ロイヤルホストの和風ハンバーグ。と、パン。
ファミレスでハンバーグを頼む時、パンかライスかすごく悩む方である。ライスが無難な気もするが、パンにしてすごくおいしかった思い出もある。
この悩みが自由な選択の醍醐味であり、面倒な部分でもある。
そんなファミレスでの喜びと苦悩は、和風ハンバーグにも等しく開かれているのだ、とある日気がついた。【和風ハンバーグ × パン】という食事が【和風ハンバーグ × ライス】と同じように注文できる。なんだこの世界は。
選択の自由が産んだバグ
多分提供しているファミレスは【和風ハンバーグ × パン】を強くは勧めないと思う。
全てのハンバーグにパンかライスか選べる分かれ道を用意した結果【和風ハンバーグ × パン】というちょっとどうかという道も整備されたのだと思う。選択の自由が産んだバグである。
しかしそれが他のメニューと同じく、普通に頼めるというところに妙なおもしろさを感じて、各ファミレスの和風ハンバーグをパンのセットで食べてみることにした。食べ合わせてどんな味になるのか、そしてファミレスによって差があるのかを確かめてみたい。
ガストの【和風ハンバーグ × パン】
いきなりつまずいた。
「ライスもパンも普通に選べる」というところにおもしろさを感じていたのだが、ガストはかなりライス派であった。どのハンバーグにしても強くライスを勧めてくる。
しかしあるにはある。細い道だが和風ハンバーグとパンの組み合わせは開かれている。
しばらくすると「和風ハンバーグを注文されたお客様ですか?」と店員さんが来た。セットでパンをつけた僕を従業員通用口に連れて行って身ぐるみを剥がすのかと体を硬くしていたが、思いのほか優しい口調で言った。
「ランチタイムはこちらのセットを頼んでいただくとライスとスープが単品の値段で付いてくるので、こちらに変更しておきました」
100パーセントの善意から来る言葉だったが、セットに付いているのはライスだった。パンが取り消され、善意とライスとスープがセットで付いてきた。
「パンに変えられますか?」
と聞いてみたところ、同じ笑顔で受け付けてくれてホッとしたが、【和風ハンバーグ × パン】は理解されにくい食事なのだと実感した。「普通に頼めておもしろい」とか言ってる場合じゃない。
大根おろし、大葉、ポン酢のソースの和風ハンバーグとソフトフランスパン。
最初の印象は「そんなに悪くないな」だった。大根おろしとパンの組み合わせが思っていたほど悪くない。いや、悪くないというか「これはこれで良い」と言っていいと思う。
和風ハンバーグのソースや大根おろしの水分を、ふわふわのパンが受け止めて食べやすくしている。爽やかな塩味と酸味、パンの甘み。さっぱりしたハンバーグとソフトフランスパン。もういいか。もう言おうか。
これはおいしいと思う。和風ハンバーグとパン、合うと思う。合うのかよ…!
ちょっと変わった組み合わせの中に良さを見出そう、と思っていたのだけど文句のつけようのないおいしさがあった。気分によってはライスよりパン、という人がいても不思議ではない。
ハンバーグの食べ合わせを思い出しながらパフェを食べた。わざわざ「和風」と冠したハンバーグが「洋」の象徴たるパンに合うのだ。あれは何だったんだろう。自分の舌に自信がなくなってきた。
ひとまずガストのことをまとめよう。
ガストの【和風ハンバーグ × パン】
ハンバーグ・・・大根おろし、大葉、ポン酢のソース
パン・・・ソフトフランスパン
さっぱりしたハンバーグのソースがふわふわのパンに合う。特に違和感は感じなかった。ただただおいしかった。
和風ハンバーグとパンの相性・・100点
ジョナサンの【和風ハンバーグ × パン】
和風ハンバーグとパンの組み合わせ、非の打ち所のないおいしさだった。
あれをおいしいと思う僕の舌がおかしいのだろうか。それともあれがおいしいのは当たり前のことで、戸惑っている僕の人生経験が足りないのだろうか。
自分を信じられなくなった時は人に聞こう。食べ比べる企画をよくやっているライターの江ノ島さんを呼んだ。
事前に「和風ハンバーグとパンを一緒に食べて感想をもらいたいんです」とだけ伝えてある。素直な感想をもらうために僕がおいしいと思っている、という情報は伏せてある。
ファミレスはジョナサン、上の写真は会社に忘れてきたと思っていたカメラがカバンの中にあった時です。
や、やった…!
