30代で発症も若年性更年期の怖さ – PRESIDENT Online

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「更年期障害」は50歳前後の女性が発症することが多い。しかし、中には30代から症状が表れ、「若年性更年期」と診断される人もいる。エッセイストの葉石かおりさんは「すぐに婦人科を受診しなかった私は、原因が分からないまま追いつめられ、仕事も家庭も失った」という――。

手で顔を覆い、床に座り込んでいる女性※写真はイメージです – 写真=iStock.com/Chinnapong

「更年期かも?」で受診した女性は3割

「更年期ロス」という言葉がある。

更年期によるカラダの不調で、仕事に及んだマイナスの影響を指す。流し見をしていたNHKのニュース番組から聞こえてきたこの言葉にハッとし、作業していた手を止めてしまった。かつて私も「更年期ロス」で、仕事を切られ、さらには離婚にまで至った経験があるからだ。

更年期とは、閉経を挟んだ10年間を指す。日本人女性の閉経の平均年齢は50歳前後と言われているが個人差があり、まれに30代で閉経してしまう人もいる。更年期は女性ホルモンの一種であるエストロゲンの急激な減少によって、ホットフラッシュや肩こりや不眠といった、さまざまな不調がカラダに表れる。これらが更年期障害と言われる症状だ。

かつて更年期は公にすることが少なかったが、今ではニュース番組で更年期ロスの特集が組まれたり、著名人が自身の更年期の体験を語ったりする時代になった。しかし、一般人にとって更年期は、まだ「秘するもの」なのかもしれない。

番組内で使用されたNHK「更年期と仕事に関する調査2021」に先立つスクリーニング調査(29~59歳の女性3万人が対象)によると、更年期の症状を感じた際、婦人科を受診した人は40代、50代ともに約3割という結果がそれを物語っている。

取材中、突然顔から滝のような汗が…

これはあくまで推測だが、「更年期は恥ずかしい」という思いが根底にあるのに加え、「婦人科は敷居が高い」と思い込んでいる人が多いように思う。実際、私もそうだった。30代半ばと、人よりも早くに更年期の症状を感じていたが、「婦人科は妊婦が受診する医療機関」というイメージが強く、受診するまで数年間かかってしまった。そして、受診してわかった。心身に影響をきたすつらい症状の原因は、若年性更年期によるものだったということが。

私が最初に「異変」を感じたのは33歳、12月のことだった。ワインの専門家を取材中、突然首から上がカーッと熱くなり、滝のような汗が取材ノートにたれ、びしょびしょになってしまったのだ。その時は、「緊張して汗をかいたのだろう」と軽く思っていたが、その日を境に同様の症状が頻繁に表れるようになった。

一瞬、「更年期」という言葉が頭をよぎったが、元々暑がりであることもあり、すぐに打ち消した。しかし、ほてりの症状はおさまるどころかどんどんひどくなり、さらにはメンタルやカラダのさまざまな箇所に不調が表れてはじめた。

「調教不能な猛獣」を飼っているかのよう

カラダの面ではほてりに加え、体重増加(今より8キロ増)、大量の抜け毛、肌荒れし放題で、目に見えて老化が進んでいった。メンタル面ではとにかくイライラと不安が止まらず、周囲にいる人に当たり散らしていた。

特に当時の夫にはひどい当たりようだった。ちょっとでも気に入らないことがあると暴言を吐いたり、時には物を投げつけたりすることもあった。自分でも「こんなことを言ってはいけない」と心ではわかっていながら、暴言を抑えることができなかった。彼が穏やかなのをいいことに、私は家庭内暴君として君臨していた。その後、子どもを持つ、持たないで意見が分かれ、最終的に最初の結婚生活は約10年で幕を閉じた。

職場では上司にくってかかり、ついにはクビに。まさに「更年期ロス」を地でいっていた。どうがんばっても感情のコントロールができず、心の中に「調教不能な猛獣」を飼っているかのような気がした。更年期に良いとされる市販の漢方薬や、イソフラボンやザクロエキスのサプリメントを飲んでも効果はゼロ。誰かに相談することもできず、次第に追い詰められ、一時は自死さえ考えたほどだった。

そんな話を取材で知り合った「よしの女性診療所」の院長・吉野一枝医師にしたところ、「血液検査をしたほうがいい」と言われ、早々に採血をすることになった。そして検査から1週間後、若年性更年期だったことが判明したのである。この時、私は42歳。初めての「異変」から、実に10年近くの年月が過ぎていた。

30代で女性ホルモンが急激に減少する「若年性更年期」30代で女性ホルモンが急激に減少する「若年性更年期」 出所=葉石かおり『死んでも女性ホルモン減らさない!』(KADOKAWA)

更年期障害を引き起こす3つの要因

しかし、まさか自分が更年期だとは。あの時、頭をよぎった言葉が正解だったことに驚きと、ショックを感じたが、それ以上に「この苦しみから解放される」という喜びのほうが勝っていた。「悪魔に魂を売ってでもラクになりたい」とすら思うほど、更年期の症状がつらかったからだ。

吉野医師によると、「更年期の症状は千差万別」だという。その理由は「3つの要因」が複雑に絡み合っているからだ。1つ目は身体的要因で、エストロゲンの急激な減少によるもの。これにより、生殖機能、自律神経系、心血管系などの不調が表れる。2つ目は元々の性格や幼い頃の家庭環境が影響する心理的要因。くよくよしやすい人ほど、症状が重たくなる傾向にある。そして3つ目は職場での人間関係や、現在の家庭環境が関係する社会的要因。更年期は親の介護や、子どもの自立といった家庭環境が変化する時期で、それが症状に影響することが多々あるという。

私は身体的要因に加え、最愛の父の急逝や過干渉の母との関係性が大きく影響していたように思う。吉野医師からこうした話を聞くまで、「感情のコントロールができないのは、人間として欠けた部分があるから」と常に自分を責めていた。もちろん未熟な部分があったことも否めない。だが意志ではコントロールすることができない女性ホルモンが影響していたと分かり、自分を許してやれるようになった。

若い女性の手には低用量ピル※写真はイメージです – 写真=iStock.com/Mindful Media

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