ニューノーマルはすでにノーマルとなり、街の鼓動は再び力強く脈打ちはじめている――。
そんななか日本の業界関係者たちは、2022年にどんな課題を感じ、どんな可能性を見出しているのか? この年末年始企画「IN/OUT 2022」では、 DIGIDAY[日本版]とゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブに伺った。
株式会社フジテレビジョンにて、コンテンツ事業部・チーフビジョナリストを務める清水俊宏氏の回答は以下のとおりだ。
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――2021年に得たもっとも大きな「成果」はなんですか?
オオタニサンの投打にわたる活躍で沸いた2021年。テレビ局も「放送事業」と「コンテンツ事業」の“二刀流”が大きく飛躍した年でした。コンテンツ事業では、動画配信サービスFODやオンラインメディア「FNNプライムオンライン」「フジテレビュー!!」などコロナ前から取り組んでいるサービスが大きな伸びを見せました。
背景には、コロナ禍における社会環境や生活者意識の変化をとらえて“二刀流経営”への挑戦が加速したことが大きな理由として上げられます。ひと昔前までは、テレビの事業と言えば「放送事業」と「放送外事業」という括りで語られていました。これでは「投げるのが本業で、打撃はうまいという程度で良い」との甘えや放送事業への遠慮が生まれがちです。2021年は「放送事業」と「コンテンツ事業」という考え方が完全に浸透しました。
番組の見逃し配信や地上波ニュースの焼き直し記事といった「放送のスピンオフ」にとどまることなく、「打撃も本業」としてオリジナルドラマやアニメ、独自記事などのコンテンツを次々と生み出していることは、今後のさらなる成長にもつながるため、2021年のさまざまな取り組みは大きな成果であったと言えます。
――2021年に見えてきたもっとも大きな「課題」はなんですか?
メタバースやNFT、ESGなど、これからの著しい成長が見込まれ、かつテレビ局のコンテンツビジネスと相性の良さそうな分野の存在がくっきりと見えてきましたが、それらの新規領域にどう取り組んでいくのかが課題です。そうした事業を手掛ける人たちと情報交換する機会には恵まれていますが、リソースには限りがあるため、すべてに網を張ることは簡単ではありません。目利きをしたり、優先順位をつけたり、関係する部署や担当者を巻き込む胆力が試されています。
――2022年にもっとも注力したい「取り組み」はなんですか?
新たな事業としてYouTubeで経済番組『#シゴトズキ』を始めました。私自身がMCとなって、経営者やマーケターなどからビジネスに役立つ思考法を聞くチャンネルです。2021年は「動画事業」としての側面しか見せられていませんが、2022年は「教育事業」「コミュニティ事業」としての取り組みを拡大していきたいと考えています。
異業種の出演者同士をつないだり、視聴者も巻き込んだコミュニティを作り上げたりすることで、イノベーションの芽をいくつも育てるのが目的です。
これまでは「他社をライバルとして、いかに差別化するか」を至上命題として取り組む企業が多かったのですが、ダイバーシティの時代においては「企業はそもそも特徴や違いを持っているので、いかに異業種と交流して新しい市場を開拓するか」の方が重要な局面が増えています。
そもそもYouTubeの存在そのものがテレビのライバルと見られがちですが、媒体の違いを冷静にとらえて活用すれば、動画業界やコンテンツ業界そのものを盛り上げることができます。
2022年は、そうした企業連携、事業創出にさらに注力していきたいと考えています。
Edited by DIGIDAY[日本版]編集部