デザインも性能もメッシュの本質を追求した実用機ベルキン「Linksys Atlas Pro 6 MX5500」【イニシャルB】

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 ベルキンから実用性に優れた新型Wi-Fi 6メッシュシステム「Linksys Atlas Pro 6 MX5500」が登場した。

 従来製品の優れたデザイン性を踏襲しながら、低価格化とコンパクト化を実現し、しかも160MHz幅対応で最大4804Mbpsでの通信も果たした注目の製品だ。その実力を検証してみた。

「Linksys Atlas Pro 6 MX5500」

コンパクトになって、より美しく

 ベルキンから登場した「Linksys Atlas Pro 6 MX5500(以下、MX5500)」は、個人的には現時点のWi-Fi 6ルーター界で最も美しいデザインを持つ製品だと思う。

 四辺に微妙な膨らみを持たせたシンプルな角柱の形状と、清潔感を感じさせるホワイトのカラーが印象的な製品となっており、通信機器としては珍しくロゴが控えめだったり、LEDが無駄に光ったりしないのも好印象。実際に部屋に設置しても余計な主張をしてこない。

 通信機器らしい無骨さや独特な文化を感じさせる派手さとは一切無縁で、インテリアショップでも扱っていそうな、凛としたたたずまいを感じさせるのは、このジャンルの製品としては非常に珍しいと言えるだろう。

正面

背面

底面

 それにしても、従来のVelopシリーズとデザインコンセプトが共通であるにもかかわらず、従来製品よりも今回のAtlas Pro 6の方がより洗練された印象を受けるのが不思議だったが、どうやら、その要因はサイズにありそうだ。

 従来のVelopシリーズは244×114×114mmだったが、今回のMX5500は185×86×86mmと一回り小さい。このサイズが絶妙で、実際に設置したときの収まりもいいが、シンプルなホワイトの筐体面から間延びした印象を取り去る効果があり、より締まったデザインに仕上がっている。

 どちらかというと、通信機器は見た目より中身が重視される世界ではあるが、本製品は、後述するように中身も優れているが、それと同じくらいデザインが優れた製品と言える。

実用性を重視したスペックと価格へ

 スペックは、Wi-Fi 6ことIEEE 802.11axに対応で、2.4GHz帯×1と5GHz帯×1での通信に対応するデュアルバンドのメッシュWi-Fi製品となる。

 先に挙げた従来機のVelopシリーズが、5GHz帯を2系統持つトライバンド対応だったのに対し、本製品はデュアルバンド対応にとどめることで(さらにCPUスペックを下げ、USBも省略)、前述したサイズと価格を抑えることに成功している。

Atlas Pro 6 MX5500 Velop MX4200 Velop MX5300
実売価格(税込) 1万8000円前後 2万1576円 1万9707円
CPU デュアルコア、1GHz クアッドコア、1.4GHz クアッドコア、2.2GHz
メモリ 512MB 512MB 1GB
Wi-Fiチップ(5GHz) Qualcomm
Wi-Fi対応規格 IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b
バンド数 2 3
160MHz対応 × ×
最大速度(2.4GHz) 574Mbps 574Mbps 1147Mbps
最大速度(5GHz-1) 4804Mbps 1201Mbps 2402Mbps
最大速度(5GHz-2) 2402Mbps 1733Mbps(11ac)
チャネル(2.4GHz) ?※ ?※ ?※
チャネル(5GHz-1) ?※ ?※ ?※
チャネル(5GHz-2) ?※ ?※ ?※
新電波法(144ch) ?※ ?※ ?※
ストリーム数(2.4GHz) 2 2 4
ストリーム数(5GHz-1) 4 2 4
ストリーム数(5GHz-2) 4 4
アンテナ 内蔵 内蔵 内蔵
WPA3
メッシュ i-Mesh
IPv6
DS-Lite ×
MAP-E ×
WAN 1Gbps×1
LAN 1Gbps×3 1Gbps×3 1Gbps×3
LAG ×
USB × USB 3.0×1 ×
セキュリティ ×
動作モード RT/BR
ファームウェア自動更新
サイズ(幅×奥行×高さ) 185×86×86mm 244×114×114mm 244×114×114mm

 実売価格(税込)は単体(MX5501)で1万8000円前後、2台セット(MX5502)だともう少しディスカウントされ3万2000円前途となっており、同社のメッシュWi-Fi製品の中では入手しやすい価格設定と言えるだろう。

 デュアルバンドになったものの、従来のVelopシリーズでは対応していなかった160MHz幅での通信に新たに対応し、5GHz帯の最大速度は4804Mbps(4ストリーム、160MHz幅時)にまで向上している。

 これにより、ゲーミングノートなど最大2402Mbps接続に対応したクライアントでフルスピードを実現できるようになっており、近距離での性能は従来のVelopシリーズを凌ぐことが期待できる(有線は全て1Gbps)。

 広いエリアをカバーするならVelopシリーズをお勧めするが、日本の住宅のようにさほど広くない環境であれば、むしろ今回のMX5500の方が実力を発揮させやすいと言えそうだ。

