「ヘビを使った『スネークマッサージ』を行う店がエジプトにある」という話をテレビで知った私は、「エジプトへ行ったら絶対に行く」と心に決めていた。何を隠そう私は無類の爬虫類好き。おまけに記事としてもかなり “オイシイ画” が撮れそうだ。
ところが! 念願のエジプトへ上陸した私がマッサージ店へ電話をかけると「もうヘビマッサージはやっていない」という非情な答えが返ってきた。さほど需要がなかったということなのだろうか……無念。
すると、電話を切ろうとした私に「もっといいマッサージがアルヨ」とお店の方。まさかサソリじゃないだろうね?
・とりあえず行ってみた
問題のマッサージ店『Chill Out Massage』へは、タハリール広場から車で40分ほど。旅行者が偶然通りかかる可能性は極めて低い場所に位置している。
不気味な雑居ビルの3階が目指す場所だ。
薄暗い階段を登ると……
「ウエルカム!」と受付の男性がお出迎え。しかしマッサージを受けたい旨を伝えたところ、「また明日来てほしい」と言われてしまう。店内に客の姿は見えないが、なぜ今じゃアカンのか?
理由を訊くと「今日は女性スタッフが出勤していないから」とのこと。人口の9割をイスラム教徒が占めるエジプトでは、様々な場面で男性用と女性用とが明確に分かれている。要するに男性スタッフが女性客に施術することはできないのだそうな。そういうことなら仕方ないよね。
・野良ライターはつらいよ
そして翌日。改めて店を訪れると、しばし奥の部屋で待つよう指示された。扉を開けると……
ウワーーー!!! スッゴいベッド!!! エキゾティーーーック!!!!
と、喜んだのも束の間……私が使うのはさらに奥の暗い個室でした。なんでも私が受けるコースは全裸で行うらしく、間違っても男性が乱入せぬよう扉に二重の鍵をかける徹底ぶり。女性でも安心して利用できる店である。
なお本記事の執筆にあたっては施術中の画像が必要不可欠となるのだが、なにぶん私は1人で取材に訪れている身。お店からは「写真撮影はOKだけど動画はNG」と伝えられている。
よって私はベッドの横に自動撮影できるカメラを設置し、別のカメラを手元に置いてマッサージに臨んだ。施術は真っ暗の状態で行われるとのこと。うまく撮影できなければ記事はオジャンである。野良ライターはつらいよ……。
しかし幸いにも、この日の担当は “撮れ高” をやたらと気にかけてくれるお姉さん。5分おきに「ホラ、カメラを向いて」とプロデューサーのごとく指示を飛ばしてくだすった。おかげで撮れ高は何とか確保できたことを先にご報告しておきたい。
この日のマッサージは60分コースで450EGP(約3272円)。聞くところによると元々エジプトでは一般人がマッサージ店に通う習慣はないが、近年は富裕層や観光客向けの店が増えてきているらしい。
全身オイルマッサージの後は吸引器具で悪い血を吸い上げる。ここまでは日本のマッサージとあまり変わらない感じだ。取材を忘れて眠りそう……。
・エジプト秘伝のワザ
で……ここからがようやく今日のメイン。
炎を使った『ファイヤーマッサージ』である!
なお室内があまりにも暗すぎたため、手元のメイン・カメラの画像はほぼ使い物にならなかった。ここからお伝えするのは、私がうつ伏せの状態で感じた “感覚” である。
背中に湿った布が巻かれる。その上へ何か液体が撒かれている様子だ。しばしの沈黙があり、「はい、今ファイヤーしてるわよ」とお姉さん。えっ、もう!? ファイヤーしている実感は全くないが、言われてみれば少し背中に暖かさを感じるような……?
あ…………だんだん熱くなってきたかも……
あっ、待って待って、これガチで熱いかも?
…………
…………
あ、あ、アチ、アチチ熱い熱い熱い熱い!!!!!!
ファイヤーーーーーーー!!!!!!!!!
・ファイヤーだった
そのとき私は「間違いなく皮膚が焼けただれている」という確かな感覚をおぼえたのだが……後から確認するとやや赤くなっているだけだった。やや赤くなる程度でこれほど熱いのだから、実際に皮膚が焼けただれる感覚たるやいかばかりなのだろう。
私が限界を訴えると、すぐに布を被せて火を消してくれるお姉さん。
そしてまた新しい火がつけられる……というのがファイヤーマッサージの全貌なのだ。どういった効果が得られるのかは不明。
「またやりたい」と言えば嘘になるけれど、人生において非常に有意義な体験ではあった。
『Chill Out Massage』では他にも「貝殻マッサージ」「泡マッサージ」「電動ドリルマッサージ」など、奇想天外なメニューを数多く提供している。エジプトへ行った際はぜひ一度訪れてみてほしい……それにしても陽気なお姉さんだったなぁ〜。
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.