繊毛を振動させて進むマイクロロボットが胃を通って患部の細胞に薬を運ぶところを想像してほしい。スイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究者らが、開発した最新のマイクロロボットで実現したいと思っているのはそうした未来だ。
提供:Cornel Dillinger/ETH Zurich
同大学の科学者チームは、ヒトデの幼生の動きにヒントを得たマイクロロボットを開発した。まだ名前も付いていないこのロボットは、わずか4分の1mmの大きさで、生まれたばかりのヒトデなど、あらゆる微生物の表面にある小さな毛、つまり繊毛を動かして液体の中を泳ぐ。
モデルとなったヒトデの幼生のように、この小型ロボットには本体から斜めに突き出た繊毛の束が生えている。この人工の繊毛は、外部の超音波源を利用して1秒間に1万回振動させられる。これは、ヒトデの幼生より約1000倍速い振動速度だ。
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繊毛が高速で振動すると、ロボットの前後に極小の渦が発生する。この渦によって、前方では引く力が、後方では押す力が生じ、超小型ロボットを前進させる。
研究を主導したのは、生命科学とヘルスケアに利用可能な音響ロボット工学を専門とするDaniel Ahmed教授だ。
「当初は単に、ハの字型あるいは逆ハの字型に向かい合った繊毛の列を利用して、ヒトデの幼生が作るものと同じような渦を作れるかどうかを試したかっただけだ」(Ahmed氏)
この技術は、人の体内の届きにくい場所に命を救う薬を運ぶのに最適な方法となり得るもので、Ahmed氏は近い将来、このロボットを実際の医療に応用できると考えている。
「われわれは、超音波を推進力、イメージング、ドラッグデリバリー(薬物送達)に利用することを視野に入れている」(Ahmed氏)
しかし、人体の内部でロボットを操作するには、リアルタイムで鮮明な画像が必要だ。研究チームにとって、これが次の大きな課題となる。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。