無線インフラに専念

 使い勝手は悪くない。国内製品のような丁寧な取扱説明書が同梱されることはなく、設定用としてAndroid/iOS向けの「Linksys」アプリへ誘導するリーフレットが同梱されるのみだ。

アプリで初期設定が可能

 しかし、アプリのガイドを見ながらセットアップすれば、無線の設定やインターネット接続は無理なく構成できる。

 機能面は、前述したようにUSBが省かれていることなどもあり、付加的な機能はほとんどない。インターネット接続もIPv6自体には対応するが、DS-LiteやMAP-Eには対応しない。

 保護者による制限機能では、デバイスごとに接続停止時間を設定できるが、ユーザーごとのプロファイルによる管理はできないし、ウェブフィルタリングもURLを手動で登録する古典的な方式となる。

アプリで状況確認や設定が可能。ただし機能はシンプルで付加機能は少ない

 最近、Wi-Fiルーターで搭載されることが多いセキュリティベンダーと連携したセキュリティ機能なども搭載されない。

 優先設定も端末ごとのみの設定で、アプリごとの設定はできない。さらに言えば、Wi-Fiの詳細設定も基本的にはおまかせで、チャネルの選択もできない。

 要するに、Wi-Fiとルーティング(ポート転送など)の基本的な設定のみを搭載する非常にシンプルな構成となっている。

 とは言え、これで困るかと言われると、通常はまず困らない。おそらく、現状は多機能なWi-Fiルーターを使っている人でも、その機能の何割を日常的に使っているかと言われると、かなり低い数値になるはずだ。

 そもそも、Wi-Fiルーターの役割は、「インターネットとWi-Fiに接続できること」であり、今回のMX5500に限らず、Linksysの製品は、こうした無線インフラに専念するという潔い決断がなされたものと言える。

 どうしてもDS-LiteやMAP-Eで接続する必要があるなら選択肢になりにくいが(アクセスポイントとして使う手はある)、そうでなければ、この機能で困ることもないだろう。

ひと言「速い」

 肝心の実力は?というと、160MHz幅の威力が効いていて、なかなか優秀だ。

 以下は、木造3階建ての筆者宅で、iPerf3による速度を測定した結果だ。2台のMX5500をそれぞれ1階と3階(階段付近)に設置し、各階で速度を計測している。測定には、160MHz幅で最大2402Mbps接続が可能なノートPCであるマイクロソフトの「Surface Go 2」を利用した。

1F 2F 3F入口 3F窓際
MX5500(2台) 上り 905 339 381 371
下り 928 476 534 480

※サーバー CPU:Ryzen 3900X、メモリ:32GB、SSD:NVMe 1TB、OS:Windows 10

 結果を見ると、まず近距離の速度が優秀であることが分かる。前述したように、本製品は2ストリーム160MHz幅に対応しており、最大2402Mbpsでの接続が可能となっていて(製品のスペックは4ストリーム160MHz幅で最大4804Mbps)、これが近距離で効く。

 1階での速度は900Mbpsオーバーと、有線並みの速度を実現しており、不足を感じることは一切ない。有線LANポートが1Gbpsなのが残念で、これが2.5Gbps対応であったら、確実に1Gbps以上をマークできた印象だ。

 メッシュ構成のため、長距離の速度が平準化されるのも特徴で、2階以上では、どこで計測しても下り400Mbps、上り300Mbpsほどで通信可能となる。

 この値は、デュアルバンドメッシュとしてはかなり優秀だ。他社製のデュアルバンド製品の場合、5GHz帯をクライアントと中継で共有するため、平均して200~300Mbps前後に落ち着くことが多いのだが、本製品はプラス100~200Mbpsほどのアドバンテージがある印象だ。

 本製品はアプリなどで、メッシュの状況(チャネルや中継のリンク速度)などを詳しく見ることができないため、はっきりとは分からないのだが、160MHz幅を積極的に使っているのではないかと推測できる。

 要するに、5GHz帯の4804Mbpsのうち、中継用に2ストリーム2402Mbps、クライアント接続用に2ストリーム2402Mbpsと、どちらにも160MHz幅を使っているように見える。これにより、デュアルバンドでも高速な通信が可能になっているのだろう。

 もちろん、このようにピークスピードに振った特性は、クライアントの台数が増えたときや周囲の5GHz帯が混雑している場合に不利になることがあるが、このあたりはメッシュによって自動的に調整されると考えられる。

 いずれにせよ、ピークスピードが求められるゲーミングPCなどの環境では、有利な製品と言えそうだ。

一周回ってシンプルに回帰する

 以上、LinksysのAtlas Pro 6 MX5500を実際に利用してみたが、なかなか完成度の高い製品と言えそうだ。

 個人的には、「メッシュはトライバンド」という信念があるので、デュアルバンドのメッシュはあまり好みではないのだが、本製品はデュアルバンドながら高い性能を発揮する製品で、近距離、中距離、長距離、隙のない性能を持っている。

 機能面で他社と比べると不利で、価格も決して安いとは言えないが、魅力は何といってもこのデザインと、デュアルバンドメッシュながら高いピークスピードだろう。ここに魅力を感じることができるのであれば、購入を検討する価値は十分にあるだろう。

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