日本は積極的に難民を受け入れよ – 船田元

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 ロシアが隣国ウクライナへの軍事侵略をはじめてから、一週間が経過しようとしている。プーチン大統領はこの度の侵略を、昨年秋から着々と準備してきた。ベラルーシとの合同軍事演習に託けて巨大な部隊をウクライナとの国境近くに駐留させ、北京冬季オリンピックが終わるのをじっと待っていた。

 プーチン大統領は多分、北京冬季パラリンピックの始まる前までに電撃的に侵攻し、ウクライナを無力化する計画ではなかったのだろうか。ところが予想以上にウクライナ軍の抵抗が激しく、またロシア兵士の士気も高くなく、思わぬ苦戦を強いられている。しかし両軍の戦力の差は如何ともし難く、いずれ全土がロシア軍によって制圧されるかも知れない。ウクライナの美しい自然や穀倉地帯、そして街が破壊される様子は、見るに耐えない。120万人を超える難民の列はあまりに無惨である。だから一刻も早く停戦させなければならない。

 21世紀の今日、よもやこんな前時代的な戦争がヨーロッパの一角で起ころうとは、予想だにしなかった。第二次世界大戦の古い映像を見ているかのようだ。たしかにロシアにも言い分はある。ゼレンスキー政権は当初、親ロシアと思われていたが、次第にヨーロッパ寄りになり、遂にNATO加盟を打ち出した。それはロシアの安全保障にとって、大きな脅威であることは間違いない。しかし如何なる理由あるにせよ、力による現状変更は認められない。ロシアの蛮行を許すことは、アジア情勢にも大きな影響を及ぼす。日本にとってもウクライナ情勢は対岸の火事ではなく、「我がこと」として対処しなければならない一大事だ。

 プーチンの理不尽な野望を挫くためには、まず民主主義という価値観を共有する国家群が、一枚岩となって国際社会で非難し続けることだ。更に制裁を強化して、ロシア経済に決定的なダメージを与えることだ。この結果世界のエネルギーや資源がショートして、返り血を浴びることも我々は覚悟しなければならない。もちろんガソリンや重油などの高騰対策をはじめ、国民生活への手当はきちんと行うべきことは言うまでもない。

 第二次世界大戦以来の国際情勢の緊迫の中、日本はどのような役割を担うべきか。制度的にも地政学的にも軍事的な貢献は制約されるが、人道支援は前例に拘らず踏み込んで行うべきだ。既に120万人を超えるウクライナ難民がヨーロッパ各国に流入しているが、彼らだけに負担を強いるべきではない。地理的に離れているが、日本も積極的に難民を受け入れるべきだ。難民受け入れに消極的と評されてきた日本のイメージを、この際払拭するチャンスでもある。その際はアフガニスタンのタリバン勢力から迫害を受ける、元日本留学生たちの救済も忘れないで欲しい。

 更に重要なことは、ロシア兵士の士気を弱めること、そしてプーチンがロシア国民から支持されない状況を作ること、またその状況を知らしめることである。前者を達成するにはウクライナ軍が更なる反撃力を持つように外から支援し続け、戦いを膠着状態に持ち込むことである。NATO軍が直接介入することはできないが、有能で有効な武器を供与することは可能である。

 後者を実現するには、ロシア国内で戦争反対の市民デモを盛んにすることだ。サンクトペテルブルクをはじめ、既にロシア国内各地でデモが多発している。当局による検挙者も相当数に及ぶが、更に力を増すためにSNSを利用したプロパガンダはとても有効である。昔は存在しなかったネット上でロシア市民が世界と連帯し、プーチン政権を包囲すべきである。現にプーチンの側近と言われる大富豪の一部が、この度の侵略に異を唱えはじめている。

 最終手段として考えられるのは、有力な仲裁者を作ることである。ロシアとNATO諸国との間では、最早交渉する共通の土俵を持ち得なくなっている。そうした中、中国が果たすべき役割はとても大きい。なぜなら中国は両方の紛争当事国との親密な関係を、それぞれ築いてきたからである。

 例えば中国の最初の空母「遼寧」は、ウクライナの「ヴァリャーグ」という未完成の空母を譲り受けたものである。ウクライナの貿易相手国の第一位は中国だ。一方、中国はロシアとも兄弟関係にあることは言うまでもない。反米の立場や強権的支配構造において共通している。ロシアとウクライナの争いは中国の国益を損ない、一方停戦や妥協は国益に叶うはずである。

 このように中国の仲裁役に期待する声もあるが、国際情勢はより複雑であり、そう簡単に中国が動くかどうかは予測できない。火中の栗を拾うことに慎重な政権内部の意見も少なくない。しかし米欧側に有力な解決手段を持ち合わせていないのならば、このようなシナリオに期待をかけることは決して無駄ではないはずだ。1日も早い戦争終結を願わずにはいられない。

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