欧州宇宙機関(ESA)はロシアの国営宇宙開発企業Roscosmos(ロスコスモス)との共同ミッションである火星探査計画「ExoMars(エクソマーズ)」を中断すると発表しました。ここでも、ロシアによるウクライナ侵攻の影響が出ています。
ExoMarsは2部構成のミッションで、2016年には火星の大気の化学的構造を研究する観測衛星が打ち上げられており、今年は科学者ロザリンド・フランクリンにちなんで名付けられた火星探査車が打ち上げられる予定でした。
やっと打ち上げにこぎつけた探査車のミッションですが、10年前に資金の調達こそできていたものの、技術面での遅れと新型コロナウイルスの影響で2022年秋へと打ち上げが延期されていました。先月、ロシアがウクライナに侵攻するまでは実行可能な日程だと思われていました。
ESAは侵攻が始まった直後のリリースで「加盟国によってロシアへの制裁が実施されています」として「制裁と諸般の事情から2022年の打ち上げの可能性はかなり低くなりました」とコメントしていました。
今週パリで行なわれたESAの評議会は、満場一致でESA局長にRoscosmosとの協力関係を一時中止し、Roscosmosの関与がなくてもExoMarsを打ち上げられる方法を研究するよう認めています。
ExoMars以外でも、ロシアの侵攻に対しては科学分野での制裁が行なわれてきました。先週、CERNはウクライナへのサポートを明言し、ロシアの機関との新たな共同研究には着手しないと発表。2月にはRoscosmosのCEOドミトリー・ロゴージンがアメリカの制裁措置のせいで国際宇宙ステーションが落下する恐れがあるとほのめかし、引退したNASAの宇宙飛行士スコット・ケリーとツイッターで口論を繰り広げました(どうやらNASAは快く思っていなかった模様…)。
ESAは最新のプレスリリースで、数週間のうちにロシア抜きでExoMarsを進めるための代替手段を提案する会合を開催する予定だと発表しています。