これがプレミアムクラスかー。
2020年の話になるが、出張で羽田空港から石川県にある能登空港(のと里山空港)への飛行機のシートが、なんと「プレミアムクラス」だった。
僅か一時間という短いフライト時間ではあったが、確かにプレミアムを名乗るのにふさわしいサービスで、大変思い出深いものとなった。
なぜかシートがプレミアムクラスだった
出張といっても交通費込みのお仕事だったので、事前にインターネットで懸命に最安値のチケットを探した。
旅行代理店から購入したその能登空港行きチケットを羽田空港で発券すると、座席番号が「1H」だった。
1Hの席は飛行機の先頭にあり、なんだかやたらと席が広かった。脚が伸ばせるのだ。前回乗った同じ路線との違いに呆然としながら座っていると、客室乗務員から個別の挨拶をされて、「なにかご要望はありますか?」と質問されたのである。そんなこと急に言われましてもと赤面した。
どうやらこの席は「プレミアムクラス」というもので、新幹線で言うところのグリーン車のチケットが代理店から回ってきたようだ。レンタカーでも配車の都合でワンクラス上だったことがあるので、きっとそういう話なのだろう。
席が広いというだけで超快適なのだが、プレミアムはこれからが本番だったのだ。
プレミアムクラスは食事付きだった
羽田を飛び立ってしばらくすると、シートベルトのマークが消えた。すると客室乗務員さんが通路を挟んだ向こう側でお弁当らしきものを配っているのが見えた。
フライト時間の短い国内線に機内食は必要ないと思うが、予約すれば食べられるのだろう。プレミアムなクラスを利用するビジネスマンは一分一秒を無駄にしたくないだろうから、そういうサービスにも需要があるんだろうなと感心していたら、なんと私の分まで運ばれてきた。
キャビンアテンダントさんに「頼んでないですけど?」と困り顔で視線を送ったら、「プレミアムシートは食事つきなんです」という笑顔が帰ってきた。
割りばしではなくフォークとナイフとスプーン、さらに厚いおしぼりまでついてきた。さすがはプレミアムだなと心から感心しつつ、せっかくなので心して楽しませていただく。
すっかり舞い上がって(飛行機だけに)写真を撮っていたら、さらにドリンクのメニューまで渡された。そこにはワインや日本酒などのアルコール類も複数並んでいて、あまりに予想外で頭が真っ白になった。
ちょっと3分考えさせてくださいという訳にもいかないので、一番搾りを注文した。こんなことなら事前にネットでプレミアムなドリンクメニューを研究しておいたのに。
これは今年一番のラッキーだなーと感心しながら空の上での食事を味わっていたら、まだ半分残っているというタイミングで「そろそろ着陸態勢に入ります」という声掛けをされた。
食事が届いてから5分程しか経っていないので驚いたが(ちょっと余裕をもって早めに連絡をしてくれているのだとは思う)、フライト時間トータル1時間なので、これは仕方がないのだろう。
スープが冷めないうちに食事を終えるのが空でのマナーと肝に銘じながら、急いで残さずいただいた。
こうしてプレミアムなフライトはあっという間に終了した。1時間は短すぎる。せめて2時間、できれば3時間くらい堪能したかった。プレミアムを味わうには能登空港じゃ近すぎる。
到着する時間は同じなのに、飛行機にも新幹線にも値段が違うシートのある理由がよく分かった。これが資本主義というものなのだろう。
ちなみに値段の差が気になったので確認したところ、ANAの正規料金だと普通席が約2万円なのに対し、プレミアムシートは約3万円。どうやら1.5倍が相場らしい。移動方法なんて安さ優先で十分だと思っていたが、ちょっと考えが変わった体験だった。
予約を間違えただけでした。
この記事を書くにあたって当時のメールを確認したら、どうも申し込みフォームでなにかを間違えていたらしく、往路にプレミアムクラスを予約していて、普通席の復路よりもしっかり高い料金を支払っていた。ぎゃー。
そうか、私のシンデレラストーリーは自腹の有料サービスだったのか。
この事実を知ってものすごく損をした気分になっているが、間違えでもしなければプレミアムクラスを経験することは一生なかったと思うので、よい体験をしたと思うように気持ちを切り替える努力をがんばりつつも次は絶対気を付けるぞとふんどしの紐をきつく締め付けているところである。あー。