誰しもが食べたことがあるであろう、瓶詰めのフルーツジャム。
それがもし、2種以上を混ぜ合わせることで2倍以上の美味しさになるとしたら…?
15種類のジャムを買い集め、トースト、ヨーグルト、紅茶それぞれに合う組み合わせを模索した。
クレープ屋さんを眺めていたとき、「ダブルベリーソース」なる表記を見つけた。よく読んでみると、「ストロベリーとブルーベリーのソース」とある。「ダブルベリー」を推しているくらいだから、きっとストロベリーやブルーベリーを単体で食べるよりも美味しいのだろう。
他にもマンゴーとパイナップル、ライチとマスカットなど、お店で食べるスイーツには2種類以上のフレーバーを掛け合わせた味付けのものが多い。
もしかして、だいたいの甘いものはフレーバーを組み合わせた方が美味しいのではないだろうか。きっと家で食べるジャムすらも…
これは毎朝パンに塗るジャムに革命が起きるかもしれない。そう思い立ち、さっそくスーパーにジャムを買いに走った。
まずは出場選手の紹介です
スーパーや輸入食品店を巡り、別メーカー・別フレーバーの15種類を買い集めてきた。これで15×14/2=105通りの組み合わせが試せるというわけだ。
通常の「55」シリーズと比べ、こちらは酸味料の代わりにレモン果汁が入っているなど、より自然なフルーツの味を楽しめるようになっている。
左からブルーベリー、オレンジ、いちご。
左からチェリー、イチジク、ミルクジャム、マロンクリーム。
マンゴーやゴマなど珍しい種類も豊富に取り揃えていた。余談だが、ベルクスは生鮮食品が豊富で安く、スーパーとしてとても素晴らしかった。
左から国産りんご、マンゴー、国産白桃、黒ごま。
「プラム食品株式会社」、うめジャムのメーカーでこんなに信頼できる名前もないだろう。
編集部の石川さんより、最近話題の商品であるとの情報を得て入手したもの。用途はジャムとほぼ同じだが、組み合わせ次第でどうなるか。
メジャーどころのアプリコットやラズベリーを入手できなかったのは悔やまれるが、105通りの中から美味しい組み合わせが発見されることを期待して止まない。
なお今回の組み合わせ方として、実用性を重視して「ほぼ同容量のスプーンで1杯ずつ混ぜていく」こととする。
また、一人で全て試すのは困難と考え、料理と食事を趣味とする友人・概念さんに協力を依頼した。同じマンションに住んでおり、筆者よりよほど頼りになる舌の持ち主だ。
出場選手が出揃ったところで、さっそく試食していこう。
まずはそれぞれの個性を知るところから
JUNERAY(筆者):混ぜる前に1つずつ試食していきましょうか。
概念(友人):そうしよう、食べたことないやつも多いし。
JUNERAY:あ!ベルクスのジャム、単純に味がめちゃくちゃ美味しい。
概念:甘さ控えめで果肉がしっかりしてる。アップルパイの中身みたいなシャキシャキ感。
JUNERAY:それと比べると、アヲハタのジャムは全部味が濃い。フルーツ感がぎっしりしてる。
概念:ベルクスのジャムと1:1で混ぜたら、量あたりの味の強さで負ける気がする。調整が必要かも。
JUNERAY:ボンヌママンもけっこう味が強い。
概念:かなり甘めに感じる。フランス製だからなのかな。
JUNERAY:黒ごまジャムは完全に串団子に載ってる黒ごま餡の味ですね。
概念:パンよりもお餅に塗るべきかもしれない。
JUNERAY:ココナッツペーストは「砂糖とココナッツ」そのもの。あとオイル。
概念:パンに塗って一緒に焼くのがおすすめって書いてある。焼くことで味がどう変わるのかが気になる。
JUNERAY:うわー!これは難しい!ピスタチオクリーム!
