衆議院選挙の結果は、マスコミの予想と違った。
自民党は261(−15)議席と単独で絶対安定多数を確保、公明党は32(+3)議席と健闘し、合計で293議席の多数を得た。
立憲民主党は96(−13)議席と、100議席を下回り後退。共産党は10(−2)議席、国民民主党は11(+3)議席、れいわ新選組は3(+2)議席、社民党は1(±0)議席を得た。
日本維新の会は、41(30)議席と4倍増近い躍進で、第3党に躍り出て法案提出権も獲得した。
維新は、「自公政権には批判的だが、共産党の入る野党連合は受け入れがたい」と考える有権者の受け皿となったのである。選挙のスローガンで、多くの党が「分配」を連呼する中で、「改革」を叫び、差別化したのもプラスに働いた。
菅政権の下では、官邸べったりの姿勢をとっていたが、岸田政権になり、総選挙となると、俄然野党色を強めた。
自民党が連立の相手を公明党から維新へ変えることも、理論的には可能になったし、維新が加われば、他の改憲勢力と合わせて改憲に必要な3分の2の多数を確保できることになる。
維新については「よ党」でも「や党」でもない「ゆ党」だと言われてきたが、今後、国会でどのようなスタンスをとっていくのか興味深いし、今後の日本の政治に一定の影響力を持っていくであろう。
共産党に対する有権者のアレルギーは消えておらず、それが野党協力を不発に終わらせた。東京8区で自民党の石原伸晃幹事長が落選したが、これなどは野党共闘の成果である。しかし、全体としてみれば、立民党も共産党も議席を減らし、敗北している。
その意味で、岸田政権の勝利の理由の一部は敵失によると言ってもよい。自公で293もの議席を確保したので、岸田首相が国会運営で苦労することはあるまい。しかし、甘利幹事長が小選挙区で敗退したのは前代未聞であり、比例で復活したものの、幹事長の交代は必至となり、後任に茂木外相が決まった。安倍、麻生、甘利という3Aに支えられて政権を発足させた岸田首相にとっては大きな痛手である。
さらには、石原伸晃の落選に加え、野党でも小沢一郎、中村喜四郎が選挙区で敗退するというような事例が各地で起こったが、変化と世代交代を求める声が高まっていることを意味する。
今回の衆院選が来年夏の参議院選挙にどのように影響するのか注目に値する。衆院選の投票結果をそのまま参院選に適用すると、自民党は過半数を獲得できる。しかし、政治の世界は、「一寸先は闇」である。どうなるかは、これからの岸田首相の舵取りにかかっている。