エキスパートほど分からないことは「分からない」と言ったほうがいい、その理由とは?

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2019年12月に発見された新型コロナウイルスは、当初未知のウイルスであったため、テレビになどに専門家や学者が出演しては「はっきりしたことはまだ分かりません」と話す光景がよく見られました。その分野で長年にわたり研究を重ねているはずの専門家に「分からない」と言われると不安に感じる人もいますが、むしろそのような専門家ほど信頼されることが、さまざまな研究により分かってきています。

Why we trust experts – even when they admit they don’t know the answer
https://theconversation.com/why-we-trust-experts-even-when-they-admit-they-dont-know-the-answer-172562

新型コロナウイルスのパンデミックは、科学への信頼の欠如が時に重大な事態へと発展するということを改めて浮き彫りにしました。例えば、パンデミックの被害が最も深刻なアメリカで実施されたある調査では、「科学に対する信頼がワクチン接種を受けるかどうかの意志決定をする上で重要な要素である」との結果が示されています。


イギリス・ポーツマス大学の心理学者であるエリック・グスタフソン氏によると、人々が科学を信頼するかは「専門性」「思いやり」「誠実さ」の3つが感じられるかどうかにかかっているとのこと。

3つのうち「専門性」と「思いやり」の根拠になっているのは、2022年2月に発表されたドイツの研究です。パンデミックの発生前である2019年9月と、パンデミック中である2020年4月・5月・11月の4回にわたり合計900人以上を対象に行われたこの調査研究では、パンデミックにより科学への信頼度が大きく上がったことが分かりました。その主な要因は、科学者の専門性に対するポジティブな信念だったとのことです。

一方で、科学への信頼度を下げる要因になったのは、「科学者が研究資金の提供者に依存しているせいで、社会への配慮が欠けていて思いやりがない」とのイメージが持たれたことでした。そのため、論文の著者らは「不信感をあおるような中傷に対抗するには、科学者の目的、関心、価値観を強調することが重要になるのではないでしょうか」と結論づけています。


そして、信頼感につながる「誠実さ」の要因の1つになっているのが、意外にも不確実性、つまりはっきりしていないという点です。一般的に、不確実性があるとイメージに傷が付くと考えられているので、専門家がパンデミックに関する情報提供をしたり、大学の広報担当者が研究の成果を記事にして報告する時には、不確実性がないかのような断定的な表現がなされることがしばしば発生します。

しかし、専門家の発言の中に不確実な部分があっても、それが不信感につながるわけではないことが、近年の研究により分かってきました。助言者の自信が聞き手に与える影響を分析した2018年の研究では、自信満々で断言する助言者の方が好意的に評価されることが確かめられた一方で、どちらの助言に従うかの選択を迫られると、「その可能性が高い」という具合に断言口調ではない表現を用いる助言者のアドバイスの方が選ばれやすかったのだそうです。

グスタフソン氏はこうした研究結果について、「多くの場合、人々は『明確な答えを持っていないと認めることができる人』を誠実な人だと評価し、喜んで信用します。つまり、分からないことを『分からない』と認めたり、間違いを認めたりしても信頼に悪影響はなく、むしろ有益でさえあるということです」と述べました。

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2022年04月23日 23時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1l_ks

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