「最も分断生んだ」五輪が開幕 – BBCニュース

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ロビン・ブラント、BBCニュース(北京)

過去数十年で最も分断を生んだオリンピックが4日夜、中国で開幕する。首都・北京は世界で唯一、夏と冬のオリンピックの両方を開催する都市となる。今大会は、新型コロナウイルス感染症COVID-19対策の厳しい管理体制だけでなく、人権侵害疑惑や参加国の外交ボイコットなど政治的緊張をはらんでいる。

スキー競技などの会場のほとんどの雪は、人工降雪機で降らせたものだ。

しかし、中国がどのように冬季大会を実現しようとしているのかは、巨大な冷凍装置で冷やされた屋内リンクにいるアイススケーターのイーイーちゃん(6)は気にも留めていない。

それよりも、早く競技を見たくて仕方がない。2008年に北京で初の五輪が開催された時はまだ生まれていなかった少女は、今大会に刺激を受けている。

「すごく体力を使うのに、どんどんやろうとするんです」と、イーイーちゃんがコーチと練習する様子を見た私たちに、母親は教えてくれた。「全ての動きができるようになるまで帰ろうとしないんです。諦めないんです」。

イーイーちゃん親子はどの競技も見に行くことはできない。今回の冬季五輪は北京で開かれるものの、市内のほぼ全員が締め出されてしまう。

中国は「ゼロCOVID」の状態を維持するため、新たな取り組みを進めている真っ最中だ。

当局は一般市民を対象としたチケット販売を一切行わないと決めた。招待されるのは共産党員か政府系企業のスタッフのみで、招待客も厳しいウイルス検査と制限に従わなければならない。

テレビでしか観戦できないのが残念だと母親が私に話していると、イーイーちゃんが割って入ってきた。絶対に五輪を見るんだと伝えたかったようだ。

五輪での観客に対する制限は、中国の厳しい新型ウイルス対策のほんの一部に過ぎない。

選手や関係者は全員、厳重に管理された隔離「バブル」(安全圏)の中にとどまり、感染拡大を食い止めようとしている。誰もバブル外に出ることはできない。大会の公式車両を使ってバブル間を移動する人たちは、一般市民と遭遇した場合は車外に出ないよう指示されている。バブル外にいる一般市民とは接触してはいけないからだ。

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人権侵害疑惑、外交ボイコット

今回の北京五輪が通常とは異なる大会である理由は、新型ウイルス対策だけではない。

中国は少数民族ウイグル族への人権侵害疑惑をめぐり、複数の国と対立している。外交ボイコットを表明したアメリカやイギリスをはじめ十数カ国が政府高官を派遣しない。中国政府幹部や国営メディアは五輪を「政治化」するとして、外交ボイコットを認めていない。

私たちがイーイーに出会ったアイスリンクで息子を見ていた男性は、政府の考えに同調した。北京五輪はあくまでもスポーツのイベントなのだと。

「スポーツはスポーツであって、政治と混同してはいけないと思います」と、厚手のコートに身を包んだ男性はマスク越しに語った。「北京五輪はみんなのもので、私たちが参加したり観戦したりすべきものです。政治は政治でしかない」。

北京2022の公式スローガン「Together for a Shared Future」(未来に向かって一緒に)は、5つの単語で構成されている。習近平国家主席の話題のフレーズ(そう呼んでいいかわからないが)の一つ、「building a shared future for mankind」(人類の共有の未来を築く)に似ている。

北京市内のバス停や壁にこのスローガンが書かれたポスターが貼られている。国営メディアのプロパガンダ動画にも使われている。

私たちがオンライン上で見つけた「Together」動画には、笑顔で歌って踊る子どもたちが登場する。この動画は、中国が虐殺を否定しているウイグル族が多く暮らす新疆ウイグル自治区の地元政府が先月公開したものだ。

アメリカの選手たちと親交のある、アメリカの元五輪代表のノア・ホフマン氏(32)は、この瞬間を「一緒に」することに神経をとがらせる選手たちがいる理由を教えてくれた。

「大会で発言する選手は1人もいないと思うし、そうすべきとも思わない」と、ホフマン氏はBBCに述べた。「自分がその場にいたら、口をつぐんでいると思う」。

クロスカントリースキーでソチ大会と平昌大会に出場したホフマン氏は現在、スポーツマンとスポーツウーマンの権利向上のための活動を行っている。

「リスクが大きすぎる。(中略)これは国際オリンピック委員会(IOC)の怠慢だ。リーダーシップが発揮されていないからアスリートがこのような立場に置かれている」と、米東海岸の拠点から取材に対応してくれたホフマン氏は語った。

北京大会に出場するチームメイトに話を聞いたところ、大会までの道のりは「これまで経験したことがないもの」だと言っていたという。

ある選手は、「競技や、自分たちのパフォーマンス」に関する打ち合わせが1度もなかったとホフマン氏に話した。アメリカの五輪関係者との事前ミーティングは、中国滞在中の新型ウイルス対策や選手の安全面の話が中心だったという。

中国当局は選手に対し、常に中国の法律を順守しなければならないと警告している。ホフマン氏は、何千人ものウイグル族を収監したり、「とんでもない」虐待を行っていることについてアスリートが「自由に発言できる」という考えは「全くの誤り」だと考えている。

習主席は効率的で安全な大会の実現を約束している。開会式にむけて数日前から聖火リレーが始まり、店頭に並ぶ無数の商品やサービスには五輪マークが施されているなど、多くの点では、北京五輪も通常の五輪のように見える。

冬季五輪は4年に1度、寒々とした中で開かれる。しかし今回は、より一層冷え込んでいるように感じる。国際舞台の場で中国とアメリカの間に生じた大きな亀裂が、この大会を特徴づけている。

この瞬間もバブル内では、アスリートたちがただひたすら競技に打ち込んでいる。

(英語記事 ‘Most divided’ Olympics kick off in China

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