乙幡啓子さんといえば当サイトで長く活躍を続けるライターだが、いっぽうで今やすっかりとんちクリエイター日本代表選手のひとりになってしまった。妄想をふくらませ工作で具現化する妄想工作家として次々にアイディアあふれる作品を作り出している。
ほっけの開きをポーチ化した「ほっケース」や、「犬神家の一族」の有名なシーンである湖面から突き出た死体の足、あの形の氷が作れる製氷機などの作品がのちに商品化され大ヒットするなどその活躍はとどまるところを知らない。
そんな乙幡さんが、急にその創作に「張り子」を取り入れるようになった。
2020年と2022年に行われた2回の展示の様子を通じ、乙幡さんの「救う張り子」について語らせてください。
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いきなり、しかも大量の張り子を発表した
2020年、ショップでありギャラリーでもある西小山の「umi neue」で行われた展示「妄想民藝店」。
ここで、いきなり全17体、乙幡さんは新作の張り子を発表した。いきなりである。助走なしのトップスピードだった。
張り子というと、一番有名なのはやはりだるまだろう。それから赤べこや犬張り子など、古くからある民芸品のいちジャンルというイメージだ。
それを令和のいまゼロからしかもゴリゴリ17種類もひねり出すとは、ホビー業界ではもしかしたらある話なのかもしれないけど、意外だった。
ただ、いっぺん驚いてからよくよく思い出してみると、かつてから張り子へのリスペクトが、記事を通じた工作からも薄々漏れ出てはいたのだ。
さらにさかのぼって2013年には、のちに商品化もされる、ケルベロス風の赤べこも、これは既成の赤べこを改造するかたちで作っていた。
「助走なしのトップスピードで張り子を」というのには間違いはないと思うが、そこを走る道をこつこつ舗装していたのだ。
ライカは宇宙人が保護しました
さらに「妄想民藝店」で発表された作品をみると、乙幡さんが張り子へそそいだ意欲、かけた情熱の詳細も一気に伝わるものがあった。
それぞれの作品にまつわるコンセプトが特徴的なのだ。
すりきれた言葉で存在を軽くしてしまわないか少し心配だが、あえていうと、ものすごくエモい。
たとえば「宇宙保護犬ライカ」。
ライカといえばご存じスプートニク2号に乗って1957年に宇宙に旅立った犬の名前である。スプートニク2号は大気圏再突入ができない、つまり地球に戻ることが前提とされない宇宙船だった。ライカの話を聞くといつも悲しい気持ちになる。
そのライカが、張り子では宇宙人に保護され笑顔だ。
そのほかにも、あのエピソードや、このエピソードの主人公たちが張り子を通して新たな世界線を生きてくれている。
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