概念:これ単体で味が完成されすぎちゃってる。何かと混ぜてバランスが崩れないものか…
JUNERAY:マロン、ミルク、黒ごま、ココナッツ、ピスタチオの4種は、個性がとても強いから組み合わせが難しいと思う。
概念:引き立てる素材を探すのがいいか、真逆の味のものをぶつけてみるか…
まずはスタンダードなベリー系から
JUNERAY:それじゃあ、これらを混ぜていきましょう。まずはよく見るストロベリー×ブルーベリー。
概念:ダブルベリーソースがデザートに入っているのはよく見るけど、そのものの味わいは知らないな。
JUNERAY:市販でもストロベリー×ブルーベリージャムって売ってるんだけど、こうやってそれぞれ買って混ぜたら3種類の味が楽しめるし、こっちの方がお得では?
JUNERAY:あ〜…これは…。ストロベリーでもブルーベリーでも、かといって他のベリーの何者でもない「ベリーのコンセプト味」になりました。
概念:ダブルベリーソースは「ベリーという観念」そのもの?
JUNERAY:「ベリー」というジャンルを総合的に表現した何かです。
概念:よくあるマンゴー×パイナップルなんかも、「トロピカルなイメージ味」かもしれない。おいしさというより、雰囲気づくり。
混ぜジャムメモその1:同じジャンルのフレーバーを混ぜると、そのジャンルのコンセプト味になる。
続けていちご×何かを混ぜていくと…
JUNERAY:あっこれおいしい!!見た目は悪いけど!
JUNERAY:ピスタチオの香りを殺さず、いちごが酸味とジューシーさを補強してる感じ。
概念:この組み合わせ、セブンイレブン×ピエールエルメのコラボドリンクでやってたかもしれない。
JUNERAY:そう言われたらそうだ。ピエールエルメがやってるならおいしくないはずがない。
混ぜジャムメモその2:先人に倣うとだいたいおいしくなる
JUNERAY:それならいちご×ミルクも…?
JUNERAY:大正解です。いちごがどこまでもなめらかになる。
概念:このミルクジャム、意外と酸味があるから、甘酸っぱいジャムになめらかなテクスチャを足したいときに使うといいかも。
意外とおいしい組みあわせ、大変なことになる組み合わせ
JUNERAY:あ!これすごくおいしい!
概念:イチジクの種のプチプチ感と、りんごの果肉のシャキシャキ感が楽しい。
JUNERAY:味もいい感じに調和してるし、食べ物としての完成度が高い。
概念:これ、なんでおいしいのか分からないけどとってもおいしい…。
JUNERAY:マンゴーとブルーベリー、それぞれが戦わずに共存している。口に入れた瞬間はブルーベリーなんだけど、後味がマンゴーで面白い。
概念:さっきアヲハタのオレンジとブルーベリーを混ぜたときも不思議とおいしかったし、果肉に果肉をぶつけるのはアリなのかもしれない。
JUNERAY:今のところ、組み合わせで困ってるジャムありますか?
概念:黒ごまが難しすぎる…ココナッツくらい味が強いものだったら合うのかな?
JUNERAY:えっ…?なに……?
概念:どうしたの?
JUNERAY:味がなくなった…ここには何もない…
概念:味が強すぎるものを混ぜると、ぶつかり合って虚無になる?
JUNERAY:そんな、サンドイッチマンのゼロカロリー理論※みたいな…。
混ぜジャムメモ3:味の強いものを混ぜ合わせると虚無になる場合がある
※天ぷらとラーメンを一緒に食べると、カロリーがぶつかり合って外に出て行く というサンドイッチマン伊達さんの理論
概念:黒ごまには、ミルクジャムを多めに混ぜるといいかも。
JUNERAY:ブルーベリーには黒ごまが負けたし、うめと混ぜたらうめがいなくなってしまった。
トースト、ヨーグルト、紅茶にそれぞれ合う混ぜジャムは?
概念:さて、一通り試したわけですが…
JUNERAY:今回はトースト、ヨーグルト、紅茶にそれぞれ合う混ぜジャムを選びましょう。
JUNERAY:今回の15種の組み合わせで、最もトーストが美味しくなった混ぜジャムはこちらです。
概念:これは確実に2倍以上の美味しさになってる。おいしいパイの中身。
JUNERAY:デパ地下で380円のデニッシュの味。
概念:マロンのなめらかさと、チェリーの甘酸っぱさのバランスがいい。特にマロンジャムはそのまま食べてもおいしいくらい完成度が高いから、チェリーを加えることで高級感が出る。
JUNERAY:トーストじゃなく、クロワッサンなんかの方がいいのかも…。次点で美味しかった組み合わせはこちら!
