シュモクザメが「トンカチ」みたいな頭の形をしているのはなぜ?

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by Mark Chivers

目が左右に張り出した頭の形が特徴的なシュモクザメは、鐘を鳴らすT字型の仏具である撞木(しゅもく)からつけられた名前で、英語でもハンマーの頭の部分(Hammerhead)から名前をとって「Hammerhead shark」と呼ばれています。一目見たら忘れられないシュモクザメの奇妙な頭の形について、サメの専門家が解説しています。

Why do hammerhead sharks have hammer-shaped heads?
https://theconversation.com/why-do-hammerhead-sharks-have-hammer-shaped-heads-184372

30年以上サメの研究をしているというフロリダ大学フロリダ自然史博物館のギャビン・ネイラー氏によると、シュモクザメの頭の形状には主に3つの利点があると考えられているとのこと。

1つ目は視野の確保です。シュモクザメは両目が左右に向いているので、非常に広い範囲を視界に収めることが可能です。ただし、左右の目が別々の方向を向いているということは、視差を利用して距離を測ることができないということでもあります。

by Marko Dimitrijevic

このデメリットを補うために、シュモクザメは頭の下側にロレンチーニ器官と呼ばれる特殊なセンサーを持っており、これで微弱な電気を感知して海底の砂の下にいる獲物を探し出して食べることができます。

ロレンチーニ器官はシュモクザメ以外のサメにもありますが、シュモクザメのロレンチーニ器官は特に発達しています。また、シュモクザメは左右に伸びた頭にロレンチーニ器官を並べることで、普通のサメより正確に獲物の位置を捉えることが可能なのだそう。これが特徴的な頭の2つ目のメリットです。

3つ目のメリットとして、科学者たちはシュモクザメの大きく平たい頭の形状が、水中での素早い方向転換に役立っているのではないかと考えています。また、飛行機の翼のように揚力を得るのに使っているのではないかという研究もあります。

by Gaylord, M.K., Blades, E.L. & Parsons, G.R.; Scientific Reports, 2020

これまでのところシュモクザメは9種類が見つかっており、頭の形や大きさもさまざまです。例えば、インドシュモクザメのように頭の幅が全長の半分ほどもあるシュモクザメもいれば、ウチワシュモクザメのようにそれほど目が左右に張り出していないので、ハンマーよりはシャベルやスコップのような頭の形状をしているシュモクザメもいます。

これまで、科学者らは「シュモクザメがこのように特徴的で多様な頭の形を獲得したのは、時間の経過と共に徐々に頭が左右に伸びていったからではないか」と考えていました。この説を採用すると、まず頭の形が普通のサメと同じシュモクザメの祖先がいて、そこから進化したシュモクザメほど左右に伸びた頭を持っていることになります。しかし、サメは全身の骨が軟骨で歯以外はほとんど化石に残らないので、シュモクザメの祖先の化石を見ることは至難の業です。

そこで、コロラド大学とフロリダ大学の研究チームは、8種のシュモクザメから採取したDNAを分析して、各シュモクザメの遺伝的な関係を探る研究を行いました。すると、古い種ほど体の割に横に大きな頭を持っており、若い種ほど頭が小さいという、当初の予想とはまったく異なる結果になりました。


この結果からシュモクザメの研究者たちは、シュモクザメの頭は環境の変化に応じてゆっくりと変化する自然淘汰(とうた)の産物ではなく、遺伝的な欠陥により発生した異常な形状の頭が偶然生存に有利に働き、それが子孫に受け継がれてきたのだと考えるようになりました。

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