アシックス、 ゼロパーティデータ 戦略へ 本腰を入れる:D2Cチャネルの構築を急ぐ

DIGIDAY

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サードパーティ製Cookieを使用する手法の終了が近づくにつれ、フットウェアブランドのアシックス(Asics)はデータ収集戦略を再構築し、同社のダイレクト販売の買い物客のゼロパーティデータをさらに多く収集するために注力する準備を行っている。

同社は過去1年間にわたり、消費者に自らのライフスタイルやランニング習慣についてより多くの情報を共有してもらえるよう、自社ウェブサイトのブラウジング機能をテストしてきた。同社はこれをゼロパーティデータ戦略と呼んでいる。ゼロパーティデータとは、ユーザーがショッピングジャーニーを開始するとき自発的に提供する情報を意味する。このような情報には、顧客がアカウントを作成したり、買い物をしたりする前に渡す情報も含まれる可能性があり、消費者がアシックスの商品に興味を抱いた理由を推測するために極めて重要なものであると、同社は述べている。

アンケートの回答率は90%

アシックスのグローバルロイヤルティマーケテイング担当ディレクターであるジェニファー・ホス氏は「当社はすでに、会員について良いデータを保有しているが、もっとも重要なのは現時点において適切かどうかだ」と述べている。同社は過去に既存のユーザープロファイルに依存していたが、それはすぐ古いデータになってしまう可能性があると、同氏は言及する。「当社は、『データを収集するが、あとのことは知らない』精神を抜け出したいと考えている」と同氏は説明する。

同社は、リアルタイムブラウジングのあいだに商品をおすすめする機能もさらに推し進めてきたと、ホス氏は語る。アシックスは過去数年間にわたり、エンゲージメント・ソフトウェアのプロバイダであるジェビット(Jebbit)と共同で、各種のエンゲージメントツールの実装に取り組んできた。

ジェビットのCMOを務めるパム・アーリックマン氏は、アシックスの場合、獲得したデータの多くが、ランナーで構成されるコア顧客を、さまざまな特性でセグメント化することを中心としていると語る。

「この目的のため、ルックブックやクイズなど、初回訪問者向けのさまざまなインタラクティブ機能を作成した」と同氏は述べている。またアシックスは閲覧しているあいだにもトリビア的な質問も取り入れており、「靴は履いたあとでも返品できますか?」といった質問を投げかけるようにした。その後、顧客が同ブランドのロイヤルティプログラムであるワンアシックス(OneAsics)に登録すると、「ランニングを行う理由は何ですか?」など、顧客の好みをさらに絞り込むための質問を問いかける。

これらの機能は、同社のデジタル販売が成長してきたこの2年間、特に効果的に働いた。たとえば、ウェブサイトとメールでのアンケートの回答率は現在90%に達している。さらに同社は、ユーザーのライフスタイルデータに基づいた予測閲覧モデルを開発し、現在までに4万5000を超えるペルソナのバリエーションを取り込んでいると、アーリックマン氏は語っている。

アシックスがテストしたデータ収集ツールのうちでもうひとつ効果的だったのは、ウェブサイトのポップアップでメールアドレスを入力させるものだったと、ホス氏は語っている。これらのメールアドレスは「ウェルカムメール」の送信に使用され、このメールには顧客の閲覧履歴に基づいた各種の商品マッチングクイズが含まれている。

ロイヤルティプログラムでも導入

しかし重要なのは、特定の情報の提供をいつ求めるかだ。

「当社は、一部のデータポイントはデリケートなものだと気づいた」とホス氏は述べている。たとえば、アシックスは一連のウェルカムメールの後半になるまで、顧客の誕生日を質問することを控え、質問するときは誕生日割引と引き換えにする。「何もかもいっぺんに質問して顧客の気分を削がないように心がけている」とホス氏は述べる。また同社は、北米の顧客向けにSMSプログラムのテストを準備しており、このチャネルで得られた情報をデータ収集戦略に組み入れたいと考えていると、同氏は語っている。

さらにアシックスは、データの投稿を促すため、さまざまな地域でランニングレースの懸賞を実施している。「ランニングのライフスタイルに関する具体的な質問に回答してもらうのと引き換えに、今後開催されるレースに無料でエントリーできるようにしている」とホス氏は説明している。

また同社は、リアルなイベントとのアクティベーションを、ゼロパーティデータ収集戦略に取り入れることも試みている。これは主に、事前に顧客に参加を推奨することによって行われる。たとえば同社は今年7月に、世界陸上競技選手権(World Athletics Championships)で5kmランを主催するが、ユーザーの参加を促す方法を模索している。「我々がイベントを主催するのははじめてなので、顧客のあいだで話題を集める機会にしたい」とホス氏は述べる。

こうした自社顧客データベース構築の取り組みに伴い、アシックスは2017年に開始したロイヤルティプログラムも、ゼロパーティデータという目標を的確に反映するよう改訂を加えている。

そのひとつが、アシックスの保有するレース編成プラットフォームのレースロースター(Race Roster)と、フィットネストラッキングアプリのランキーパー(Runkeeper)を統合することだと、ホス氏は言う。これは、ブランドとサービスの大きな枠組みのなかで、より多くのロイヤルティの報酬をユーザーに提供することも意味している。「我々の購入サイクルは長いため、純粋にトランザクションから得られる報酬では意味がない」と同氏は述べている。

サードパーティデータからの脱却をめざす各社

サードパーティによるデータ収集からの脱却は、大手ブランドにおいてもスタンダードになっており、ナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)なども独自のD2Cチャネルを構築しはじめている。

フォレスター(Forrester)のアナリストであるメアリー・ピレッキー氏は、顧客に自らの情報を積極的に提供させるのはデリケートな問題であり、小売ブランドは、それを配慮して行う方法を考えようとしている、と語っている。

「プライバシーのトラッキングの変更に伴い、マーケティング担当者は数年前ならアクセスできたデータにアクセスできなくなった」とピレッキー氏は述べる。このためアシックスのような大手ブランドは、D2Cチャネルの構築を成功させるために不可欠なユーザー情報を求め、より積極的な行動を起こすことを迫られたと、同氏は語る。

同氏は次のように述べている。「当社は、米国の成人の37%が、データをブランドに共有しないと回答したことがわかった。しかし、これは誇張された数字で、金銭的な報酬やほかのインセンティブによって変えることができる」。

アシックスにとって、ゼロパーティーデータの収集は、どのような利用者が、どのような理由で同ブランドのウェブサイトを訪問しているかを理解するためのものだ。「コアなオーディエンスに関する最新情報を常に保有していることが重要だ」とホス氏は述べている。

[原文:Inside Asics’ strategy to collect more zero-party customer data]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Jebbit/Asics

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