河野太郎氏に聞くSNS発信の利点 – BLOGOS編集部

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撮影:弘田充

Twitterでフォロワーからの恋愛相談に応え、ブログで政策を解説。YouTubeでは生配信ライブで国民と交流する。

国会議員の中でも屈指のTwitterフォロワー数・242.3万人(2022年2月2日現在)を誇る自民党の河野太郎氏(広報本部長)は、インターネット黎明期からSNSなどを通じて情報発信を続けている。

昨年10月の第49回衆議院議員総選挙をはじめ、政治家のSNS活用が当たり前になった現在。

1996年の初当選時代からメールマガジンを始め、その後もブログ、Twitter、YouTubeなど複数のメディアを使いこなしてきた河野氏に、ネットを使った政治家の情報発信のあり方について、BLOGOS編集長の田野幸伸が話を聞いた。(文:川島透)

「河野太郎が変なことをやっている」と思われていたネット黎明期

弘田充

――BLOGOSがその年に注目を集めた参加ブロガーを表彰する「BLOGOSアワード」で、初代(2011年)の議員賞に選ばせていただいたのが河野議員でした。あれから10年が経ちましたが、この間にご自身や政治家の情報発信に対する姿勢に変化はありましたか。

多くの人がブログやSNSを当たり前に利用するようになり、政治家も例外なくネットサービスを使うような時代になったというのが大きな変化のひとつですね。

私がメルマガやブログを始めた90年代は、まだネットを使う人が少ない時代で、ブログというサービスの存在自体があまり知られていませんでした。そのような中で始めたわけですから、「河野太郎が変なことをやっている」と周りには思われていたでしょう。

ブログの名前は『ごまめの歯ぎしり』ですが、始めてしばらくした頃、森喜朗さんに「お前の“ミミズのなんとか”読んでいるぞ」と名前を間違われることもあって(笑)。でも、ブログの存在を知ってくれているんだと嬉しかったですね。

そこから地道に続けて、一般の方にも少しずつ認知されていくのを感じました。

弘田充

――河野議員は国会議員の中でも屈指のTwitterフォロワーを抱えていらっしゃいます。ここまで影響力のあるツールになることを想像されていましたか。

Twitterは完全に暇つぶしで始めたので、遊んでいるだけですね。140字という字数制限の中では政策については書ききれません。そのため「Twitterは暇つぶしで、政策についてはブログとメルマガで読んでもらう」などと使い分けています。

「匿名は相手にしない」というルールでやっている

――ネット社会では過去の発言や発信と現在の政策との矛盾が指摘されるようなことも少なくありません。政治家にとって、過去の発信が残ることはリスクにならないでしょうか。

僕は書いたブログ記事をスタート時から消さずに残していますが、見返すと途中で考えが変わっているものもあります。

しかし、それは不自然なことではなく、例えば福島の原発事故の前は「原発ルネッサンス」と言っていても、あの事故を見て「やっぱり原発は駄目だ」など、考えを変えた人は沢山いるでしょう。

社会が変化すればそれに合わせて考えを変えることは自然なことであり、問題だとは思いません。

Photo by Andrew Guan on Unsplash

――ネットで発信をするもうひとつの大きなリスクとして、「誹謗中傷」があります。BLOGOSでは2年前に、コメント欄を実名と紐付いたFacebook連動形式に切り替えましたが、その背景にあったのも匿名での誹謗中傷などの問題でした。政治家のみなさんは公人とはいえ、キツイ言葉を浴びることも多く、対応を間違えられない難しさがあると思います。河野議員は匿名ユーザーへの対応で心がけていることはありますか。

問題のある投稿をするアカウントは、僕はブロックしたほうが良いと考え、そうしています。

弘田充

――いち国会議員の情報発信を国民が見られなくなるというのは、貴重な情報に触れる機会を失うことにもつながるのではないでしょうか。

僕のアカウントをフォローしてツイートを見にきてくれる人からすれば、誹謗中傷ばかりが並んでいたら嫌になってしまうでしょう。そのため、問題のある内容を送ってくる方には、お引き取りをいただいています。

