コインハイブ事件が逆転無罪に
他人のコンピュータ上でJavaScriptを動作させることにより暗号資産マイニングを行うソフトウェアツール「コインハイブ」が起訴されていた裁判で、二審の有罪判決を逆転する形で無罪判決が下された。
コインハイブ事件と呼ばれる今回の事件では、2018年3月に罰金10万円の略式命令が出されたものの、無罪を主張して受け入れなかった。これを受けて裁判所は無罪判決を下したものの、検察庁が控訴した。2020年2月に逆転有罪の判決が下された。最終的に今回の最高裁判所による判決をもって、再び逆転無罪が確定している。
判決文では、「利用者の意図に反するプログラムではあるが、社会的に許容される範囲内で不正性は認められない」と記載された。コインハイブのプログラムを違法と認めてしまった場合、一般的なウェブ広告をどのように扱うのか疑問が残ることから、今回の判決には妥当性が感じられる。
2018年の時点で10万円の罰金を支払っておいた方が、時間的にも金銭的にも、そして精神的にも負担は少なかっただろうと思われる。しかし、最後まで無罪を主張したことで技術の発展と開発者コミュニティを守ってくれたことに感謝したい。
参照ソース
- 逆転無罪の「Coinhive事件」を総括する日本ハッカー協会のイベント、1月31日に開催決定
[INTERNET Watch]
Vitalik氏がイーサリアムの今後の開発計画に言及
イーサリアムの共同創業者であるVitalik氏が、イーサリアム2.0を含む今後の開発計画に言及した。2022年に予定されている大型アップデート「The Merge」をはじめとして、5つのマイルストーンを説明している。
イーサリアムは、2020年12月よりイーサリアム2.0と呼ばれるイーサリアム史上最大のアップデートに取り組んでいる。今年は、イーサリアム2.0の中でも特に注目のThe Mergeが実装される予定だ。
The Mergeが実装されることで、イーサリアムがPoWからPoSへと移行することになる。PoWはマイニングによる消費電力が大きいことから、環境負荷が指摘されるだけでなくイーサリアムの持続性にも影響を与える問題となっている。PoSへと移行することで、99.9%以上の電力消費が抑えられるとの試算も出ている。
今回Vitalik氏は、The Merge以降のマイルストーンにも言及。「The Surge」「The Verge」「The Purge」「The Splurge」という名称で開発計画を説明した。今週は、これらのマイルストーンの重要性についてそれぞれ解説したい。
参照ソース
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今週の「なぜ」イーサリアム5つのマイルストーンはなぜ重要か
今週はコインハイブ事件やイーサリアムの開発計画に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
イーサリアムは現時点で50%の開発が完了している
残りの50%を5つのマイルストーンで消化していく
イーサリアムのロードマップが完了するには6年はかかる
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
イーサリアムの進捗状況
Vitalik氏によると、イーサリアムの開発は現時点で全体の50%が完了しているという。一方で、ロードマップの全てを完了させるには、あと6年はかかるだろうとの見解も示している。イーサリアムが2014年にスタートしたことを踏まえると、50%が完了するまでに7年以上かかっていることから、残り6年という数字も頷ける。
残りの50%は、先述の「The Merge」「The Surge」「The Verge」「The Purge」「The Splurge」によって構成される。The Mergeが実装されると、全体の60%が完了したことになるとVitalik氏が言及していることから、それぞれのマイルストーンにつき10%ずつ進んでいくことになる計算だ。
The Mergeでは、イーサリアム2.0における2つの優先事項「PoS移行」と「シャーディングの実装」のうち「PoS移行」が行われる。イーサリアムを持続可能なプロトコルにするための、最初のマイルストーンの1つだ。
「The Surge」と「The Verge」
The Mergeの実装後には、「The Surge」と「The Verge」のマイルストーンが計画されている。The Surgeはスケーラビリティを高めるためのアップデートであり、ロールアップとシャーディングの導入が予定されている。
現状のイーサリアムは、スケーラビリティが低いことでガス代が高騰する傾向にあり、DeFiやNFTなどのDAppsを十分に処理することができていない。当初はシャーディングのみの実装だったものの、現在はロールアップなどのセカンドレイヤーとの組み合わせが最適解と判断されているようだ。
イーサリアムが最も重要視しているのは分散性であり、イーサリアム単体でのスケーラビリティ向上は追求せず、エコシステム全体で取り組んでいく姿勢を持っている。
その後のThe Vergeでは、ヴァークルツリーを使ったステートレス性を向上させるアップデートが行われる。このフェーズでは、ゼロ知識証明を活用することで匿名性が向上する予定であり、併せてネットワークの軽量化も期待できるとのことだ。
「The Purge」「The Splurge」
The Purgeでは、過去に蓄積されてきた不要なデータの除去と技術的負債の解消に焦点が当てられている。これまで、イーサリアムネットワークに参加するノードは、過去のデータ全てをクライアントに保存しておく必要があった。
そのため、ネットワークが大きくなるほど保存するデータ量が大きくなり、ノードとして参加するためのスペックが徐々に高まってきている。その結果、少しずつイーサリアムネットワークが集権化する傾向にあったのだ。これを解消するためにThe Purgeでは、ノードが保存するデータを過去1年分に変更し、クライアントの軽量化を図る。
最後のThe Splurgeでは、その他の細かなアップデートが予定されているようだ。具体的には、短期的なMEV(Miner Extractable Value)の緩和やEVMの改善、既に実装済みのEIP-1559の改修などがあげられる。
これら全てを終えて、イーサリアムはようやく現時点でのロードマップを完了することになる。しかし、開発が進む中でさらなる開発が発生する可能性も高く、Vitalik氏はイーサリアムが100%開発を完了することはないと言及した。