昨年、Salesforce.com(以下、Salesforce)に買収され子会社化されたSlack Technologies(以下、Slack)は、Salesforceが4月27日・28日(現地時間)に米国サンフランシスコで開催するコンベンション「TrailblazerDX」に先だって報道発表を行い、コミュニケーションツール「Slack」の機能拡張を発表した。
発表によれば、Salesforceのクラウドサービス(Sales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloud)へのSlackからの接続機能の標準搭載、Salesforceが提供しているプロセスやビジネスフローの自動化機能「Salesforce Flow」をSlackから利用する機能、さらにはSalesforceが提供するスクリプティング言語「Apex」のSlackからの利用の実現、それらを利用することでSlackとSalesforceのより高度な統合が可能になる。
Slackによれば、いずれも本日から広範なベータプログラムが開始され、Salesforceのクラウドサービスへの接続機能は今夏にGA(General Availability:一般提供)開始となる計画になっている。
Sales Cloud/Service Cloud/Marketing CloudとSlackがネイティブ統合、Salesforceユーザーの利便性が向上
Slackが、セールスやマーケティングなどの顧客管理ソリューション(CRM)を提供するSalesforceに買収されることが発表されたのは、2020年の12月。その後、昨年(2021年)7月に買収が完了したことが明らかにされ、SlackはSalesforceの子会社として運営されている。
そうしたSalesforce傘下の企業となったことで、Salesforceが提供するCRMとの統合などは当初から予想されていたが、Salesforceが4月27日・28日(現地時間)に米国サンフランシスコで開催する予定のコンベンション「TrailblazerDX」に合わせて、SalesforceとSlackのより広範囲な統合が発表された。
Slackのプロダクト&プラットフォーム担当SVPであるロブ・シーマン氏は「SlackがSalesforce傘下になってから、2つのサービスの統合を進めてきた。今回の統合はそうした中でも大きなもので、Salesforceのクラウドサービスのうち最も利用率が高い3つから統合を開始した」と述べ、Salesforceのクラウドサービスのうち、Sales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloudという3つのクラウドサービスへの統合を開始したことを明らかにした。シーマン氏によれば、この統合はSlackのサービスからSalesforceクラウドサービスへ標準で接続する機能になり、企業のIT管理者は2つのIDを連携させるだけで、簡単にSlackから利用することが可能になる。
例えば、顧客管理や営業管理にSales Cloudを使っている企業であれば、SlackからSales Cloudのデータにアクセスし、営業活動の情報などをチームで共有することが容易になる。
Service Cloudであれば、従来はウェブブラウザーに切り替えて使っていた会議室の予約などをSlackから直接アクセスしてSlackのアプリケーションだけで完結することができる。
Marketing Cloudであれば、マーケティングキャンペーンを打つなどのデジタルマーケティングの施策をSlackから行ったり、その情報を容易にチームで共有したりすることが可能になる。そのようにSalesforceクラウドサービスをすでに利用している顧客は、プラグインなどをインストールする必要がなく、ネイティブにアクセスすることが可能になることが利点になる。
なお、シーマン氏によれば「Salesforceクラウドとの統合は今後も進める計画だ。今後、ヘルスケアやアナリティクスなど、他のSalesforceのクラウドとの統合も実現していく。ただ、だからといって従来からできていた他のクラウドサービスとの連携機能が損なわれたりする予定はない。あくまでSalesforceクラウドとの連携が標準機能として提供されるかたちになる」と述べ、SlackがSalesforce専用になるということではなく、Salesforceをすでに使っている顧客の利便性を向上させるための機能強化だと説明した。
[embedded content]
[embedded content]
[embedded content]
Salesforce FlowをSlackから利用できる「Flow in Slack」、ApexをSlackから利用できる「Apex SDK for Slack」
このほかにもSlackは今回、Salesforceとの機能統合を発表している。Salesforceが提供しているプロセス/ビジネスフローの自動化機能「Salesforce Flow」をSlackから利用する機能として「Flow in Slack」を発表した。
Salesforce Flowは「プロセスビルダー」と「フロービルダー」という2つのツールが用意されており、ローコードでプログラムを作成し、自動化されたビジネスプロセスを構築することが可能になっている。
今回、Slackが発表した「Flow in Slack」では、そのSalesforce FlowをSlackから利用できるようにする。それにより同じようにローコードでプログラムを作成し、ビジネスプロセスの自動化などを行うことが可能になる。Slackにもすでに「ワークフロービルダー」と呼ばれる機能が用意されているが、そちらはSlackの中でのさまざまなアクションの自動化に、こちらのFlow in SlackはSalesforce FlowをSlackから利用する機能となる。
また、Salesforceで高度なアプリケーションをユーザーが構築したいときに利用されるプログラミング言語「Apex」をSlackから利用する機能として「Apex SDK for Slack」も提供が開始される。ApexはSalesforceが提供しているAPIなどを活用してより高度なアプリケーションを構築したいときに利用されるスクリプト型のプログラミング言語で、Salesforceの開発者にはおなじみのプログラミング言語となっている。
Apex SDK for Slackでは、そのApexをSlackの「Block Kit」に自動でポーティングして、SlackのUIからSalesforceのデータにアクセスするようなアプリケーションを簡単に構築することができる。前出のFlow in SlackがローコードでSalesforceのデータにアクセスする仕組みを実現できるのに対して、こちらのApex SDK for Slackではプログラミングの知識は必要になるが、より高度なアプリを開発することが可能になるため、独自のプログラマーなどを抱えている大企業などにはうれしい機能拡張と言える。
シーマン氏は「Salesforceクラウドとの統合、Flow in Slack、Apex SDK for Slackのいずれも本日からより広範なベータテストを開始する。Salesforceクラウドとの統合は今夏にGAとなり、それ以外はその後、順次投入される」と述べ、今回発表された3つのSalesforceとの統合(クラウド統合、Flow in Slack、Apex SDK for Slack)はいずれも本日より広範なベータテストが開始され、まず今夏にクラウド統合がGA開始となり、残り2つは順次、GAになっていくと説明した。