テレ朝が社員逮捕で見せた優しさ – 阿曽山大噴火

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは10月27日に東京地裁で行われた篠宮康希被告人(28)の住居侵入と窃盗の初公判。テレビ朝日の社員が六本木のマンションの一室に侵入してワイヤレスイヤホンを盗んだと報じられた事件です。

東京オリンピック閉会式後の宴会報道からなぜかテレ朝の不祥事が相次いで報じられましたが、その中でも逮捕にまで至った事件になります。

法廷の入り口には開廷15分前から11人の傍聴希望者が並んでいたので、そこそこの注目度でしょう。

起訴されたのは、今年の5月30日午前4時55分〜4時59分の間、被告人が港区六本木にあるマンションの被害者宅に無施錠の玄関から侵入してワイヤレスイヤホン1セット(1万円相当)を盗んだ件。

被告人は罪状認否で「間違いありません」と罪を認めていました。

検察官の冒頭陳述によると、被告人は大学卒業後に会社員として働き、犯行当時も同じ会社に勤めていたそうです。前科前歴は無く、今回が初めての逮捕。

そして、犯行当日。被告人は散歩をしていたところ被害者が住むマンションを見て、もしカギが開いている部屋があったら侵入しようと考え、敷地内に入り被害者宅のドアノブを回したとのこと。するとカギが掛かってなかったのでそのまま部屋に入り、テーブルの上に置いてあるAirPodsを盗んだといいます。奥のベッドで被害者が寝ている事に気付いた被告人は部屋を出て、マンション敷地内から逃走。防犯カメラの映像で被告人が特定され、今年8月に逮捕に至ったというのが事件の流れです。

被害者は取り調べに対し「帰宅してカギを閉めてなかった。この日は午前3時頃に就寝して、5時頃に物音がしたので目が覚めた。リュックの中を漁っている人がいたので『ハロー』と声をかけると部屋からすぐに出て行った」と述べているようです。なんで「ハロー」なのかと思ったら、被害者は外国人で咄嗟に英語が出たのでしょう。

一方、被告人は取り調べに対し「それなりに給料は貰っていたが、それを超える消費をしており借金が最大で400万円あった。当日は気晴らしに散歩をしていて、カギが開いていて人がいなければと思って侵入をした。盗ったワイヤレスイヤホンは被害者の名前が表示されるので、自分の名前に変えて使っていた」と供述しているそうです。

テレビ局の社員って結構稼いでいるイメージだけど400万円も借金を抱えていたようですね。金に困って追い詰められての犯行というのは分かったけど、犯行が大胆過ぎるし、サクッと盗みをしていて手慣れている印象も受けるし、思い付きでやるような内容でもないし、物凄い違和感のある事件。

朝5時に玄関から侵入 AirPodsを盗んで逃げる

弁護人からは、被告人の両親が被害者宛てに書いた謝罪文だけが提出されて、被告人質問です。

弁護人「まず、検察官が読み上げた起訴状に間違いはないですか?」
被告人「はい」
弁護人「防犯カメラの映像によると、マンションの敷地内に入ったのが午前4時55分。被害者の部屋に入って盗みをして1階まで降りてマンションから出たのが4時59分であると。自分の中でも4分くらいという認識ですかね?」
被告人「そうですね」
弁護人「部屋に入ってからなんですけど、AirPodsはどこに置いていましたか?」
被告人「玄関から入ってすぐのスペースと言いますか、奥の方ではなく手前のリビングに近い所のローテーブルの上にありました」
弁護人「盗って、被害者を認識するまでの時間はどれくらいでした?」
被告人「部屋にはゆっくり入りまして、AirPodsを見つけると同時に奥なのかベッドなのか人がいる気配に気付いて、盗るとすぐに部屋を出ました」
弁護人「部屋の中を物色したりはしていないと?」
被告人「はい」
弁護人「でも取り調べでは、物色しようと思っていたと答えていますよね?」
被告人「人がいなければしていたかも知れませんが、すぐに出ました」