ガストでの自分を見るようだった。「悪くないじゃん」というところからじわじわ評価が上がっていくのだ。劇的なおいしさはないのだけど、なんかでも全然悪くないんだよなあ、という気持ちが蓄積して「うまくないすか?」になる。
このあと「水曜日はこれでいい」「おしゃれなサンドイッチみたいな味がする」「ライスよりいいかも」などの感想が出た。水曜日はこれでいい…?
江ノ島さんが最後に「75点ですね。全然合格っていうか、うん」と言うので「100点は何ですか?」と聞いてみた。
カレーだ。そうだ、100点はカレーだ。
ジョナサンの【和風ハンバーグ × パン】
薬味たっぷり和風ハンバーグ・・大葉、大根おろし、玉ねぎ、カイワレ、ポン酢とねぎのソース
タスマニア島ビーフハンバーグ 和風ビネガーソース・・大葉、大根おろし、ポン酢とねぎのソース
パン・・・米粉パン
「薬味たっぷり」の方は野菜に辛味があったが、それがパンにすごく合った。
和風ハンバーグとパンの相性・・100点
デニーズの【和風ハンバーグ × パン】
おいしいと言っていいのだと思う。自信がついたので次は一人でデニーズに来た。
若干のアウェイ。しかしもう大丈夫だ。江ノ島さんが褒めていたんだ。そんな気持ちで『和風ハンバーグ』の方を頼む。
ネギももちろん合う。ハンバーグのソースが濃いめの醤油味でおいしかった。
ファミレスごとの味を比べようと思っていたのだが、どれもしっかりおいしいので「合う、おいしい」としか言いようがない。
パンは石窯ブールで、ガストやジョナサンより食べ応えがあってしっかりパンの味がした。そしてその味が和風ハンバーグのネギや醤油と調和している。パンの味が濃くても大丈夫だ。おいしい。
デニーズの【和風ハンバーグ × パン】
和風ハンバーグ・・・ネギ、醤油ベースのソース
おろしハンバーグ・・・大葉、大根おろし、おろしソース
パン・・・石窯ブール
和風ハンバーグとパンの相性・・100点
ロイヤルホストの【和風ハンバーグ × パン】
4カ所目、最後に雰囲気の違うファミレスに来てみた。
一段階高級なイメージのあるファミレスである。せっかくなので家族で来た。
ホテルのパンだ。自分でも意味がよく分かっていないが「ホテルのパンじゃん」と思った。すごくいい匂いがした。
もちろんおいしかった。パンとかハンバーグとか大根おろしとか、全部が想像より一段階おいしい。合う。もちろん合う。
ただ「良いものなのにトリッキーな食べ方していいのかよ」という気持ちがほんの少しあった。真正面からライスで食べてもすごくおいしかったのだと思う。
「おいしいおいしい、全然おいしい。いや、そりゃあさ、おいしいよね。」という感じの反応だった。和風って言ったってハンバーグなんだからパンに合うでしょう、そりゃあ、と。
やはり僕は当たり前のことを延々書いていたのだろうか。
ロイヤルホストの【和風ハンバーグ × パン】
あつあつ鉄板 和風ハンバーグ・・・大葉、大根おろし、おろし醤油ソース
パン・・・英国風パン
スタンダードな和風ハンバーグとサクサクでもちもちの英国風パン。すごくおいしいんだけど、食べ慣れてないせいで普通に食べたらもっとおいしいのかなという疑問がちらつく。
和風ハンバーグとパンの相性・・100点
当たり前のような、ささやかな発見のような
「和風」ハンバーグなのにパンが普通に選べる。食べてみると意外とおいしい。
当たり前のような、ささやかな発見をしたような微妙なラインの話題になったが「合わないでしょ」と思った方にこそ試してみて欲しいです。
「悪くはないかも」→「これはこれで」→「むしろこれは…」→「いや、…うまくないすか…?」になると思う。きっと世界が広がるから。どうでもいい方向に。
全部に100点を付けてしまった
食べ比べて優劣を付ける予定だったのだけど、全部100点になってしまった。強いて一番好きだったところを挙げるとしたら、ハンバーグにネギが乗っていたデニーズです。個人的な好みです。