熟年再婚の大誤解 遺産が激減も – 幻冬舎plus

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「人生100年時代」を迎えている今、「生涯現役」を目指すシニアが増えています。しかし、「生涯現役」なのは仕事だけではないようです。恋愛も、結婚も、セックスも、死ぬまで現役でありたい……そう望むシニアが増えた結果、シニアの恋愛トラブルもまた増えているそうです。弁護士で民事解決のエキスパートである西本邦男さんの著書『枯れ木に花が咲いたら、迷惑ですか?』より、実際にあったトラブルと、その解決法をご紹介します。

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【基本的な状況】事実婚を選ぶ大きな“誤解”

高齢の恋人たちが、入籍婚ではなく、事実婚を選択するのはなぜでしょうか。

たぶん、高齢者の場合、なぜ事実婚を選んだのかという理由で一番多いのは、いまさら籍を入れなくてもいいだろう、実質、ふたりで仲良く暮らせればそれでいい、ということだと思います。

ただ、入籍しない、というふたりの気持ちの中に、実は、子供たちに負担をかけたくない、という気持ちも色濃くあるようなのです。

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その、彼らが思っている「負担」とは何か。

子供がいる場合、入籍の「結婚」という形をとると、法的に正式な結婚ということになって、その子供たちにいわゆる「扶養義務」が発生し、将来的に介護まで含めた負担をかけるのではないか。それを避けたい、という一種の思いやり。こういうことで、「婚姻届を出す結婚をしない」という人もいるようなのです。

しかし、ここには大きな誤解があります。

実は、「扶養義務」とは、基本的に血のつながりがある者同士が負う法律上の義務であり、具体的には「血のつながった親兄弟」が対象であるということです。ですから、子供は「実の親」には扶養義務を負いますが、「親が再婚した相手」にはその義務はありません。

しかも誤解の中には、「扶養義務」というのは、介護とかさまざまな生活上の世話をしてくれることも含まれる、という思い込みもあるようです。

しかし、それはまったく違います。

現在の民法の「扶養義務」は「金銭的な援助」に限定した義務であり、さらに直系血族と兄弟姉妹に適用範囲を限定した義務なのです。

【質問】逆に、婚姻届を出してしまっていたら?

かなり認知症が進んできた77歳の父親を「特別養護老人ホーム」に入所させました。これでひと安心と思っていたのですが、何とその施設の中で知り合った同年齢の女性と親密になって、しかも私たち子供にひと言の相談もなく「婚姻届」まで出してしまったようです。本当に、こういう老人たちが勝手に出した「婚姻届」に困惑しています。

その相手の女性のことは、私たち子供はまったく知りません。もしこの女性が父の妻だと認められるとしたら、父の遺産はどういうことになるのでしょうか

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【まず、答えはこうなります】子供の取り分は激減する

「お父さん、いったいどうしたんですか。僕たちにまったく相談もなく」と言って、子供たちが困惑する事態であることは、よく分かります。

ただ、この結婚については別に年齢制限に引っかかるわけでもありませんから、当人たちさえよければ、誰に相談することもなく結婚はできます

ただ、ここで子供たちがまず心配したのは、「それでは、お父さんの遺産相続はどうなるのか。どういう分配になるのか」ということなのですね。

1980年(昭和55年)の民法改正で、遺産相続における「法定相続」は、配偶者に半分、残りの半分を子供たちで等分する、とされました。ですから、父親のこの再婚が成立すれば、結果、子供たちの遺産の取り分は激減するわけです。

これは、大変なことになった。子供たちの心中は察して余りある、といったところでしょうか。