一方、周りの人から「○○さんがブロックされたけど誤解だから解除して」と教えられた場合などは、きちんとブロック解除の対応を取っていますよ。

僕は1996年の初当選以来ずっと、手紙やメールで意見などが送られてきても、内部告発、内部通報を除いて「匿名のものは相手にしなくていい」というルールを設けています。これはネットでもリアルでも同じだと思います。内部通報かどうかの確認はしますが、そうでなければそのまま削除して終わりです。

新聞やテレビだけが情報源という時代ではなくなった

Photo by Alex Eckermann on Unsplash

――昨年12月の会見では、自民党の広報本部長として地方議員にSNSの活用を呼びかけていく考えを明らかにされました。

まず、政治家が「新聞やテレビだけが情報源」という時代ではなくなったということを認識することが大事だと考えています。すでにネットが有権者、納税者の情報ソースになっているという状況をまずはきちんと認識してくださいと。

――党のメンバーにはどのように指南していくお考えですか。

難しいところですよね。つまらないコンテンツを延々と垂れ流しても誰も見てくれない。かといって何をどう発信するかは個性だから、みんなが同じようにやる必要はありません。

リアルの街頭演説にしても全員が同じ演説をするわけではありません。ネットでの発信も同じで、画一的なやり方をしても国民の興味にはつながりません。

ブログだと、例えば活動報告を載せるだけでは見る側からするとつまらないですよね。情報発信のやり方にあまり口は出しすぎないようにしますが、「地元のお祭りに参加した」と報告するにしても、「かき氷を何杯食べた」「いちごシロップが好き」など書き方に工夫の余地はあると思っています。

――政治家の人となりが分かるような内容にするということですね。

そうですね。さらに、例えば「屋台の焼き鳥を食べた」だけではなく、「今までは〇〇産の鶏だったけど、最近はそれの値段が上がって…」と政治や経済の話題に関連させることができればもっと政治を身近に感じてもらえる。

どれだけ工夫できるかは政治家個々人のイマジネーションの問題だと思います。

メディアに発言を切り取られないことが大きなメリット

弘田充

――政治家がSNSで発信するメリット・デメリットをそれぞれどうお考えですか。

悪い面はそこまでないでしょう。SNSが普及するまで政治家の仕事は有権者の方にはほとんど見えませんでした。それを知ってもらえる機会が増えただけでもとてもいいことだと思います。

そして、何といっても既存のメディアを通さずに自分の思っていることが発信できることは大きなメリットです。

マスコミによって発言の一部を切り取られたり、ねじ曲げられたりすることがないわけですから、「河野太郎が何を考えているか」を有権者に直接伝えることができます。

その一方で、ツイッターには140字という字数制限がありますから、ブログや他のツールと使い分け、何をどのように発信するのがベストなのかを、これからの政治家は常に考えないといけません。

――ニコニコ動画ユーザー向けのイベントである「ニコニコ超会議」に安倍元首相、菅前首相が来場するなど、自民党は他党に先駆けて若者に向けてのメッセージ発信に注力されてきた印象があります。また去年の衆院選では、若い世代ほど自民党の支持率が高いという結果が出ました。今後、さらに若い世代に向けた発信に力を入れるお考えはありますか。

若い支持層、支持率の高い層の投票率をいかにして上げていくかを考えていく必要があります。いくら支持率が高くても、投票に行ってくれなかったら意味がありません。結果は投票率×支持率の掛け算ですから。

そういう意味でも、ネットを使って若者に対して発信をすることは、今後さらに重要性を増していくと思います。

長年続けて来られたのは「発信したいことがあるから」

弘田充

――BLOGOSを13年やっておりますが、ブログの更新をやめてしまう議員の方を何十人と見てきました。河野議員が発信を長く続けてこられているコツを教えてください。

更新をやめてしまった方には「暇つぶしをする時間もない」という人も多いかもしれませんね。

僕の場合は「発信したいことがある」から続けてきました。

好きなタイミングで好きな内容を発信することができる。それは僕にはとても幸せなことであり、これからの政治家にとって重要なことだと思います。

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