ひとめ見ただけで、理屈抜きに惚れてしまうカプセルトイがある。海洋国ニッポンの発展を支えてきた底力、「水産業の従事者」をテーマにしたフィギュアである。猫だけど。
「はたらく猫」と題したバンダイの新商品。荒ぶる海を背負って漁港にいそうな、渋すぎる男と女をご覧いただきたい。
・「はたらく猫 ~水産業を支える猫たち~」(全5種 / 税込300円)
まずは「漁師(網)」という灰色猫が出た。(網)とあるのは、ほかに一本釣りバージョンがあるからだ。身長5cmほどで、最近のカプセルトイの大型化を考えると「小さめのフィギュア」といえる。
サロペット? チェストハイウェーダー? を身につけゴム長靴をはいている。頭にはねじりハチマキ。小さいのに安定感があってしっかり自立する。このクオリティは素晴らしい!
手に持っているのは大きなグリーンの網。本当に漁港にいそう! 背景に大海原が浮かぶような、まさに「海の男」である!
漢(おとこ)の背中に、どこからか「プロフェッショナル 仕事の流儀」の音楽が流れてくる……
────そのとき猫井は思った。何度も挑んでは敗れ、超えられなかった居間の金魚(かべ)に対峙するときが来たと……!
一転して、こちらは「すし職人」。真っ白い毛並みに眼光鋭く、思わず「大将」と呼びかけたくなる風格である。
手には、これからさばくのであろう鯛を持っている。あるいは金魚だろうか。
雪駄(せった)がやたらと大きくて、足からはみ出しているのにヤラれた! このシリーズ、すべての猫が仁王立ちで、「可愛く見せよう」というポージング意図がまったく感じられない。
にもかかわらず、なんだこの足元は! 破壊力がありすぎる!! けしからん!
続いて出てきたのは「海女さん」。頭部が白いから「白猫かな?」と思ったのだけれど、これはおそらく白頭巾をかぶっているから。
磯メガネが、ちゃんとウィスカーパッド(ヒゲの生えるぷっくりした部位)の上にのっている!! 芸が細かい!
桶に入れているのは真珠をとるアコヤガイかな?
NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で一躍有名になった岩手県の海女さんは、かすりの着物でウニをとる。今回のフィギュアのモデルはおそらく三重県の海女さん。なぜか服を着ていないけど、本当は白い磯シャツだ。
海女さんが貝や海草をとる漁師だとすれば、こちらは魚をとる「素潜り」の漁師!
「どうして鼻が赤いの?」と思ったら、これはきっとシュノーケル用マスクの鼻カバーだ! よくできている。
足にはちゃんとフィンをつけているぞ。
このにゃんこも、なぜか服を着ていない。先述の「漁師(網)」や「すし職人」が、ちゃんとコスチュームをつけているのに対して、えらい違いである。
現代では素潜り漁でもウェットスーツを着るのが一般的だとは思うが、より原初的なスタイルを表現しているのかな? かつて子どもたちは海や川で素潜りして遊んだというし……。
そういえば海女さんも昔は半裸で漁をしており、服を着るようになったのは近代になってからだという。まさか、そういった時代背景まで考慮しているのか……!(たぶん違う)
ちなみに筆者は、泳げないのに興味本位で体験シュノーケリングを申し込んだ結果、最初から最後までインストラクターさんに浮き輪を引っ張ってもらったうえに、ウェットスーツが脱げなくなって女子トイレで死ぬ思いをした経験がある。
・続編を熱望
ラインナップは全5種で、筆者が入手できなかった残るひとつは「漁師(一本釣り)」だ。
危険な仕事なので救命ベストとヘルメットを着用しているのだが、ヘルメットが猫耳の形に変形しているのがポイント! 鉄腕アトムみたいで可愛すぎる……。
どうでもいい豆知識だが、同じくヘルメットをかぶっているキャラクター「仕事猫」は、耳だけヘルメットから飛び出ているタイプだ。
今回の商品、「はたらく猫」シリーズとして続編を熱く希望! 農業で働く猫とか、製造業で働く猫とか、たくさん作ってほしい!
2022年3月の第5週発売だったので、まだまだ店頭で入手可能だと思う。ビビッと来た方は、ぜひお手にとっていただきたい。