迷走する感染研の超過死亡

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コロナパンデミックの影響を総括するために、超過死亡数を推定することには、 大きな意義があります。 そのため、これまで厚労省のアドバイザリーボードでは、1か月に1回の頻度で国立感染症研究所(以後、感染研と略す)のデータに基づき、 超過死亡について報告がなされてきました。 ところが、2021年末の報告以降、少しずつ超過死亡数の報告の仕方が変更されているのです。 感染研の超過死亡ダッシュボード 自体の変更はないのにも拘わらず、超過死亡の内容が変更されていくのは不可解な話です。

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まず、2021年12月の超過死亡の報告を見てみます。

第63回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年12月16日) より引用してみます。

超過死亡数のみが報告されています。 2021年12月以前の報告は、超過死亡数のみの報告です。 この報告の仕方には疑問を感じたため、 私は年末に質問書を厚労省に送付しました。

次に、2022年1月の報告を見てみます。

第69回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月26日) より引用してみます。

超過死亡数のデータに過少死亡数のデータが追加されました。 ただし、この書き方では、超過死亡数と過少死亡数の関係がよくわかりません。 単純に読みますと、2020年の超過死亡数は1412-11552です。過去の報道とは異なり、2020年の超過死亡数はプラスであったように読めます。

最後に、最新の報告をみてみます。

第76回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年3月15日) より引用してみます。

超過死亡数と過少死亡数に新方式が追加されました。 新方式では、A県の超過とB県の過少が打ち消し合うため、日本全体の超過死亡数は小さくなると説明されています。 また、「その他の先行研究でも日本を評価する際はこちらの方式が採用されており、比較可能性も高い。」と記載されています。

「その他の先行研究」が何を指しているのかよく分かりませんが、他で公開されている超過死亡数との比較を気にするのであれば、 変更するべき点は、今回の変更点ではないと、私は思います。 過少死亡数(Exiguous deaths)という用語は、私が調べた限りにおいて、超過死亡数を扱う他のWebサイトでは使用されていません。 したがって、比較可能とするには、報告において過少死亡数という用語の使用をやめるべきなのです。

X=観測死亡数-予測死亡数

Xは週ごとに計算され、プラスの場合は超過死亡数に加算され、マイナスの場合は過少死亡数に加算されます。 したがって、Xの合計すなわち正味の超過死亡数は、超過死亡数より過少死亡数を引いた値となります。 なお、海外のWebサイトでは、Xがマイナスの場合は、超過死亡数はマイナスの数値として表現されています。 報告書には、超過死亡数から過少死亡数を引いた正味の超過死亡数のみを記載すれば十分と、私は考えます。

最後に、今回の変更により、どのくらい数値が変化したのかを計算して表にまとめてみました。 下の表が変化した数値の表です。

超過死亡数の上限値の変動値は、9,609~14,971であり、数値は大きく減少しています。 これに対して、正味の超過死亡数の上限値の変動値は、171~548であり、数値の変動は大きくありません。

これは、相殺人数が更に相殺されたためと考えられます。 式で表してみますと次のようになります。

新方式の超過死亡数=旧方式の超過死亡数-相殺人数1
新方式の過少死亡数=旧方式の過少死亡数-相殺人数2

新方式の正味の超過死亡数=(旧方式の超過死亡数-旧方式の過少死亡数)-(相殺人数1-相殺人数2)

日本のマスコミは、アドバイザリーボードで公開された数値を元に記事を書いています。 国民は、報道された数値を信用しますので、感染研の責任は重大です。 感染研は、過少死亡数という用語の使用をやめて、海外のWebサイトと比較可能な数値でデータを公開するべきです。 またマスコミは、アドバイザリーボードのデータを鵜呑みにせず、ダッシュボードより直接データを取得し、 用語の概念を十分理解した上で記事を書くべきだと、私は思います。

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