早期退職「FIRE」を勧めない理由 – ヒロ

BLOGOS

私は知らなかったのですが、今年の隠れた話題の一つが「FIRE(Financial Independence Retire Early)」つまり、早期退職だそうです。北米では昔からあったのでそれが話題になるというイメージを持っていなかったのですが、察するにコロナで背中を押された端境期の年齢層が早期退職を正当化する理由として掲げているのではないか、という気がします。

日経でこのFIREについて数回に渡り、特集を組んでおり、さっと目を通しました。正直、全く心に留まらなかったのはなぜ早期退職をしなくてはいけないのか、について「社畜になりたくない」を理由にしているのですが、それが嫌ならもっと若いときに独立するなり違う道を歩む方法はあったはずでいい年齢になってから社畜からの解放というのもしっくりきません。

特集のほとんどがマネーという観点だけでとらえているのもいただけません。サラリーマンで1億円貯めて早期退職することを参考モデルにしてるのですが、それができる人なんてまずいません。いるとしたら早期退職どころか高給を取って忙しくて引っ張りだこの人でしょう。記事にはミニマリストに徹してとにかく貯めよ、そして1億円を年4%で運用すれば楽に終末までゴールできるというのです。全然わかりません。

アメリカなどで早期退職が流行っているからといって日本でそれを真似る必要はないと思うのです。また宗教論か、と言われるかもしれませんが、働くのを罰とする国と美徳とする国のそもそもの違いがあります。また、50代でリタイアして残りの人生、何をするのか、という疑問がわくのです。男性は特に仕事付き合いが主流ですからリタイアしたら昔話で花を咲かせるしかなくなってしまいます。

「第二の人生を歩む」、「自分探し」というきれいな言葉も並ぶと思いますが、50代で一度でも退職すれば起業するか、自分を相当下げない限り職は見つかりません。理由は雇う側からすればその人を採用する十分な理由、つまり、メリットを求めるからです。

そこでコンサルタントという自営業をする方も非常に増えています。ただ生計を立てるどころか、ビジネスとして成り立っている人は一握りもいないはずです。商社や金融を卒業された方々にコンサル系のビジネスを立ち上げる方はいますが、ひとつには請求単価が高いのです。なぜかな、と考えると自分が以前勤めていた超一流企業レートを独立後も適用しているのです。私から言わせれば半値八掛けぐらいでスタートすべきと思います。

次に私が早期退職を勧めないのは人間、ある目的や目標、多少のストレスと日々の緊張感を維持することでバランスあるライフを過ごすことができると考えているからです。例えば現役世代は「あと1日働けば週末だ」という区切りが気持ちの中にあります。毎日が日曜日だとそもそも朝6時に起きる必要がなくなり、不要に長く寝ていたりするものです。なかなか自分ですべてをコントロールすることはできません。それゆえに〇曜日の〇時から〇時は仕事に行く、と自分を切り替えるべきなのです。

そして決して自宅にいてはいけません。シェアオフィスでも何でもよいので借りる、そして規則正しい生活を作ることです。洋服も洗濯してアイロンをかけたものを着る心がけが必要です。

マネーの話も触れておきましょう。マネーにはフローとストックという考え方があります。フローとは毎月の収入です。それがある程度決まって入ってくれば計画的な消費活動ができます。またフローは水道水と同じで蛇口をひねっている間ずっと水が出ます。つまり働いている間、ずっとマネーが入ってくるという発想です。

一方、ストックは貯金の取り崩しです。風呂にためた水を少しずつ使っていくと必ずなくなります。なくなるのが惜しいのでケチになります。つまり、ストックの取り崩しは人間が小さくなっていくし、付き合いも狭くなります。そのうち、出かけると金がかかるといって家に閉じこもってしまうのです。

私は60歳の今、現役で最前線にいることに最大の喜びを感じています。一応、新入社員で習うようなこまごまとしたことから経営者という立場で5年後、10年後の会社のビジョンも考えます。ラインの仕事(定常業務)が5割、新規やトラブルシューティングで3割、異業種を含めた幅広い情報収集活動が2割ぐらいで走っています。やり取りする人も20代から70代まで様々で自分の気持ちの中心を40歳に置くように調整しています。つまり課長職です。

私はむしろリタイヤしなくて済み、自分が40歳の立場、つまり実務に精通している立場を維持できるようにしたいと考えています。もちろん、これは個人個人の価値観と人生論なので押し付けることはできません。ただ、リタイアはいつでもできますが現役に戻ることはできない、これだけは肝に銘じておく必要があると思います。

では今日はこのぐらいで。

Source

タイトルとURLをコピーしました