Microsoft Azureのスーパーコンピューター「Voyager-EUS2」が、世界最速スパコンのトップ10リストに初登場した。
このMicrosoft製スパコンはベンチマーク速度で30Pflop/sを達成。中国の「Tianhe-2A」や米エネルギー省のIBM製スパコン「Summit」には及ばないが、Microsoftはハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の世界ランキング「TOP500」でトップ10に入るスパコンを持つ、唯一の大手クラウド事業者となった。
Voyager-EUS2は、今回のトップ10リストに加わった唯一の新システムだ。首位は引き続き日本の「富嶽」が維持し、763万コア、Linpackベンチマークスコアは442Pflop/sだった。
「Flops(フロップス)」は、1秒間に処理可能な浮動小数点演算の回数を示す単位だ。気象パターンのシミュレーションなど、特に科学分野のスパコン性能をあらわすために用いられる。このようなスパコンのプログラムは「Fortran」などのプログラミング言語で書かれることが多い。
富岳のベンチマークは、2位のSummitの3倍を誇る。Summitは米エネルギー省が後援する米国最速のHPCシステムで、ベンチマークスコアは148.8Pflop/sだった。IBMの「Power9」CPUをベースに、1ノード当たり22のコア、6つの「NVIDIA Tesla V100」GPUを搭載した4356のノードで構成される。
3位には米カリフォルニア大学ローレンス・リバモア国立研究所の「Sierra」が付けた。このシステムもCPUにPower9、GPUにはNVIDIA Tesla V100を採用し、94.6Pflop/sを記録した。
10位に入ったMicrosoftの「Azure」システムは、今回のトップ10リストに初登場した唯一のスパコンであり、このリストにパブリッククラウド事業者が登場するのも史上初となった。
Voyager-EUS2は、Microsoftの「Azure East US 2」リージョンで稼働しており、いくつかの点で注目に値する。最初のポイントは、当然と言えば当然だが、Linuxベースのシステム(「Ubuntu 18.04 LTS」版)であることだ。「AMD EPYC」CPUを搭載し、コア数は25万3440となっている。
現在、Microsoftのクラウドではほとんどの仮想マシン(VM)がLinux上で動作していることを考えると、AzureスパコンのOSがUbuntuであることは驚くに値しない。実際、Linuxのディストリビューションは世界の主要スパコンのすべてで採用されている。
「今回のトップ10リストに初登場した唯一のシステムは、Microsoftの米国リージョンに設置されたMicrosoft AzureのVoyager-EUS2だ」と、TOP500.orgは発表した。
「Voyager-EUS2は30.05Pflop/sを達成し、10位にランクインした。48コア、2.45GHzのAMD EPYCプロセッサ、80GBのメモリーを搭載した『NVIDIA A100』GPUで構成され、データ転送には『Mellanox HDR Infiniband』を用いる」
Microsoftは今週、TOP500リストに5台のAzureスパコンがランクインしたことを発表した。Microsoftはスパコンを人工知能(AI)に活用しており、「Azure HPC」をサービスとして販売している。
同社は、NVIDIA A100 Tensor Core GPUを2倍の80GBを搭載したAzure仮想マシン(VM)「NDm A100 v4シリーズ」の一般提供を開始したことも発表した。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。