Apple関連ニュースサイトのAppleInsiderが、「1988年に発売されたApple Watchの前身がオークションサイトに登場した」と報じており、2万5000ドル(約275万円)の値が付く可能性があると主張しています。
ComicConnect – WRISTMAC (1988 LEGENDARY 1ST APPLE WATCH) Memorabilia – VF: 8.0
https://www.comicconnect.com/item/941004
Rare 1988 Apple Watch predecessor ‘WristMac’ expected to get $25K at auction | AppleInsider
https://appleinsider.com/articles/21/11/21/rare-1988-apple-watch-wristmac-going-up-for-auction
開始額1ドル(約110円)で出品されたのが以下の時計。説明文には「1988年に発売されたセイコーの『WristMac』で、Apple Watchの最初のモデルである、ウェアラブル・コンピューティングテクノロジーを搭載した最初の製品の1つです」とあります。箱も説明書もすべてそろった完品の状態で、外箱には日本語で「腕コン ピ!」と書かれており、中には時計本体と「WRISTMAC」と書かれたフロッピーディスクと説明書があります。
1991年8月6日のニューヨーク・タイムズの記事によれば、スペースシャトル・アトランティス号の乗組員はAppleのパーソナルコンピューター「Macintosh(マッキントッシュ)」のデータを腕に表示するための「WristMac」を装着していたとあります。AppleInsiderはこの時計の名前が「WristMac」であると捉えていますが、時計自体はセイコーの「RC-4000」と呼ばれるモデルです。
実は(PDFファイル)RC-4000シリーズの取扱説明書(英語版)が、Microsoft Researchの研究者でデザイナーのビル・バクストン氏のコレクションとして公開されています。この取扱説明書によると、腕時計としては曜日・月日・時刻を表示でき、特定の月日や時刻にメッセージを表示するスケジュールアラーム機能も搭載していたことがわかります。
また、RC-4000は12文字×2行×15ページで構成されるメモ帳3冊分のデータを自由に残せるので、腕時計内に電話番号や住所を保存することができます。現代はスマートフォンの連絡帳や各種SNSを利用すれば簡単に相手に連絡が取れますが、発売された1980年代後半は連絡帳片手に固定電話や公衆電話から相手に電話やポケベルをかける場合が多かったので、腕時計に連絡帳を保存できるのは大きなセールスポイントでした。
さらにRC-4000はシリアルケーブルと外付けのコネクタを使うことで、Apple II、Apple II+、Apple IIe、Apple IIc、コモドール64、IBM-PCなどさまざまなPCと接続して、PC側からデータを入力することができました。
そして、WristMacはRC-4000シリーズとマッキントッシュシリーズを接続するためのツール。詳しい情報は不明ですが、Apple IIやマッキントッシュ関連のコレクターであるdanbo氏のサイト「MACお宝鑑定団」には、オークションサイトの写真に写っているフロッピーディスクと同じロゴとRC-4000シリーズのシルエットが書かれた箱と中身の写真が掲載されており、「1987年に、SEIKO RC-400シリーズのデータ機能に、Macintosh側からリンク出来るセットして発売されていました。接続はハイパーカード系のスタックで、シリアルケーブル接続で使用していました」と紹介されています。
WRIST MAC
http://www.tcp-ip.or.jp/~danbo/WRISTMAC.html
RC-4000は特に高騰しているモデルというわけではなく、例えばヤフオク!でRC-4000に限った相場価格を見てもだいたい1万円以下で取引されている状態。オークションの出品者やAppleInsiderは「Apple Watchの先祖」と表現していますが、実際は「セイコー製のデジタル時計がApple IIやマッキントッシュに対応していた」というもので、Apple側が開発に関わっていたのかどうかは不明で、「Apple Watchの先祖」という表現が正しいかどうかは微妙なところ。
なお、セイコーの古いデジタル時計は一部のファンに人気が高く、特に人気のあるモデルは中古でも高価格で取引されています。また、今回出品されたRC-4000は、倉庫にしまわれていて箱や説明書も未開封だったものであり、ほぼ新品のかなり状態が良いものではあるので、万が一注目度が上がればかなりの値がつく可能性はあるといえます。
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