ウクライナ紛争仲介は北方領土返還の最高のチャンス

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ウクライナ問題の困難さは仲裁できる国がないことである。みんな自分で褌をしめてしまった。ウクライナは不見識にも中国の役割を期待しているが、中国に漁夫の利を示させるなど本末転倒だ。

そんななかで日本の出番はありうる。そしてそれは、北方領土問題を解決する願っててもないチャンスでもある。こういう例外的な事態でも起きないと解決などそもそも無理である。

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ソ連崩壊以来、エリツィンやプーチンと対話を欠かさなかったアヒルの水かきがいまこそ生きる可能性がある。というよりは、こういうときに備えたこれまでの辛抱だったのではないのか。

そんなことしてアメリカの機嫌そこねたらどうしようとかいうくらいなら、北方領土なんか諦めた方がいい。チャンスが出たときにリスクとらないなら、最初から黙ってた方がましだ。さらに、拉致問題だってこう言うときに火の粉あびるつもりで取り組めばロシアだって助けてくれる。

アメリカ政府との関係では、辣腕で山師っぽくもあるが、エマニュエル駐日アメリカ大使の存在もプラスもやる気になってくれれば強力な味方だ。

私は繰り返しいっているが、今回の侵攻、とくにウクライナ全土へのそれについては、ロシアが100%悪いと思う。太平洋戦争の原因について日本の言い分にそこそこの正当性が含まれているにしても、真珠湾攻撃の理由にならないのと同じだ。

その意味で日本が欧米とほぼ歩調を合わせるのは当然だ(ただし、統一方針に日本の利害も反映してもらうべきだし、すべて同じである必要はないのは当然ということは「日本の国益に沿ったウクライナ問題対応とは何か」でも書いた)。

ただし、日本にとっては、欧米と同じ立場にない理由もいくつもある。

① ウクライナは中国に空母を売り北朝鮮にミサイル技術を提供した国であってこれを忘れてウクライナ性善説など採るべきでない。

② ロシアは隣国として格別に関係に気を遣うべき国であるがウクライナはあまり関係はない。

③ ウクライナがロシアに対して主張する歴史観はしばしば韓国が日本に対して主張するそれとか韓国起源説に似ている論理でそういうものが世界で通用することは日本や近隣諸国にも悪影響がある。

④ 日ソ開戦からシベリア抑留、北方領土の占拠についてのソ連に対する恨みは、ソ連の主要構成国であったウクライナに対しても同じように向けるべきもので、ロシアにだけ向けるべきものでない。フルシチョフも多くの軍最高幹部もウクライナ人だったことまで忘れている人が多い。旧ソ連の構成国でもバルト三国だけについては、ソ連に侵略併合された側だが、他の国はそうでない。

以上のようなことも踏まえれば、今回の侵攻については、全面的に欧米と歩調をあわせつつも、そもそもの問題についてのロシアの言い分に対して、ある種の理解をなにがしか示すことは可能であるし、そうすべきでもある。

また、仲介をするとすれば、国としての立場もあるが、プーチン大統領などと個人的信頼関係があることが不可欠だ。安倍元首相はそれがある数少ない人物の一人だ。岸田首相もラブロフ外相とはかなり懇意であろう。

果たして日本に出番があるかどうかは分からない。ただ最低限、準備はすべきだ。準備とはチームをつくって方針の検討もしておくことだ。外務省がそこに参加することは当然だが、あまり外務省の慎重な意見が勝ちすぎてもうまくいくまい。

さらに、日本は仲介に乗り出す用意があるというべきだ。少しロシアないしプーチンへの一方的な攻撃を中和することくらいいっても構わない。

それに対して、あれやこれや、出来ない理由を並べることは可能だが、そんなこと心配するくらいなら、北方領土問題などさっさと諦めた方が良い。

ロシア外務省幹部が「(日本が北方領土の主権を主張することは)永久に忘れた方がいい」などと発言したが、相手が困ったときに助け船を出すとか、気持ちを和らげないことしないと領土問題など動かない。

そのことで、外交コストが伴うのを心配する人もいるが、これまでも、北方領土問題について欧米に味方してもらうために、日本は相当な外交上の借りをつくっている。しょせんは北方領土について主張することはコストがかかるのであるから、こんな千載一遇のチャンスにコストを惜しむのは無用だ。

【追伸】
ロシアや旧ソ連の歴史については、「365日でわかる世界史 世界200カ国の歴史を「読む事典」」(清談社)にかなり詳しく書いている。

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