スーパーボウルが開催された日曜日、QRコードがテレビ画面に60秒間跳ね回った（昔のDVDスクリーンセーバーのように）。
アクセンチュア・インタラクティブ（Accenture Interactive）が作成したこの奇妙なコマーシャルは、コインベース（Coinbase）の広告だった。USAトゥデイ（USA Today）の広告メーター（Ad Meter）では、この広告は最下位にランクされたが、試合終了後の話題の多くはこのCMに関するもので、同社によると、わずか1分間に2000万人がQRコードを使って同社のウェブサイトを訪問したという。
これらのすぐに公表された結果を見て、ほかのマーケターたちも何らかのを形で同じものを求めることは容易に想像できる。ブランド認知やエンターテイメント価値といった指標よりもQRコードの使用を追跡するのははるかに簡単だ。マーケターたちは、コインベースがスーパーボウルのコマーシャルの成果を瞬間的に測定できているのを見て、同じことをどうやってできるか頭を捻っている。「我々にとってのQRコードとは何だろうか。コインベースのように投資収益率をどのように測定することができるだろうか」と、自問自答しているかもしれない。
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一石を投じたクリエイティブ
これによって、マーケティング担当者がスーパーボウルの広告からどのようなROIを得たいと思うか、が大きく変わるかもしれない。人々に自分のブランドに注目してもらうための楽しい方法でもなければ、何らかの方法で突破口を開くような派手な広告を見せるための手段でもなく、スーパーボウルは視聴者に行動を呼びかける「コール・トゥ・アクション（Call to Action：CTA）」のようなもの、トラッキングが可能で、桁外れの値段がつけられた30秒間のスポット広告にその価値があると証明できるような広告手法、になるのだ。
デロイト・デジタル（Deloitte Digital）の一部門であるエソス（Ethos）の戦略担当責任者を務めるネイサン・ヤング氏は、スーパーボウルのROIについて質問すると、「マーケティング担当者はそれぞれ目標を持ってるが、スーパーボウル広告の明らかなメリットはブランド力の向上だ。その大きく、派手な30秒間は、ブレークスルーをもたらし、議論を生み出す瞬間を作り出すことができ、新規参入者にとって大きなメリットだ。素晴らしい第一印象を生み出す」と語った。
「最後に『アクションを呼びかける』スーパーボウルの広告がそれほどないというのは少々驚きだ。もし視聴者にランディングページをヒットさせたり、ハッシュタグに参加させることができれば、より安く、よりターゲットを絞ったデジタル広告でフォローすることができる」とヤング氏は続けた。
ますます重要になるROI
また、スーパーボウルの広告をエンターテインメントからアクションへと移行させようとする動きに批判的な人もいる。マーケターなら誰でも、なぜスーパーボウルの30秒の広告にお金を払うのか尋ねてみれば、広告にエンターテインメントとしての価値があり、人々が広告を楽しみにしているからだと説明するだろう。
プリーチャー（Preacher）のアソシエイト・クリエイティブディレクターのアイシャ・ハキム氏は、「我々は広告におけるディスラプション（破壊的な変化）とブレークスルーの違いについて混乱していると思う」と述べ、QRコードはウェブサイト以外のいかなる体験にもつながっていないと付け加えた。「私は、スーパーボウルがそのような、より広告としての成果を激しく追求する類の広告のための場所だとは思わない。（スーパーボウルのCMは）もう娯楽ではなくなったのだろうか」。
マーケティング担当者がスーパーボウルのような文化的に重要な瞬間の広告に、「コール・トゥ・アクション」を追加することを目指すかどうかは、まだ確定していない。マーケティング担当者にとって、測定はますます重要になっている。最高財務責任者たちは、マーケティングを収益センターではなくコストセンターと見なして、何にお金を費やしいるのかを疑問視しているため、これが投資収益率の証明に必死のマーケターにとって魅力的な戦略になることは容易に理解できる。
「戦略の見直しを始めると思う」
「QRコードに特化することはないと思うが、テレビ広告戦略の見直しを始めると思う」とVMLY&Rのエグゼクティブ・クリエイティブディレクターであるクレイグ・エリメリア氏は、コインベースのQRコードのような「アクション呼びかけ」について尋ねられたときに答えた。「テレビやOOHなどの従来型のチャンネルを通して、どのようにクリエイティブにメタバースに参加させるか、これをメタバースが決定し始めるだろう」。
KRISTINA MONLLOS（翻訳：塚本 紺、編集：長田真）