とりもち。木の枝にくっつけて使う、ベタベタしてるアレである。「ドラえもん」によく出てくることで私の中では超有名だ。
有名ではあるものの、実物を見たことがない。あれって、実際のところ何に使うんだろう。売ってるのだろうか、できることなら自分の手で作ってみたい。
今回はずっと気になっていた、あのとりもちの実体にアプローチします。
※2011年5月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
「とりもち」とは
「ドラえもん」の中でとりもちは、何かを駆除、捕獲しようという局面でかなり自然に出てくる。藤子・F・不二雄先生ぐらいの年代の方にとってはきっと普通のツールなのだ。
ペットショップで売られている……?
同居の祖母に聞いてみると、果たしてとりもちは昔、男の子がよく鳥をとって遊ぶのに使っていたという。そう、とりもちは「取りもち」ではなく「鳥もち」だった。
広辞苑で引いてみると、だいたいこんな具合。
鳥もち
モチノキ、クロガネモチなどの樹皮から取ったガム状の粘着性物質。5~6月に樹皮をはぎ、これを秋まで水につけておいて、臼にいれて搗き、それを流水で洗う。これを3~4回くりかえすとできる。捕鳥、捕虫に用いる。(引用:広辞苑 第五版)
あの食べるモチを使うのかなと思っていたが違った。「餅」だったら簡単に作れるだろうと思っていたのだが、木の皮をはぐとなるとインドア派の私がおれそいと作れるものではない。
「ドラえもん」にポッケから出してもらうぐらい簡単に手にいれられるのではともくろんでいたのだが……。
調べによると、昭和初期ぐらいまでは普通にお店で売っていて、虫取りに行くときに子供がお小遣いで買っていたようだ。
クワガタの世話(ダニ掃除など)にも使われるため、今でも小鳥店などでは普通に売っているらしいという情報もゲットした。早速ペットショップへ。
スーパーの害虫駆除コーナーにあるとの新情報
が、何軒かのペットショップをまわっても「おいていない」とのつれない返事。考えてみれば許可のない野鳥の捕獲は違法。そう簡単に売られているわけもないのかもしれない。
そんな中、あるペットショップで新たなる情報を得た。
「とりもちなら、スーパーの害虫駆除コーナーで見かけましたよ」
ちょっと前のことだから、今もおいているか分からないけどと言いながら丁寧に見かけたというスーパーの場所まで教えてくれた。ありがとうございます! なんだろうこの徐々に近づいて行く感。私がしているのは、とりもちを探すRPGか。
小走りで向かったスーパーでざっと探してみる。どんな形状で売られているのか想像がつかないため、うまく見つからない。あのー、すみません。とりもちってありますか?
「はい、ネズミ捕りですよね。こちらですよ」
え? とりもちって、スーパーではネズミを捕るものを指すんですか?
聞くと、ネズミ駆除製品として「ネズミとりもち」という商品があるらしい。強力なベタベタでネズミさんをからめ捕るというものだ。
それで、店員さん的には「とりもち」=「ネズミ捕り」という頭になっていたそうだ。なるほど。
それでも、やっぱり見てみたいのはクラシックなとりもち。探す旅はまた振り出しへ。
代用品なら作れるという情報
難航する捜査に光が射したのは、偶然家に遊びに来ていた従兄弟の旦那さんの発言だった。なんと子供の頃とりもちで虫を捕っていたというのだ。しかもそのときのとりもちを自分で作ったとまで。
「確か小麦粉を水で流しながらもんで作ってた気がするなあ。べたべた糊みたいのができるんだよ」
ん? それって昔、チューインガムが高価だった時代に代わりに作ったという「自家製チューインガム」と同じ製法じゃないか。「美味んぼ」で見たことがある。「ドラえもんだ」「美味しんぼ」だと、マンガマンガうるさくてすみません。つい嬉しくて。
それにしても、従兄弟の旦那さん、まだ35歳である。とりもちがそんなに過去のものでもないことがついでに判明した。
作り方は、強力粉と水をまぜながらこね、それをふきんで包んで流水ですすぐというもの。早速やってみます。
鳥もちで、駆除!
おおお。これが鳥もちの代用品か。すごい粘り! さっそくマンガのように木の棒にくっつける。
今、夢にまで見たあの鳥もちが我が手に! 鳥を捕獲するわけにはいかないが、せっかくなのでその粘着性をいろいろと活用し、本日のまとめとさせていただきます。
とりもちよ永遠に ~デジタルリマスター化によせて
以上、2005年に掲載した記事の再公開版でした! 17年後、2022年の世界から、当時「とりもち」を探して記事を書いた古賀です。
2005年執筆時点で「とりもち」の名はすでにずいぶん聞かなくなっていたと思う。文中にもあるとおり、「ドラえもん」と、あとはテレビのバラエティ番組で罰ゲーム的に使われていた記憶はあるが、それくらいのものだ。
2022年、いよいよもってしてその名を聞かれなくなったように思うのだが、驚くべきことに「とりもち」で検索してデイリーポータルZにたどり着く方はなお無視できないくらい多い。
「とりもち」は今も探されている。