東京パラリンピックの熱戦を通じ、2021年は障害そのものにも注目が集まった。それでも、メディアで障害者を見る機会は「期待していたほど増えていません」と話すのは、20歳の時に事故で右手と両足を失った山田千紘さん(30)。自身もメディアで発信する機会が多い年だったという彼は今、障害者とメディアの関係をどう見ているのか。今後メディアに期待することは。山田さんが語った。
【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ (この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)
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東京五輪では聖火ランナーを務めた山田千紘さん
期待していたほど、メディアで障害者を見る機会は増えていない
2021年は東京パラリンピックがあり、障害のある人々がメディアですごくフォーカスされました。僕のパラアスリートの友人がNHKで特集されたり、バラエティ番組やワイドショー番組で車いすの方を見かけたりして、溶け込んできたんだなと思いました。
でも、障害者が取り上げられたのは「パラリンピックバブル」だったというのか、その流れは長く続きませんでした。なかなか期待していたほど、メディアで障害者を見る機会は増えていません。
パラリンピックで活躍したアスリートをきっかけに、他の障害者の方々にまで社会の目が向かなかったのだと思います。パラリンピックでアスリートに注目するのは当然のこと。そこから、障害の有無を超えた「共生社会」というところまで視点が広がらないまま、大会が終わってしまったのかなと思います。
手足がある人とない人、目が見える人と見えない人、障害者と健常者が、当たり前のように同じ場で活躍できる社会になってほしい――。
東京パラリンピックをきっかけに、そんな可能性の広がりを楽しみにしていました。大会を通じて障害そのものがメディアで取り上げられる機会が増え、障害について社会全体で考えるようになっていくと思ったからです。でも、それはまだ道半ばです。