金目の物がないか探したり部屋を荒らしたりはしてないというアピールでしょうけど、逆に手慣れていて簡単に盗みを成功させたという能力の高さを証明しているような気も。

弁護人「今、被害者に対してはどのように考えていますか?」
被告人「心から申し訳ない気持ちで、自分の勝手な衝動によって物を盗ったという事と、自分の住居に知らない人が侵入するという恐怖は計り知れないもの。これは自分に置き換えてみても考えられないくらいの恐怖を与えてしまったと思っています」
弁護人「示談交渉はどうなっていますか?」
被告人「交渉はさせて頂いているんですが、1回目は断られまして。2回目は、今は国外にいらっしゃるそうで連絡がついてないです…」

被害者とは検察官を介しても連絡取れない状況らしいです。謝りたいのに謝れないというのもなかなかツライものですね。

弁護人「今後連絡が取れたら被害を弁償するつもりなんですよね?」
被告人「裁判でどういう結果が出てもやってしまった事は変えられませんが、与えてしまった被害だけは弁償したいです。私が与えた恐怖、同じ所に住むのも怖いと思いますので引っ越しの費用などを…」
弁護人「それは両親とも話し合っているんですか?」
被告人「はい。借金がありましてすぐに自分のお金だけでは被害に弁償ができませんので、両親から借りて被害者の方にお支払いしたいです」
弁護人「いくらを予定しますか?」
被告人「六本木という場所柄、敷金と礼金でザックリ70〜80万円…あと謝罪も含めまして、100万円と考えています」

考えているのは反省の表れだからいいけど、被害者と連絡つかないわけで、払いたくても払えないのが現実。公開捜査のテレビ番組とかもあるけど、この件をテレ朝で探すわけにもいかないしねぇ。

弁護人「ドアを開ける時、どのような迷惑が掛かるのか考える事はできていましたか?」
被告人「いや、できていませんでした」
弁護人「考えられなかったのはなぜだと思います?」
被告人「入ってしまいたい、何かあれば盗ってしまいたいという衝動があって…被害者が受ける被害を想像できていなかったのは、他人の気持ちを考えずに日頃から自分の欲や衝動を優先してきたところがありま……」
弁護人「途中だけど切りますね。長いので」

いろいろ喋りたいという衝動が被告人にはあるのでしょう。刑事裁判は端的に話すのをよしとしているので、長々とダラダラ理由を語る被告人の言葉を弁護人が中断したわけです。

普段から路上喫煙をしていた被告人「規範意識の低い人間だと思い知りました」

弁護人「で、なぜ優先させたと思っています?」
被告人「ある程度の給料を頂くようになって、なんでも自由に解決して暮らしていく中でルールを守るとか他人に迷惑をかけないというのが欠落していました」
弁護人「400万円の借金もそういう考えが原因なのでしょうか?」
被告人「何か欲しい物があれば買う。したい事があればするという浪費が原因だと思います」

キー局のテレビ局の社員がいくら稼いでいるのか知らないけど、高給なイメージのある職業ですよね。そんな給料を手にして驕り高ぶってしまったという事なのでしょう。

弁護人「保釈されて、同居中の家族から何か言われました?」
被告人「ここまでだらしない…借金がある事も言っていませんでしたし、父からの言葉で…自分という人間が規範意識の低い人間であるというのを思い知りました。普段から路上喫煙をしたり、借金も返済しないでのうのうと生きていて迷惑をかける事への意識が著しく弱くなっていました」

お父さんから何を言われたのかは明かされなかったけど、路上喫煙という小さなルール違反の繰り返しが空き巣という犯行に走らせてしまう規範意識の低さの土台作りになっていたようですね。

弁護人「面会には家族だけじゃなく友人も来てくれましたよね?」
被告人「ホントに…まずは、ボクが犯罪者であるにもかかわらず……『元気で良かった』と心配してくれて…」
弁護人「犯行当時、家族や友人のhできていましたか?」
被告人「できていませんでした」

罪を犯した事で自分を想ってくれている人がいる事を知るとはね。反抗前、優しさに触れる事ができていれば。

弁護人「会社の方は懲戒免職ですか?」
被告人「はい。会社にも迷惑掛けたと思っているので、申し訳ないです」

とクビになった会社にも謝罪して、弁護人からの質問は終了。