ダメ社員が会社に舞い戻る悲劇 – PRESIDENT Online

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リモートワークが浸透する中、自宅作業の影響で仕事の生産性や効率が低下したとの声もある。ジャーナリストの溝上憲文氏は「生産性低下の原因には、通信環境の悪さや社員間のコミュニケーション不足もありますが、もともと仕事のやり方に問題があるケースも多い。そうしたリモートワークのせいにする“落ちこぼれ”予備軍の社員が今、オフィスに舞い戻っている」という――。

ビデオ会議の概念※写真はイメージです – 写真=iStock.com/metamorworks

生産性・効率低下の原因は、本当にリモートワークなのか?

コロナ禍で急速に浸透したリモートワーク。緊急事態宣言解除後の10月以降も在宅勤務者が多く、アフターコロナ後も「全員出社はありえない」と断言する企業も少なくない。そんな中でNTTグループはさらに踏み込んで「転勤・単身赴任」を原則廃止する方針を打ち出し、大きな話題となっている。

NTTの澤田純社長は「リモートワークが増えれば、居住地と働く場所の結びつきが薄くなり、転居を伴う転勤・単身赴任は自然に減る。いまは夫婦共働きの世帯が増え、転勤などはしづらい」(10月20日、日経電子版)と語っている。また「2025年度までにグループの全社員がリモートワークで働ける環境を整えたい」と言っている。

転勤廃止といっても「転居を伴う転勤」のことであり、リモートワークによる「転居を伴わない」転勤はあるということだ。一見、共働き世帯や実家や家族から離れたくない人にとってはありがたいように映るが、実際にリモートワークで業務が機能するのか疑問も残る。

たとえば、東京から地方の支社に課長で赴任したとする。新しく会う部下もいれば上司もいる。プレイングマネジャーとして地方の得意先や顧客とのコミュニケーションも重要になる。テレワークで、部下が起こした突発的なミスの処理を含む部下マネジメントや商談を行うとなると、通常の在宅勤務よりはるかに難易度が高いだろう。

リモートワークによる「転居を伴わない」転勤が今後どうなるか注目していきたいが、今回は、そもそもリモートワークに切り替えたことで生産性がアップしているかどうかを検証してみたい。

2020年の最初の緊急事態宣言で在宅勤務が始まってから1年以上が経過。結論を先に言うと、オンラインツールを駆使した在宅での業務効率化などのノウハウも蓄積されてきたものの、必ずしも全部がうまく回っているわけではない。

日本経済新聞社の上場企業などを対象にした調査(2021年「スマートワーク経営調査」)の結果はこうだ。

「業務効率が向上した」21.4%
「業務効率が悪化した」11.8%

1割超が悪化していると回答する背景には企業の“働かせ方”だけでなく、個人の“仕事の仕方”にも問題があるかもしれない。

個人はどう感じているのか。

在宅勤務の効率が落ちた要因と、対面仕事に戻りたい理由

ロバート・ウォルターズジャパンの「在宅勤務での生産性調査」(2021年10月)によると、

「生産性が上がった人」50%
「生産性が落ちた人」16%

だった。回答者は同社に登録する外資系企業など高報酬を得るバイリンガル人材が多いが、それでも生産性が落ちている人が1割超というのは無視できない。

テレワークで頭を抱えているアジア人男性※写真はイメージです – 写真=iStock.com/kazuma seki

一般の正社員はどうか。日本生産性本部の「働く人の意識に関する調査」(2021年10月21日)では、「自宅での勤務で効率が上がったか」と質問している。回答は、

「効率が上がった」「やや上がった」計53.7%
「やや下がった」「効率が下がった」計46.3%

約半数が、効率が下がっていると答えているのは驚きだ。

では、生産性や効率が落ちたと答えている人はどこに要因があると考えているのか。

前出のロバート・ウォルターズジャパンの調査での回答を多かった順にあげよう。

「同僚・取引先とのコミュニケーションが取りづらい」57%
「集中力の維持が難しい」35%
「会社のシステム整備が不十分」22%

同社の「コロナ禍・アフターコロナ時代の働き方意識調査」(10月28日)では、「在宅勤務継続中にオフィス勤務へ戻りたいと思ったか」という問いに対して、6割が戻りたくない派、4割が戻りたい派だった。

なぜ戻りたいのか。

最も多かったのは「同僚などとの対面的なつながり」(49%)、次いで「組織・チームの一体感、対面的な目的の共有」(46%)となっている。対面か否か、コミュニケーションがキーワードとなっている。

日本生産性本部の調査では効率が下がった理由ではなく「テレワークの課題」について聞いている。結果は、

「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」37.6%
「仕事のオン・オフを切り分けがしやすい制度や仕組み」25.6%
「上司・同僚との連絡・意思疎通を適切に行えるような制度・仕組み」25.2%

やはり、仕事の効率や生産性が低下したのは、以前の対面時代に比べてコミュニケーションが少なくなったこと、在宅でのオン・オフの切り替えができず、仕事に集中できないというものだ。

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