ウクライナの防衛を支える31歳 – BBCニュース

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ジョー・タイディー、サイバー記者

ウクライナではロシア軍の侵攻を受けて、軍も市民も戦っている。そしてウクライナは、新しい前線を開いた。テクノロジーの専門能力を活用してシリコンバレーの支援を集め、敵を揺るがそうという作戦だ。先頭に立つのは31歳のデジタル相、ミハイロ・フェドロフ氏。しかし、フェドロフ氏の戦術には、賛否両論の声が出ている。

ウクライナの最年少閣僚は、首都キーウ(キエフ)にある秘密の地下シェルターから、ロシアに対してデジタル戦争を仕掛けている。

フェドロフ氏のお気に入りの武器は、ソーシャルメディア(SNS)だ。これを駆使して、大企業の最高経営責任者(CEO)たちに直接語りかけ、ロシア政府との関係を断つように促してきた。

フェドロフ氏はさらに、「敵」にサイバー攻撃を仕掛けるため、志願制の「ウクライナIT軍」を設立するという、前代未聞の行動に出た。

弱冠31歳のフェドロフ氏にとって、携帯電話が生活の中心だ。そうした自分のライフスタイルを軸に、政府での自分の役割を形成してきた。

この戦争が始まる前、フェドロフ氏の主な目標は「スマートフォン内の国家」を作り、政府サービスを100%オンラインで提供することだった。今となっては、このプロジェクトは保留状態だ。今では、デジタル戦争の遂行に心血を注いでいる。

フェドロフ氏は、多国籍企業にロシアをボイコットするよう圧力をかけている。アップル、グーグル、フェイスブックやインスタグラムを傘下に持つメタ、ツイッター、ユーチューブ、マイクロソフト、オラクル……。あらゆるハイテク企業が、ウクライナ政府からの公式書簡を受け取った。

フェドロフ氏はその書簡をソーシャルメディアにも投稿し、世界に見せた。企業からの返答の一部も公開している。

ウクライナのIT相のこうした動きが、企業行動に影響を与えたかどうかはわからない。しかし、ほとんどの企業が数日後にはロシアに対する方針を変更した。アップルのようにロシアでの製品の販売を停止したり、事業を停止したりといった具合だ。

5日にオンライン決済のペイパルが発表したロシアでのサービス停止は、メディアが報道する前にフェドロフ氏のツイッターに掲載された。韓国のサムスン電子とエヌヴィディア(Nvidia)がロシアとの取引をすべて停止するというニュースも同様だ。これも、同氏がSNS上で公に呼びかけていたことだった。

ロシア軍の侵攻が始まってすぐ、フェドロフ氏は宇宙開発企業「スペースX」のイーロン・マスク氏にツイッターでで協力を呼びかけ、これはただちに結果につながった。

フェドロフ氏は、「あなたが火星を植民地にしようとしている間に、ロシアがウクライナを占領しようとしています! あなたのロケットは宇宙から無事に着陸しましたが、ロシアのロケット(ミサイル)はウクライナの市民を攻撃しています。ウクライナに(人工衛星)スターリンクでのインターネットアクセスを提供し、まともなロシア人に立ち上がるよう呼び掛けてください」と、マスク氏に向かって書いた。

これに対して大富豪マスク氏は間もなく、「スターリンクはウクライナで稼働を始めました。受信端末もそれに続きます」と返答した。

そして実際、マスク氏は48時間以内にスターリンクを調整し、ウクライナにインターネット接続可能な端末をトラック1台分送り込んだ。

このサービスは、インターネットや通信ネットワークが破壊されたりした場合に、ウクライナ政府の生命線となり得るものだ。しかしマスク氏はその後、衛星アンテナがロシアのミサイルの標的となる可能性があるため、慎重に使うよう警告した。

