「親しい人が亡くなった場合には喪に服する」というのは人間社会において一般的ですが、新たにイタリアの研究チームが「飼い犬も仲間が亡くなると実際に悲しんでいるような行動を示す」という研究結果を発表しました。
Domestic dogs (Canis familiaris) grieve over the loss of a conspecific | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-022-05669-y
Dogs Seem to Truly Grieve For Their Lost Canine Buddies, Survey Reveals
https://www.sciencealert.com/dogs-seem-to-grieve-for-their-lost-canine-buddies
犬を飼ったことがある人ならば飼い犬がどれほど豊かな感情を示すかについて語ってくれるかもしれませんが、実際には飼い犬の感情に関する研究はわずかしか存在しません。仲間を失ったときの「哀悼」と分類される行動は人間以外ではイルカなどのクジラ科やゾウなどで確認されていますが、野生のイヌ科の場合はほとんど確認事例が存在せず、飼い犬に関しては論文として発表された研究結果はほとんどなかったとのこと。
そこでイタリア・ミラノ大学獣医学部のフェデリカ・ピローネ氏らが行ったのが、ペットとして飼われている犬が「仲間を失ったときにどのような反応を示すか」に関する調査です。ピローネ氏は「2頭以上の多頭飼いを行っており、なおかつそのうち1頭を亡くしたことがある」という飼い主426人を被験者としてアンケート調査を実施。仲間を亡くした直後の個体が死後にどのような反応を見せたかについて尋ねました。
調査の結果、仲間を亡くした直後の個体が見せた行動にはネガティブなものが多かったと判明。内訳としては、「飼い主の気を引くようになった」が67%、「遊ぶ頻度が減った」が57%、「活動レベルが下がった」が46%、「睡眠時間が長くなった」(35%)、「恐怖心が増した」が35%、「食事量が減った」が32%、「よく鳴くようになった」が30%でした。
また、今回の調査では「飼い犬が仲間を失ったときに示す悲しみは『犬同士の関係性の強さ』や『人間の嘆きぶり』の影響を受ける」ことも示唆されたそうで、飼っていた犬が亡くなった際に、残された個体との関係が良ければ良いほど、ないしは人間の嘆き方が強ければ強いほど、残された個体がネガティブな行動を見せる確率は高くなったとのこと。なお、調査対象となった個体は、亡くなった個体と約12カ月以上過ごしていたものが92.5%で、69%が飼い主の目から見て「友好的な関係を結んでいた」と判断されていました。
ピローネ氏らによると、今回の研究結果はあくまで「飼い犬は仲間が亡くなる際に行動パターンに変化が生じる」というもので、「犬は仲間が死ぬと悲しむ」という結論を導き出すものではないとのこと。ピローネ氏らは「飼い犬のうちの1頭が亡くなるという事象は残された個体と飼い主の絆に影響を及ぼすので、『犬は仲間が死ぬと悲しむ』という事象だけを分離することは難しい」「『飼い主の反応に対する関心が高まった結果、仲間の死に反応しているように見えるのかもしれない』という可能性や、飼い主と飼い犬の間でストレスが伝染するという研究結果があるため、『飼い主のストレスが移ってネガティブな行動が増えた』という可能性、はたまた、『仲間の死に反応したというよりも、仲間がいなくなったという点に反応しているかもしれない』といった可能性が考えられる」とコメントしています。
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