メガネをかけている子どもを見ると、なんとなく「頭がよさそう」と感じてしまう人は多いはず。実際に、2000人を超える子どもたちを対象に行われた大規模実験から、「視力の悪い子どもに適切なメガネを与えると学業成績が向上する」という結果が明らかになりました。
Effect of a Randomized Interventional School-Based Vision Program on Academic Performance of Students in Grades 3 to 7: A Cluster Randomized Clinical Trial | Ophthalmology | JAMA Ophthalmology | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamaophthalmology/article-abstract/2783867
Eyeglasses for school kids boost academic performance, study finds | Hub
https://hub.jhu.edu/2021/09/09/glasses-boost-student-performance-vision-for-baltimore/
Landmark Vision Experiment in Kids Reveals What We Should Have Seen All Along
https://www.sciencealert.com/groundbreaking-vision-experiment-shows-what-we-what-we-should-have-seen-all-along
メガネと成績を結びつけるのはステレオタイプな考えかもしれませんが、目が悪いのにメガネをかけていなければ、学校の授業で黒板が見えにくかったり、教科書の細かい字が読みにくかったりするのも事実です。しかし、アメリカでは視力が悪いのに適切なメガネを持っていない子どもが200万人以上もいるとのこと。
そこで、ジョンズ・ホプキンス大学や非営利団体のVision To Learnのチームは、「Vision for Baltimore」という学校ベースのプログラムを立ち上げました。このプログラムは公立学校に通う子どもたちに無料の視力検査を実施し、適切な度数のメガネを提供するというもの。2016年に開始したVision for Baltimoreは、5年間で6万4000人の子どもの視力測定を行い、合計8000個以上のメガネを配布してきたそうです。
無料配布プログラムと並行して、ジョンズ・ホプキンス大学などの研究チームは2016年から2019年にかけて、3年生~7年生(日本における小学3年生~中学1年生)の生徒2304人を対象にしたランダム化比較試験を行いました。この実験では生徒を2グループに分けて、実験群には視力検査に基づいて適切なメガネを与え、対照群にはメガネを与えませんでした。
実験開始時と1年後にリーディングと算数のテストを行って2グループの結果を比較したところ、無料のメガネを与えられた実験群の生徒は対照群の生徒と比較して、1年後の成績が向上したことが確認されました。メガネの影響は特に実験開始時に最も成績が低かった生徒や女子生徒、そして特別支援教育を受けている生徒で著しいという結果でした。
ジョンズ・ホプキンス大学の眼科学准教授を務めるミーガン・コリンズ氏は、「私たちは、子どもたちにメガネを与えることが学校で成功するのに役立つことを厳密に示しました」「メガネはそれを必要としている子どもたち、つまり学校で苦労している子どもたちに最大の利益をもたらしました」と述べました。
メガネを与えられたことによる学業成績の向上は、メガネを与えられなかった生徒と比較して2~4カ月追加の教育を受けるのと同等でした。特に成績が下位25%の生徒や特別支援教育を受けている生徒の場合、メガネを与えられたことで4~6カ月の追加学習に相当する成績向上が見られたとのこと。
ところが、メガネを与えられたことによる成績向上は、2年後のテストでは持続しませんでした。研究チームはこの理由について、メガネを壊したり紛失したりしたため、生徒が時間と共にメガネをかけなくなったせいではないかと考えています。研究者は、メガネを与えることで生徒の成績向上につなげたい場合は、メガネをちゃんと着用していることを確認し、必要に応じてレンズを交換する取り組みの開発が必要だと述べました。
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