フェドロフ氏のフォロワー数は、ツイッターとフェイスブック、インスタグラム、メッセージアプリ「テレグラム」で合計50万人以上に上る。そしてフェドロフ氏は、全てのプラットフォームを駆使して、メッセージを拡散している。

BBCのメール取材に対してフェドロフ氏は、「どのプラットフォームも非常に重要だ。ウクライナで起きている恐怖について大企業に興味を持ってもらうため、あらゆる機会を利用している。ロシア人が戦争に抗議するよう、真実を伝えようとしている」と彼はBBCに電子メールで語った。

彼はオンラインではほとんどウクライナ語を使うが、危機が始まってからは、最も影響力の大きいツイッターでは英語に切り替えた。

「ツイッターは、ロシアの軍事侵略に対抗するための効率的なツールになった。我々にとっては、ロシア経済を破壊するためのスマートで平和的なツールだ」

テクノロジー研究者で著書もあるステファニー・ヘア氏は、フェドロフ氏の成功には驚いていないと話した。

「彼は31歳だ。テクノロジーやSNSを十分理解している」

周りを説得し、プロパガンダを利用する。これは古くからある戦争の戦術だ。しかし、2000年代にソーシャルメディア企業がこの方程式に参入して以来、「人の発信力、拡散速度や拡散の規模が変わり、この方程式も変わってしまった」と、ヘア氏は指摘する。

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フェドロフ氏の報道官によると、同氏の若いチームが常に新しいアイデアを出し、それをデジタル省が迅速に実施しようとするのだという。ウクライナ政府は先週、軍の資金調達のために非代替性トークン(NFT)を発行すると発表した。しかし、アイデアのいくつかは物議を醸しているという。

例えば、フェドロフ氏は暗号通貨取引所に対して、すべてのロシア国民の口座を凍結するよう促している。しかしこの案については、大手バイナンスのCEOを含む大勢が、暗号通貨の存在理由に「真っ向から反している」と述べている。

さらに、世界中から集まった数千人のボランティアハッカーを含む「ウクライナIT軍」の発足も、一定の不安を引き起こしている。テレグラムに設立された同軍のグループには現在、約27万人が参加している。

フェドロフ氏はBBCの取材に対し、「ハイテクは戦車に対する最良の解決策だ」と語った。

「IT軍の矛先は、ロシアとベラルーシの企業、銀行、国家のウェブポータルなどのデジタルおよびオンラインリソースに向けられた。すでにロシアの公共サービスのウェブポータル、為替取引所、国営メディアのウェブサイトなどの運営を停止させた。

今のところ、ハッキングのほとんどは低水準のサイバー破壊行為と思われる。しかし、フェドロフ氏のチームは鉄道や電力網への攻撃も明確に呼びかけており、これが成功して混乱が生じれば、一般市民にも被害が及びかねない。サイバーセキュリティ業界の中には、これを不安視する人たちもいる。

米戦略国際問題研究所のスザンヌ・スポルディング氏は、「この分野では本当に注意が必要だ」と言う。

「一般市民が重要インフラに、破壊的な攻撃を加えるようになれば、いわゆる『戦場の霧(不確定要素)』や事実誤認、予想外の連鎖的な影響などに、直面するようになると思う。市民の行動を理由に、敵から報復を受けるかもしれないし、事態は急速にエスカレートする可能性がある」

フェドロフ氏の部署と密接に連携するウクライナの国家特殊通信局の副局長は4日、ロシアに対してハッカーを結集させるという決定を擁護した。

侵攻が始まった「2月24日に世界秩序が変わった」ため、国際的ハッカー集団「アノニマス」を含むあらゆるグループによる、ロシアに対する違法なサイバー攻撃を歓迎すると述べた。

一方、ウクライナに対してもロシアに同情的な人たちによるハッキングが行われているが、現状ではロシアの方が分が悪いようだ。

ロシアの軍事ハッカーは、理由は不明だが、今のところ大きな役割を担っていないようだ。

(英語記事 Twitter is part of our war effort – Ukraine minister

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