衰退のラジオ業界 課金で支えろ – 土屋礼央

BLOGOS

こんな記事がありました。

2020年 日本の広告費|新聞/雑誌/ラジオ/テレビ/マスコミ四媒体広告費
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2020/media2.html

2020年のラジオ広告費は約1066億円(前年比84.6%)だそうです。

他のメディアも同様なのでラジオだけがマイナスという事ではないですが、既存メディアへの広告費が下がっているのは事実。ラジオはこの先、どうやったら生き残っていけるのでしょうか。

「これからのラジオはどうすれば良いですか?」

僕がラジオの昼の帯番組を任された時の取材で、記者さんに質問を受けた事がありました。

「今ある良さをちゃんと続けていく事ですかね…」

なんとも緩い答えを返した記憶があります。(そりゃ番組終わるわな…)

“今後のラジオ”

ラジオを愛する現場の人たちはみんな、その答えを探し続けています。

ちなみに20年前からラジオ業界にずっとお世話になっている僕もその中の一人。

ラジオのトップランナーとして結果を残しているわけでもない僕が、熟考した所で何も変わらないかも知れないけれど、僕はラジオにお世話になっている人生。

この連載もラジオがなかったら声がかからなかったお仕事だと思います。(BLOGOSの編集長が僕のラジオ番組の元ADさん)

BLOGOSが閉鎖してしまうと言う事で、最終回はラジオについて書けたらなと思っております。

しかもテーマは「ラジオとお金」について。

ぶっちゃけリスナーの方には関係のない話だし、一番タブーな部分な気もしますが、ラジオを聴いた事がない若者にも興味をもってもらいたい。

「ユーチューバーって稼げるんでしょ?」

そこから興味を持つ若者が沢山いる様に、「ラジオスターになってお金持ちになる!」と思ってくれる若者が一人でも出てこられる様なお金も稼げる業種であり続ける事がラジオ界の未来だとも思っています。

“も、ある”のコンセプトで書いてきたこの連載。全てのアイディアは経験則からしか生まれないし、それは模倣かも知れないけど、模倣と模倣が融合した時に新しいアイディア“モアル”になる。

もちろん僕も、ラジオの未来についてちゃんとした答えを見つけられていない一人ですが、小さなアイディアの模倣も何かのきっかけになるかも知れない。

ちょっと長くなるかも知れませんが、読者の皆さんと話し合えたらなと思います。

「昔のラジオは面白かった」という幻想

ラジオの現状や将来について、みんなであーだこーだ言っている中でよく出てくるワードとして、「昔は面白かった」というワードがあります。

自分自身がラジオに没頭していた時代の多幸感あふれる思い出、それに比べて今のラジオは…、みたいな流れ。

僕はこれに関してはあまり賛同していません。それはその人の幻想でしかないと思っています。

テレビも同じで「昔のテレビはもっと面白かった」という大人がいます。でも、我が家の小学生の息子はゴールデンタイムのバラエティを見てゲラゲラ笑っている。僕らが昔ゲラゲラ笑っていた光景と基本は同じです。

僕が若い頃ゲラゲラ笑っていたバラエティを息子に見せても「今より面白いね!」とはならないでしょう。

昔の方が面白かったと感じるのは、ただ単に自分が大人になっただけのこと。自分が成長していった中で、面白いものの価値観が変わっていったのだと思います。

僕が思うに、今もラジオは十分に面白いと思います。今のスタッフは…。今のしゃべり手は…。と言うのは、幻想です。

今の人も十分に面白い。

むしろ昔よりコンプライアンスが複雑に入り乱れている中、本当にすごいスキルを持ち合わせているなぁと思います。

昔と違う所で言うと、「昔はもっと自由に出来た」とは思います。

現場のしゃべり手、スタッフがやりたい事をやらせてもらえていた。イコール、パーソナリティーの本音が聞ける、思った事をぶちかませる。しかも自分に投げかけてくれている気がする。

そりゃ面白いよ。ラジオの魅力ってそこだと思っています。

でも、それをやるにはお金が必要です。仕事ですから。

年々下がっている売り上げをなんとか維持、最悪下げ幅を緩やかにするために、営業の方が汗をかいて頑張ってくれています。

「そこまでしてくれるなら、お金出します」

みたいな事でようやくスポンサーを見つけてくる。

そりゃあ、スポンサーのイメージを大事にするトーク構成になります。別にこれが悪いとは思っていません。

要はフリーのパートとのバランスなのですが、ラジオに携わっていると、年々、そのバランスがスポンサーパート多めになっていると感じます。

もちろん、腕のあるパーソナリティーはスポンサー枠とは思わせないトークができます。本当にすごい。でもそんな方たちを持っても、露骨な枠が増えてきている気がします。

でも売り上げが下がってきているから当然ですよね。

営業の人も本当に頑張ってくださっています。スポンサーさんは本当に大事なんです。お金がないと番組は作れませんから。

「でもそれだと番組として本末転倒だよねー。リスナー置いてきぼりー」

僕もそう思います。お金の匂いがするコーナーに嫌悪感すら持っちゃったりします。

だったら我々リスナーがスポンサーになれば良いのではないか?と思うのです。

少年隊ファンが買い切るラジオ番組にヒント

こんなまとめがありました。

「ラジオで流れる限り過去にならない」番組枠を買い上げて『少年隊』の楽曲をラジオ放送しているファンの活動がすごい
https://togetter.com/li/1827356

すごいですよね、少年隊ファンの皆さん。こういう形があるんだと感動で涙が出そうです。最高です。
自分たちがお金を出しているから、好きな放送を流す事ができる。

言い方が失礼になってしまったらごめんなさい。

素晴らしい太客ですよね。

自分たちがお金を出せば、自分たちが面白いと思える放送を聞く事ができる。

僕はラジオの未来の可能性として、リスナーの太客化も一つありだと思っています。

太客がお金を落とす事で成り立っている業界は山ほどあります。

そもそもラジオはテレビに比べて圧倒的に太客ユーザーが多い。そろそろラジオも太客産業になって良いのではと感じています。

ただ「有料会員にならないと聞けないコンテンツがあるの?冷めるわー。結局金かよー」みたいな事を思っちゃうタイプでもある僕。

それって創成期のゲームアプリの課金と同じですよね。ここから先は課金しないと遊べません。ムキー!金の亡者め!!! そう思っていました。

ラジオもここからは課金者のみが聞ける放送です!なんてやったら、即死亡な予感しかしません。

ですが、この連載でも何度も書いている通り、最近の課金ゲームアプリの仕組みは本当に素晴らしい。課金制度に対して嫌悪感が全くないアプリが本当に多い!

ゲームアプリ「ウマ娘」は2021年の年間売り上げが1000億円越え。しかも国内のみで。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2112/21/news099.html

他のゲームアプリだって単体で何百億円規模の売り上げです。僕が遊んでいるプロ野球スピリッツAも同じ。なんでこんなに売り上げがあるのか?

最近アコギじゃないんですよねぇ。そりゃお金出しちゃうよねぇ。

基本は課金ユーザーも無課金ユーザーも全て最後までちゃんと遊べる。課金をする理由は快適性。鉄道の普通席とグリーン車みたいな事で、YouTube Premiumとかも同じ仕組みでしょうか。

課金をしない人にも同じだけのサービスは提供する。でも課金するとより快適ですよー。課金判断はユーザーにあります。強制的に課金しないといけないコンテンツがない。だから課金をしていて不満がない。自分で選んでいるから。

この仕組みを参考にしたら、ラジオもいけると思うんです。

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