風貌をしていたのとはうって変わって、こちらは未来的外観を呈している。
ここは長崎市の主要観光資源・グラバー園へと通じる道でもあるため、近隣住民のみならず、観光で訪れた身体の不自由な方にも使って頂こうと、ふんだんに予算を注ぎこんで作られている(たぶん)。
入り口はまるでマンションのエレベーターのような味わい。
監視カメラも付いており、中の様子がわかるようになっている。防犯対策について、かなりいろいろ事前に検討されたんだろう。エレベータの中にはエレベーターガールならぬ、作業着を着たエレベーターおじさんもいた。
ついでにグラバー園にも
このあたりは観光のメッカだけあって、景色がいい。
ついでに近くにあるグラバー園にも足を運んでみた。
グラバー園とは、イギリスの貿易商トーマス・グラバーが住んでいた家と庭園。ぶっちゃけて言えば、綺麗な庭とオシャレな建物がある公園みたいなところだ。グラバーは、坂本龍馬らに鉄砲や軍艦を売るなど幕末の志士を陰で支えた人。キリンビール発祥の地でもある。
動く歩道
園内は広く高低差がある。ここでは「動く歩道」というメソッドにより、やはり坂を登らなくてもいいようになっている。もっとも、グラバーさんが生きていた幕末・明治ではなく最近になっての話だが。
うむ。速いし快適だし、これに乗ってしまうとあのリフトとかはなんだったんだと一瞬思う。(下りがないとか途中で降りられないとかいろいろ違うけど。)
こんな感じで、グラバー園ではお年寄りや足の不自由な人でも観光できるよう、長崎市民向けとはまた違ったカラーで配慮が施されている。
最後に私は、3号機がある水の浦地区へと向った。
最後に、3号機へ
3号機。いきなりハートを鷲掴みにされるこの光景。横のプレハブの天井と道幅の狭さ。すごい。アートだ。
しばし見とれていたり、写真を撮ったりしていたら、通りがかりのおばちゃんが一緒にどうかと声をかけてくれた。
やった! 斜行リフト初体験だ。
斜行リフトの感覚が限りなく徒歩に近いので、普通に通行人と挨拶を交わす。なかなかいい感じだ。
坂を行き交う人々
多くの人々が坂で暮らす町。
制服を着たOLも、ヤクルトのおばちゃんもみな坂を登ったり降りたりしていた。
こういう地域は車で乗り入れることが出来ない。両肩に大量の商品を担いで階段を上がるヤクルトのおばちゃんは、通常より「働いてる感」にあふれていた。
宅配便の配達も…
宅配便の人も現れた。
…っと、これはすごい!!
斜行リフトを見て回ったら、坂で暮らす人々の姿が見えてきた。特に、最後に見たクロネコヤマトの人の登山のような姿には感動した。
私ももっとがんばらねば!
と思った。(何をがんばるのかは不明)