概念:ココナッツペーストだけだと、おいしいけれど正直そこまでかな…?って味なんですよね。
JUNERAY:そうそう、リピート買いするほどではない。マンゴーのジューシーさが合わさってようやく完成品って感じ。
概念:マンゴーとココナッツの相性がすごく良い。あらかじめ一緒に焼いておくことで、ココナッツペーストのざりざりした食感が気にならなくなる。
JUNERAY:「トロピカルなイメージ味」になるかと思いきや、それぞれが引き立て合ってる。
概念:ヨーグルト部門はどう?
JUNERAY:ヨーグルトと合わせて美味しかったのは、やはりこちらです。
概念:ヨーグルトは食感が単調だから、ジャムのプチプチ感とシャキシャキ感が加わることで食べるのが楽しくなる。
JUNERAY:味として、ヨーグルトが入ることですごくまろやかになるんですよね。1つの食べ物として完成されてる気がする。「2種がけ」でなく、「しっかり混ぜる」ことの醍醐味。
概念:りんご以外でも白桃とか、爽やかで果肉がごろっとしているものはだいたいヨーグルトに合う印象。
JUNERAY:でも、ヨーグルト部門2位にはこれを推したいんですよね…意外性の面で…
JUNERAY:これ完全にレアチーズケーキだった!
概念:ヨーグルトにミルクジャムを加える発想がなかったけど、まろやかでおいしい。ビスケットがほしくなるな…
JUNERAY:ヨーグルト、懐が広いから黒ごまやピスタチオもおいしく食べられる。
概念:うめジャム×オレンジもジューシーですごくおいしかった。アヲハタは味が強いからうめジャム多めで…
JUNERAY:続いて紅茶部門、第1位はこちら。
JUNERAY:紅茶とジャムの合わせ方って意外と難しくて、すぐ紅茶の味と分離しちゃうんですよね。
概念:そうそう、うまいこと馴染まないのが多い。
JUNERAY:この組み合わせは、レモンジャムが入ることで知ってるレモンティーの味になった上で、梅のアクセントがあるのがいい。
概念:むしろ梅くらいクセがないと意味がない気がする。そう考えると、やっぱり第二位はこれかな。
JUNERAY:アップルティーベースで、チェリーが入るとちょっとすっぱくなる。
概念:赤いアップルティーで酸味があるの、新感覚で面白い。「紅玉のアップルティーです」みたいなことを言われたら信じるかもしれない。
JUNERAY:最後に果肉が残るのも楽しくていいかも。紅茶に洗われて、ちょうどいい甘さになったりんごがおいしい。
概念:メインは紅茶であり、ジャムでもある。
・同じジャンルのジャム(ベリー×ベリーなど)を混ぜると、おいしいが漠然とした味になる
・プロがやってる組み合わせは家庭のジャムでやってもうまい
・強い味のもの同士を混ぜると虚無になる場合がある
・ココナッツペーストには果肉を重ねた方がうまい
・マロンやチェリーは社交性が高く、思いのほかなんにでも合う
・アヲハタのジャムは味が強いため、やや控えめに混ぜる
・口当たりを良くしたい場合はミルクジャムをプラス
・ヨーグルトには果肉感、紅茶にはよくあるフレーバー(レモンやアップルなど)+アクセントがセオリー
・虚無になることはあってもまずくなることはほぼない。メリットの方が大きいから気軽に試してOK。
ぜひご家庭で試していただきたい「混ぜジャム」
記事の前半部にも記述したが、すでに2種類以上の果肉が混ざったジャムや、2層になったジャムは市販されている。
しかし、単体のフレーバーを複数持って適宜混ぜて食べる方が、そのぶん多くの味も楽しめるし、好きな塩梅に調整できてお得なように思う。
日常的にジャムを食べる方は、ぜひ一度は混ぜて食べてみてほしい。2倍以上の美味しさになったらしめたものだ。
今回余ったジャムにはスピリタスを吹きかけて(こうしておくとカビが生えない気がする)、筆者がおいしくいただきます。