「なぜ科学はウソをつくのか?」が一発で分かるムービー

GIGAZINE
2021年12月09日 06時00分
動画



新型コロナウイルスに関するニュースがそうであるように、科学は現代社会に欠かせないテーマですが、多くの人は何年も専門的な教育を受けた科学者ではないので、科学的な物事を伝える記事やムービーは多かれ少なかれ事実を簡略化した「うそ」をつくことになります。科学がそのような「うそ」をつくことの必要性やその影響について、科学的な教育ムービーを多数手がけてきたYouTubeチャンネルのKurzgesagtが解説しました。

…And We’ll Do it Again – YouTube
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ムービーは「Kurzgesagtは、本作を含めたすべての映像作品でうそをついています」という衝撃的な告白で始まります。


ここでの「うそ」とは事実無根の虚偽のことではなく、「子どもに説明するときのうそ」という類いのものです。


例えば、子どもの頃に以下のようなイラストを見せられながら「私たちの地球はたくさんの仲間と一緒に太陽の周りを回っています」と教わった記憶がある人は多いはず。


しかし、実際のところ太陽や太陽系の惑星は大きさがまったく違う上に、惑星間の距離も非常に遠いので、こうしたイラストはある意味で「うそ」だといえます。


科学がしばしばこのようなトリックを使うのは、何年も猛勉強して科学を学ばなくても、科学的な考え方を身につけられるようにするためです。


ほんの数百年前までは、1人の知識人があらゆる分野の専門知識に精通することは不可能ではありませんでした。しかし、指数関数的に増加した情報が氾濫する現代では、あらゆる分野を知り尽くそうとするのは無駄な努力です。


そこで、できるだけ物事の本質を捉えた「たとえ話」でわかりやすく表現するというプロセスが必要になってきます。その典型的な例の1つが分子です。学校では、分子はこのように何本かの腕で結びついたボールで説明されます。


しかし、実際の分子は絶えず振動しながら動き回る原子が電荷で結合した雲のような塊です。


こうした単純化は、一般人の理解を容易にするだけでなく、専門家自身にとっても有益なものです。例えば、化学者が別の分野の専門家に化学結合を説明する際にも、以下のような「事実とは異なる電子殻のモデル」が使われています。


しかし、人類の脳は科学を理解するために進化したわけではないし、この世界も人間に理解してもらうために作られたわけではありません。そのため、過度の単純化が問題になるケースもあります。


人々の関心を引くがんの研究が新たな治療法の発見に結びついたり、食べ物に関する調査が健康的な食品の開発に役立ったりするのは事実です。


ところが、期待をあおったあげく結局がんの治療法が見つからなかったり、ダイエット食品でダイエットがうまくいかなかったりした場合、科学への信頼が損なわれてしまうおそれがあります。


逆に、できすぎたストーリーや魅力的すぎる単純化に人々がとらわれてしまうと、本来は複雑なはずの事実がゆがめられ、誤った安心感や自分の科学的な知識に対する過信を招きます。


専門家でもないのにワクチンや気候変動を否定する人々が急増している原因の1つは、こうした科学と人々のコミュニケーション不全です。この問題は、個人のみならず社会にとっても重大な悪影響を及ぼします。


そこで、何百万人もの視聴者を擁するKurzgesagtでは科学系の記事を読むことから始めて、書籍や査読付きの論文の精読、専門家へのインタビューといった一次資料の収集を行い、自分たちがムービーのために単純化した事実を参考文献付きの文書にまとめているとのこと。


それでも、複雑な事柄を10分程度の動画にまとめるには、情報を取捨選択し枝葉末節を省く過程がどうしても必要です。これが、冒頭の「すべての映像作品でうそをついています」という告白の真意です。


Kurzgesagtは、科学を解説するムービー制作の今後ついて「私たちが最もやりたいことは、人々にインスピレーションを与え、科学や私たちが住む素晴らしい世界への好奇心をかき立てることです。学ぶことは楽しいことばかりではありませんが、適切なストーリーがあれば最高のものになります。それが最終的に本を読んだり、学校や大学でもっと真剣に勉強したり、科学的な分野に興味を持って自分で学んだりすることにつながればと願っています。そして、私たちが単純化という『うそ』をついていることを知った後でも、私たちの動画を楽しんでもらえたら幸いです」とコメントしました。


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