ヤフー、「第三者視点」でアドベリフィケーションの品質向上を目指す : DoubleVerify の Pre-bid 機能を実装

DIGIDAY

国内最大級のプラットフォーマーであるヤフーが、デジタル広告の品質向上に向け、新たな動きを見せている。

ヤフーは、2018年のアドフラウド対策強化を期に、自社のプラットフォームにおける、デジタル広告品質の向上と、業界の健全化に努めてきた。2019年には、広告品質における3つの価値と6つの対策を定義した「広告品質のダイヤモンド」を宣言。2020年には、それまでの同社の取り組み実績を示した「広告サービス品質に関する透明性レポート」を発表した。

さらにヤフーは2021年12月、「Yahoo!広告 ディスプレイ広告」に世界有数のアドベリフィケーションベンダー、DoubleVerify(ダブルベリファイ、以下DV)が提供するソリューションの標準実装を開始。これにより広告主は、入札直前にアドフラウドなどの無効トラフィックや、ブランド毀損リスクのあるコンテンツをリアルタイムで検知して配信を停止するプレビッド(Pre-bid)機能が備わった環境で、Yahoo!広告 ディスプレイ広告を利用できるようになる。

「広告品質の向上を徹底するのであれば、業界トップクラスのテクノロジーベンダーである、DVの力を借りて、第三者の視点からも対応していく必要があると考えた」。こう語るのは、ヤフーのメディア統括本部トラスト&セーフティ本部長、一条裕仁氏だ。一方、DoubleVerify Japan カントリーディレクター、武田隆氏は「ヤフーほどの規模のプラットフォームとなると、さまざまな角度から広告品質を担保する必要がある。その点、我々のソリューションがあれば、統合的な指標で品質を管理することができる」と述べる。

向かって左からDVの武田氏、ヤフーの一条氏

広告主が享受できるメリット

まず、今回のヤフーとDVの取り組みは、広告主にはどのようなメリットをもたらすのか。これについて一条氏は「グローバル水準の解析力を持つ、DVのアドフラウド、およびブランドセーフティ制御技術が標準実装された環境で、Yahoo!広告 ディスプレイ広告を利用できるようになることだ」と説明する。

現在、広告配信を制御する方法として主流なのは、入札直前にアドフラウドなどの無効トラフィックやブランド毀損リスクのあるコンテンツをリアルタイムで検知し、配信を停止するプレビッドと、入札後にリスクを検知して停止措置を行うポストビッド(Post-Bid)がある。今回、DVとの提携でYahoo!広告 ディスプレイ広告に実装されたのは、前者のプレビッドだ。

これにより、Yahoo!広告 ディスプレイ広告において、アドフラウドやブランド毀損をはらむ広告リクエストは、配信が行われる数ミリ秒前に停止される。「広告枠を買い付ける前から、アドフラウドやブランド毀損のリスクを検知するプレビッドの方が、より本質的な解決策だと考えている」と、一条氏は強調する。

今回実装される機能の概要図

DoubleVerifyが選ばれた理由

プレビッド機能を提供するテクノロジーベンダーは、DV以外にも存在する。そんななかヤフーは、なぜDVをパートナーとして選んだのか。

その理由のひとつは、アドベリフィケーションを様々な角度から判定できる、高い技術力を持っている、という点だ。取引先の選定時、実トラフィックを元に行ったテストでDVの精度が良かったことが決め手となった。

武田氏によると、アドフラウド検知は、主流である「確率論的手法(Probabilistic Method)」と「決定論的手法(Deterministic Method)」があり、DVでは後者を採用しているとのこと。「DVでは、AIと人間の目視で、すべてのインプレッションについて判定を行っているため、非常に精度が高くなる」と語る。

またDVは、安全性の基準として「オーセンティック・アド™」という独自指標を持つ。これは「ブランドセーフティ」「アドフラウド」「ビューアビリティ」、そして「インジオ(In Geo:In the Intended Geoの略で、ジオターゲティングを行う際、意図したエリアに配信されているかを測る指標)」という、アドベリフィケーションにおける4つの主要な指標を統合したもの。DVでは、このオーセンティック・アド™を用いて、さまざまな角度から広告品質を判定している。オーセンティック・アド™は、MRC(Media Rating Council:米メディア・レーティング審議会)で唯一認定されている統合指標で、その信憑性はお墨付き。武田氏も「我々にとって大きな強みだ」と述べる。

