筋トレ直前に飲むサプリで筋トレ効果をアップすることはできるのか?

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「筋トレ」と言われるとトレーニングだけが重要そうに思えますが、実際には「筋トレは食事から始まる」というもあるほど栄養が筋トレの成否に大きく関わっており、近年は「筋トレ前に飲んで筋トレ効率をアップ」といったサプリが出現しています。そんなサプリの効果のほどについて、スポーツ栄養コンサルタントとしても活躍するリヴァプール・ジョン・ムーア大学のグレアム・クローズ教授らが解説しています。

Pre-workout supplements: why five of the six most common ingredients probably aren’t helping you
https://theconversation.com/pre-workout-supplements-why-five-of-the-six-most-common-ingredients-probably-arent-helping-you-173391

筋トレ関連のサプリメントとしてはプロテインが一般的ですが、近年はトレーニング効果が向上するという「プレワークアウトサプリ」も人気です。プレワークアウトサプリは、主にワークアウトの30~45分前に摂取すると筋肉がつきやすくなったり、パフォーマンスがアップしたり、バテにくくなったり、新陳代謝が高まったりするとうたうサプリメントのことを指します。

このようなサプリメントは、筋トレに有益な効果をもたらすという各種栄養素を含んでいます。しかし、クローズ教授らによると、筋トレ前に摂取して本当に効果を発揮するとは限らないとのこと。以下が各栄養素に対するクローズ教授らの解説です。

◆カフェイン
カフェインは倦怠感を軽減し、覚醒作用を促す成分としてほとんどのプレワークアウトサプリに添加されています。クローズ教授らによると、実際に運動の30~60分前にカフェインを摂取すると、1~2時間継続して運動した際の持久力系のパフォーマンスが20%向上するというしっかりとした証拠があるとのこと。


他方、カフェインには過剰摂取時にめまい・不安・震え・不眠などの健康被害がもたらされる可能性があります。クローズ教授らによると、過剰摂取にあたるカフェインの摂取量は体重1kgあたり5~13mgほどで、筋トレに適した摂取量は体重1kgあたり3mg未満でOK。コーヒーは豆の産地によってカフェインの含有量が大きく異なるため、カフェイン含有量が明記されているサプリはカフェイン摂取量のコントロールに優れているとのことです。

◆β-アラニン
β-アラニンは人間の体内で合成可能な非必須アミノ酸の一種で、筋肉に蓄積されるカルノシンという物質を産生するために必要です。カルノシンは筋肉のpHレベルを維持する役割があり、高強度のワークアウト中の持続力を高める効果があるとされています。

しかし、クローズ教授らによると、確かにβ-アラニンが筋トレのパフォーマンスを改善するという研究結果は存在するものの、β-アラニンが効果を発揮するためには毎日最低3.6gを最大6週間継続的に摂取する必要があるとのこと。そして、プレワークアウトサプリに添加されているβ-アラニンはたいてい0.35~3.2gの範囲内であるため、量が足らないというのがクローズ教授らの意見です。

なお、β-アラニンには摂取時に「体がピリピリする」という副作用があるそうで、その副作用が「効いている」という感覚をもたらすものの、プレワークアウトサプリに入っている量で効果が出るという証拠は一切ないとのことです。


◆BCAA
BCAAは人間の体内で合成できない必須アミノ酸のうち、筋肉のエネルギー源となるバリン・ロイシン・イソロイシンの3種が該当する分枝鎖アミノ酸のことで、運動後の筋損傷を抑制して筋疲労や筋肉痛を軽減する効果があるとされています。

必須アミノ酸BCAAとは|大塚製薬
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/bcaa/about/


しかし、クローズ教授らによると、プレワークアウトサプリに入っているBCAAもβ-アラニン同様「量が足らない」とのこと。プレワークアウトサプリに入っているBCAAは通常400~1500mg程度で、この程度の量で筋肉の成長を促進したり、倦怠感を軽減したりすることを立証する研究結果はほとんど存在しないそうです。既存の研究によると、BCAAが効果を発揮するために必要な用量は5000mgで、飲むタイミングは「ワークアウト後」が最適とされています。

◆クレアチン
クレアチンはβ-アラニンと同じ非必須アミノ酸の一種で、筋肉が収縮する際にエネルギーとして消費されるアデノシン三リン酸(ATP)の再合成に利用されるクレアチンリン酸の材料です。運動パフォーマンス向上や筋肉量増加、脳の機能改善などの多様な効果が期待できるとされており、筋トレの効果アップをうたうサプリが多数販売されています。

クレアチンの効果や正しい飲み方とは | POWER PRODUCTION MAGAZINE(パワープロダクションマガジン)
https://cp.glico.jp/powerpro/training/entry22/


クレアチンはシャトルランの回数や筋力、運動後の回復速度などさまざまなパフォーマンス向上に有効であるという研究結果が多数報告されています。従って、クレアチン自体は筋トレにオススメと言えるのですが、クローズ教授らによると、クレアチンが効果を発揮するために必要とされる摂取量は毎日3~5gほどですが、プレワークアウトサプリの含有量は1.5~5.0gほどなので「プレワークアウトサプリの場合は量が足らない場合もある」とのこと。なお、クレアチンを20g摂取した後に毎日3~5g摂取すると運動能力が向上するという研究結果もあるそうです。

◆緑茶
日本人に身近な緑茶は脂肪燃焼効果があるとされるカテキンと前述したカフェインを含んでおり、プレワークアウトサプリの中には「緑茶抽出物/茶エキス」が入っていることをうたう製品も存在します。プレワークアウトサプリに含まれる緑茶抽出物は通常100~250mgほどですが、緑茶抽出物300~600mgを12週間にわたって摂取した被験者を対照群と比較したところ有意な差は確認されなかったという研究結果も存在しており、「プレワークアウトサプリに含まれる程度の量でも効果があるという証拠は限られている」とのことです。


◆ビタミンB群
糖質のエネルギー変換やアルコールの代謝、たんぱく質の消化過程などに欠かせない栄養素とされているのがビタミンB群です。ビタミンB群はエネルギーの産生に必須とされていますが、魚・鶏肉・レバー・乳製品など、ごく一般的な食品にも含まれています。

ビタミンB群の働き、多く含まれる食品を紹介
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=96&category=beauty


クローズ教授らによると、運動によってビタミンB2やB6が不足する可能性があるそうですが、「不足していない限りはサプリで摂取しても特に効果はない」とのことです。

◆結論
以上のことから、クローズ教授らはワークアウト前に少量摂取した場合に運動能力が改善されると言い切れるのはカフェインのみだと語っています。

なお、サプリメントにはしっかりとした検証が行われていない成分を含むものも存在するため、その成分には十分気をつけるべきとのことです。

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