さまざまなセンサーからのデータをエッジで処理したりクラウドに送信できるIoTプラットフォーム「Gravio」を活用すると、今までアナログ管理するしかなかった情報をデータベース化できる。
例えば、飲食店なら、冷蔵庫の温度や湿度、個室のCO2濃度、トイレの利用頻度などのデータを蓄積し、グラフで確認できるのだ。数値化することにより、冷蔵庫に物を詰めすぎとか、人を入れすぎといった状況に気が付いたり、トイレの清掃頻度の最適化が行える。スイッチセンサーを利用すれば、テーブルからスタッフを呼び出すこともできる。
前回は、Gravioのセットアップから温度・湿度センサーのデータ取得設定まで行なったので、今回は実際に、筆者が経営する店舗「原価BAR」に設置して試してみた。
冷蔵庫の温度・湿度を計測・記録すれば、電気代の節約にも?
飲食店で使っている冷蔵庫はもちろん金属の扉だが、7~8m離れたところに設置した「Gravio Hub」と問題なく通信できた。30分おきに温度と湿度を計測し、データをExcelファイルに保存。問題がなければ、24時間分を記録したExcelファイルが朝10時にメールで送られてくる。もし、規定の温度を超えた場合は、異常を知らせるメールがすぐに飛ぶように設定した。
トリガーとアクションがきちんと設定できていれば、問題なくメールが届く。一切プログラミングなどしていないのに、自分でいっぱしのシステムを組み上げたみたいで気持ちがいい。
実際、温度や湿度の変化を年間通して記録できれば、冷蔵庫の設定を最適化して電気代の節約にも役立てられる。条件となる温度は自由に設定できるので、熟成庫やワインセラー、ペットルームなどの監視にも活用できるだろう。
使い方はアイデア次第! テーブルやレジの「呼び出しボタン」もIoTで
次に欲しかったのが、テーブルの顧客がスタッフを呼び出すチャイムだ。テーブル数が多かったり、個室がある飲食店ではぜひ欲しいアイテムなのだが、本格的なシステムだと高額になりがち。
そこで、Gravioのシングルボタンが呼び出しチャイムとして利用できるのかチェックしてみた。
温度センサーと同様、まずは「Gravio Studio 4」でセンサーを認識させ、アクションを作成する。今回はビジネスチャットサービスの「LINE WORKS」に通知を飛ばすようにしてみる。ほかにも個人用の「LINE」や、「Slack」などに送信することも可能だ。
LINE WORKSに通知する際は、「LINE WORKS Developer Console」でAPI IDやConsumer Key、Server Token、Server ID、Bot Noなどを取得し、アクション設定に入力する。
送信先のトークルームIDも必要になるのだが、これがちょっと面倒。Chromeブラウザーの「デベロッパーツール」を起動して検索できるが、見つけにくいこともある(ASCII.jpに執筆した記事「kintoneからLINE WORKSへ通知を飛ばす方法を徹底解説」を参照)。そこでオススメなのが、送信したいトークルームに何か送信し、管理画面の「監査」→「トーク」で検索する方法。送信したメッセージを見つければ、トークルームIDも分かるのだ。
アクションは「LINE WORKS」の1ステップだけで設定完了。ボタンを押したら、1~2秒でトークルームにメッセージが届いたのには驚いた。クラウドを経由するのでもう少し時間がかかると思ったが、このレスポンスなら十分実用的だ。
もちろん、複数のスイッチをテーブルごとに配置することも可能。トリガーの設定でテーブルナンバーごとに物理デバイスIDを設定すれば、識別できる。あとはそれぞれに対応するアクションを設定すればいい。
ほかにも、できあがった料理を取りに来てもらったり、レジに置いて呼び鈴代わりに使ってもらうことも可能。飲食店だけでなく、スモールオフィスの入り口に設置して呼び鈴代わりにしたり、会議室に置いてお茶を運んでもらったりしてもいいだろう。
ちなみに、2つボタンの付いたダブルスイッチもラインアップしている。例えば、左側はオーダーで、右側は会計に割り振っておけば、会計時にスタッフが来る動作を1つ削減できる。活用シーンはアイデア次第で、作業開始と作業終了に割り振り、作業時間の計測に使っている企業もあるという。
「ドア・窓開閉センサー」をトイレに設置、利用頻度を分析
「ドア・窓開閉センサー」では、センサーユニットと磁石を使い、ドアや窓の開閉を検出できる。今回はトイレの扉に付けて情報を取得してみた。Gravio Studio 4にセンサーを追加し、「データビューア」で取得するデータを確認してみた。
磁石がセンサーから離れれば「Open」と認識され、元の場所に来れば「Closed」となる。この1セットで扉の開閉をカウントできるというわけだ。
この情報をExcelやGoogleスプレッドシートなどに記録すれば、時間帯ごとに何人利用しているかを分析したり、平均利用時間を算出したりできる。
原価BARのトイレの場合、中に人がいてもいなくても扉は閉まっているが、空いているときは扉が開いているようなタイプであれば満空情報も取得できる。誰かが利用中ならライトを赤く点灯させるといった使い方も可能だ。
柔軟な組み合わせで「欲しい機能」を自分で構築できる
Gravioセンサーには、アクション設定で緑・青・黄・赤の4色に点灯できる「Gravioライト」や、16×16ドット表示できるLEDディスプレイ「Gravio LED Matrix」といったデバイスもラインアップしている。センサーと組み合わせることで、単にデータを取得するだけでなく、リアルタイムのアウトプットにも活用できる。
例えば、CO2センサーと組み合わせ、リアルタイムのCO2濃度を表示し、指定した数値を超えたらライトを赤く点灯させ、換気を促すといったことも可能だ。もちろん、同時にLINE WORKSやSlackに濃度を通知したり、kintoneやGoogleスプレッドシートにデータを溜めていくこともできる。
ほかにも冒頭で紹介した冷蔵庫の温度を監視する際、営業中はメールを見られない、というのであれば、Gravioライトを利用して異常時には赤く光るようにしておけばいい。
オフィスの入り口に人感センサーを設置し、来客があったらライトを光らせて、すぐに応対できるようにしておくことも可能。展示品を振動センサーで監視し、誰かが触ったらライトを赤く点灯させてもいい。
豊富なセンサーとPC内のファイルやクラウドサービスを柔軟に組み合わせて、欲しい機能を自分で構築できる「Gravio」はとても便利。運用して気になるところがあれば、すぐに修正できるのでPDCAを高速に回して結果に繋げられる。
店舗やオフィスの情報を見える化したい、というニーズがあるなら、まずは月額500円の「ベーシックプラン」で試用してみてはいかがだろうか。Gravio Hubの代わりにPCを使う必要があるが、低コストで4つまでセンサーをレンタルできる。業務で活用できそうなら、月額2万2000円の「スタンダードプラン」にすればいい。こちらは、Gravio Hubに加えて、20個までセンサーをレンタルできる。