国外では、DVを活用した成功事例もある。タイ日産(Nissan Motor Thailand)では、同社のソリューションを導入後、不適切な広告掲載面に配信される割合が37%から7%まで減少した。これは、当初63%だった広告費の適切な消化率が、93%にまで上昇したということを意味する。「こうした実績は、DVをパートナーとして選ぶうえで、非常に良い判断材料になった」と、一条氏は振り返った。

「DVはグローバルな実績があるため、大きな期待を寄せている」と述べる一条氏

「品質向上」と「リーチ確保」の両輪で

武田氏も、今回の契約締結は「DVにとっても、非常に意義深いものだ」と述べる。「国内有数のプラットフォーマーであるヤフーがリーダーシップを取ることは、間違いなく業界にとってプラスになる。そこに我々が尽力できるのは、非常に光栄だ」。

武田氏がいう「尽力」とは、ただ不適切な配信をブロックするということではない。「アドフラウドやブランド毀損を防ぎつつも、充分なリーチを確保できる状態を築くことが、本質的な対策だ」。

ことブランドセーフティを重視する広告主に多いのが、少しでもブランドを毀損するコンテンツがあった場合、パブリッシャーのドメインごとブロックしてしまうケースだ。これではブランドセーフティは担保できるが、充分なリーチが確保できない。「ページごとに見ていけば、出稿に問題のない媒体もある。我々のソリューションであれば、そうした広告枠ごとのリクエストを解析することが可能だ。リーチを大幅に損なうことなく、ブランドセーフティを担保することができる」。

「DVのソリューションなら、リーチもしっかり確保することができる」と武田氏

安心して広告を出せる環境を

一方、これまでもヤフーは、ブランドセーフティの担保やアドフラウドの排除に積極的に取り組み、デジタル広告品質の向上と信頼の確保に努めてきた。

たとえば、2018年10月にはアドフラウドへの対策を強化。それ以降の約5カ月間で、およそ5900件の広告掲載面を停止したと報告している。次いで2019年5月には、「広告品質のダイヤモンド」を宣言。ここでは、広告品質に関するグローバルスタンダードを参考にした、ヤフー独自の「広告品質における3つの価値と6つの対策項目」が提示されている。一条氏は「広告主の方々が安心して広告が出せる環境を率先して実現すべく、この宣言を出した」と述べた。

また、2020年8月には「広告サービス品質に関する透明性レポート」として、広告配信の最新の停止状況を公表。一条氏が「掲載面の制御だけではなく、広告掲載基準も厳しくすることで、我々のプラットフォームの価値を高めようと考えている」と述べるように、同レポートでは広告掲載面への非承認実績だけでなく、広告それ自体の非承認実績も明示されている。

広告主の熱意も不可欠

世界のデジタル広告市場は、Webブラウザやアプリ以外にも、コネクテッドTV(以下、CTV)の領域などで加速度的に広がっている。こうした状況は広告主にとって魅力的なものだが、同時に、今後不正の温床が広がる可能性を孕んでいる。実際、CTVの普及で先を行く米国では、未知の不正が検出されるなどの事例も見られている。そして、今後CTVなどが国内でも普及すれば、こうした事態は日本企業にとっても対岸の火事ではなくなる。

そこで今後も重要になるのが「広告主の熱意」だと、武田氏は強調する。いわずもがな、広告費を投資するのは、ほかでもない広告主だからだ。「彼らの強い意志が伴ってはじめて、広告の新しいエコシステムが構築できる」。武田氏の発言に対し、一条氏も以下のように続ける。

「広告の信頼性を高め、しっかりと効果を出していくためにも、我々プラットフォーマーは、責任感を持って広告の品質向上に努めていく。それと同時に、広告主のみなさまにも一層意識を高めてもらえるよう、働きかけていきたい」。

【プレスリリース】ヤフー、DoubleVerifyと連携しアドフラウド排除とブランドセーフティ確保を 強化するリアルタイム不正解析機能を導入開始

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(滝口雅志)
Photo by 渡部幸和

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