メモ
ヨーロッパを中心に27カ国が加盟するEUは、2030年の温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減する目標を掲げています。ところが、EUに加盟する15カ国において「再生可能エネルギーより多くの補助金を化石燃料に与えている」ことが、欧州会計監査院のレポートで報告されました。
Review No 01/2022: Energy taxation, carbon pricing and energy subsidies – RW_Energy_taxation_EN.pdf
(PDFファイル)https://www.eca.europa.eu/Lists/ECADocuments/RW22_01/RW_Energy_taxation_EN.pdf
15 EU states subsidise fossil-fuels more than renewables
https://euobserver.com/climate/154245
EUでは2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減するための政策として、化石燃料に対する補助金を段階的に廃止する政策が進められています。記事作成時点では、EU全体における再生可能エネルギーへの補助金は化石燃料より多くなっているものの、EU加盟国ごとに見ていくと補助金の比率には差が存在しているとのこと。
欧州会計監査院が発表したレポートに掲載された以下のグラフは、青色の斜線が「GDPに占める化石燃料への補助金」、緑色の斜線が「GDPに占める再生可能エネルギーへの補助金」を示しています。そして、化石燃料と再生可能エネルギーへの補助金を合算し、化石燃料への補助金が多い場合はその割合を青色の実線で、再生可能エネルギーへの補助金が多い場合はその割合を緑色の実線で示しています。
EUの平均で見れば再生可能エネルギーへの補助金の方が多くなっていますが、いくつかの国では化石燃料への補助金の方が多いという結果になっています。
化石燃料への補助金が再生可能エネルギーへの補助金を上回っているのは、フィンランド・アイルランド・キプロス・ベルギー・フランス・ギリシャ・ルーマニア・リトアニア・ポーランド・ブルガリア・スウェーデン・ハンガリー・スロバキア・スロベニア・ラトビアの15カ国。
再生可能エネルギーへの補助金の方が多い国はルクセンブルク・ポルトガル・オランダ・デンマーク・エストニア・オーストリア・クロアチア・マルタ・イタリア・スペイン・ドイツ・チェコの12カ国であり、国数でみればこちらの方が少数派です。
化石燃料への補助金は2008年~2019年にかけて年間およそ550億~580億ユーロ(約7兆2500億~7兆6500億円)で推移しており、全体の3分の2を免税または減税といった優遇措置が占めていたとのこと。これらの補助金は二酸化炭素排出に応じて課税するカーボンプライシングの有効性を低下させ、市場をゆがめ、クリーンでエネルギー効率の高い技術を相対的に高価なものにする可能性があるとのこと。
また、排出権取引における免税措置が主に化石燃料の使用による炭素排出に充てられており、これが化石燃料への補助金としての役割を果たしている点も、欧州会計監査院のレポートは指摘しています。免税措置は重工業や航空産業、発電分野において、非EU圏の企業との競争力を維持するために設けられていますが、その効果について2020年の(PDFファイル)レポートで疑念が呈されています。
欧州会計監査院のレポートは、EUにおける環境保護に向けた課題の1つが「エネルギーへの課税と気候目標の間で一貫性を保つこと」だと指摘。化石燃料の方が結果として再生可能エネルギーより安価になる状況を作るべきではないとして、EU内部でゆがみを引き起こさないように全ての加盟国が足並みをそろえて、気候に悪影響を及ぼすものに課税する原則に従うことを推奨しました。
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