先月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵攻が長引くにつれ、両軍の兵士はもちろん、非戦闘員であるはずのウクライナ国民の死傷者数も増え続けている。この状況を受け、国連などで紛争凍結を指揮し、日本政府特別代表としてアフガニスタンの武装解除を担当した東京外語大学の伊勢崎賢治教授がウクライナのゼレンスキー大統領のある発言に注目。「国家元首としては言ってはいけないこと」と懸念を示した。
これまでに両国の代表団の間で4度の停戦交渉が行われるも、いずれも合意には至っていないが、停戦交渉や和平交渉というものについて伊勢崎教授は「例えばプーチンさんにとっては、ロシア国民に対して、敗退。つまり、戦争を諦めて負けて帰ってくる。そうではない見せ方が必要。一方、ゼレンスキーさんにとっては、ウクライナ国民に対して『降伏ではない』という、その中間点を探すことが調停の意味」とその難しさを説明。
加えて停戦合意の足かせになっている3つのポイントに武器供与、義勇兵、世論の熱狂を挙げた伊勢崎教授は、ウクライナにおいて多くの一般市民が犠牲になっていることにも言及。その理由についてゼレンスキー大統領のある言動に注目すると「負けに見せない政治交渉をして、市民を守るのが政治家、国家元首の役目なはず。その点、ゼレンスキーさんはその方向に向かっていない」と懸念を示すと次のように私見を述べた。
「第二次世界大戦中のレジスタンスと混同している。第二次世界大戦のあと、国際人道法という国際法で『戦争が起きてしまったら、戦闘員と戦闘員が正々堂々と戦いなさい。戦争犯罪になるので、非戦闘員つまり、市民は絶対に巻き込んではいけない』という考え方が強くなった。しかし、最初から国家元首が『市民を武装する』と言ってしまったら、市民を殺すことは戦争犯罪なのに、ロシアからすれば“市民ではなく戦闘員”という言い訳になる。本来であれば、現代においては、『市民に銃をとれ』とは言ってはいけない。負けに見せない政治交渉をして、市民を守るのが政治家、国家元首の役目なはず。その点、ゼレンスキーさんはその方向に向かっていない」