TVで反戦訴え行動 関係者に一石 – 島田範正

BLOGOS

日本で言えばNHKの「ニュースウオッチ9」のようなニュース番組の本番中に、「戦争反対」を叫び、「あなた方は騙されている」と大書したプラカード風の紙を持ってスタジオに乱入した、ロシアのチャンネルワンの女性プロデューサー、マリーナ・オフシャンニコワ(Marina Ovsyannikova)さんが、局に辞表を出したと共同通信がロシアの独立系メディア、メドゥーサの情報として報じました

まあ、実際問題として、今後、彼女が国営テレビでジャーナリストとして活躍できる余地はないでしょうし、それも覚悟の上での行動だったでしょうから驚きはありません。逆に世界中にその名を知られることになったことで、発言の場が広がったのかも知れません。また、彼女の行動を契機にテレビジャーナリストの辞職も相次いでいるようで、その意味でのケジメでもあるのでしょう。

さる16日に、ロイターが特報としてロンドン発で伝えた記事によると、マリーナさんは、ロシアからの独立を目指して戦い、制圧されたチェチェンの激戦地グローズヌイで育ったことから、ウクライナからの悲惨な画像を目にして、子供の頃の悲惨な思い出に揺さぶられたとのことです。

[画像をブログで見る]

そして「私は自分を英雄だとは全く感じていない。私はこの犠牲が無駄でなかったと感じたい。そして人々が目を開くのを望んでいる」などとあくまで気丈です。

今後、罰金刑とは別に、15年の懲役が課される恐れがあるものの、11歳と17歳の子供の母親であるマリーナさんは、ロシアを離れるつもりはないとのことです。

一方、今月3日に放送停止を命じられた独立系テレビ「TV Rain」の番組ホストだったデニス・カタエヴ(Denis Kataev)さんは、英ガーディアン紙への投稿で、「彼女はロシアでのプロパガンダとの大きな戦いにある意味で勝っている」とし、チャンネルワンの持株会社VGTRK内の情報筋の話として「ニュース番組のスタッフの多くも辞任を検討している」と書きました。

さらに、「この話はソーシャルメディアで膨大な量に達し、厳格で親政府的なテレビ局で働く人には新しい感覚だ」とし、「(ニュースキャスターの背後にマリーナさんが映った)わずか3秒間の放送で人々に刺激を与えた。彼女の行動はおそらく歴史に残る」と絶賛しています。

事実、BBCによれば、彼女の行動から数時間後に、3人のジャーナリストの辞任が明らかになったとそうです。

その3人とは、チャンネルワンの同僚だったヨーロッパ特派員のZhanna Agalokpvaさん、ライバルテレビ局NTVで2006年からニュース司会者を務めていたLilia Gildeyevaさん、NTVで30年務めていたSergey Brilevさんとのこと。

またロシア国外でも有名なデジタルメディアRT(かってのRussia Today)でもたくさんのジャーナリストが辞めていて、ロンドン特派員やフランスRTの司会者などが含まれるそうです。

それに、マリーナさんの行動がどの程度、影響したかはわかりませんが、カタエヴさんの言うように、政府に従順な内容を流してきたロシアのメディア関係者に一石を投じたことは間違い無いでしょう。こうした動きが、広くロシアの国民に届き、プーチンのウクライナ戦争への反対機運が高まることを願わずにはいられません。