白鵬の条件付き襲名 排外意識か – 非国民通信

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白鵬の引退と「間垣」襲名承認 異例の条件付き、誓約書にサイン―相撲協会(時事通信)

 日本相撲協会は30日、東京・両国国技館で理事会を開き、横綱白鵬(36)=本名白鵬翔、モンゴル出身、宮城野部屋=の引退と年寄「間垣」襲名を承認した。白鵬は10月1日午後3時から両国国技館で記者会見を開き、引退を決断した理由などを説明する。

 理事会では白鵬の間垣襲名を認めるに当たり、年寄として当然守るべき事項を誓約することを条件とした。白鵬は両国国技館を訪れ、師匠の宮城野親方(元幕内竹葉山)が同席した上で誓約書にサイン。5月に年寄名跡を取得したが、その際に年寄資格審査委員会から受けた忠告がその後守られなかったため、条件付きという異例の襲名となった。

 相撲協会によると、白鵬が誓約した事項は「新人の親方として、理事長をはじめ先輩親方の指揮命令、指導をよく聞き、本場所等、与えられた業務を誠実に行うこと」「大相撲の伝統文化や相撲道の精神、協会の規則、ルールやマナー、相撲界の習わし、しきたりを守り、そこから逸脱した言動を行わないこと」。

 さて通算勝ち星を筆頭に大相撲史上の数限りない「歴代1位」の記録を持つ白鵬がついに引退することとなりました。現役としては最後まで強さを見せたわけですが、土俵の外では負けてなるものかと日本相撲協会の理事会が息巻いていることが伝えられています。旧態依然たる相撲界には変革が求められるところですけれど、ここで突きつけられた誓約書に従っている限り、白鵬という歴代最高力士による改革は難しそうです。

 この処遇が公平なものであるかは、もう少し問われるべきではとも思います。白鵬の実績を鑑みれば、逆に特権を付与するという方がまだしも理解できるのですが、「条件付きという異例の襲名」にどれほどの正当性があるのでしょうか。かつて相撲協会から解雇された蒼国来が地位確認を求めて訴訟を起こし、解雇無効の判決を下されたことがあります。白鵬も裁判に出れば、土俵の外でも勝てそうな気がしますね。

 相撲界隈の報道では「日本出身」という言葉がよく使われます。「日本出身力士が10年ぶりに優勝」ですとか、「19年ぶりの日本出身横綱の誕生」等々。これは要するに同じ日本国籍でも、モンゴルやハワイなど海外出身の力士と出身も日本である力士を区別するための表現で、典型的な「差別ではなく区別!」と言った感じですが、この「日本出身の○○」が登場する都度メディアを大いに賑わせてきたわけです。

 日本国籍の力士の優勝は、珍しいことではありません。ただ出身地が日本国内ではなくモンゴルだったりするだけです。日本国籍の横綱も大いに活躍していますが、やはり日本ではなくモンゴルの出身だったりします。そうした中で相撲界隈では「日本出身」に特別な期待を抱き続けてきました。結局のところ、日本国籍を取得しようと国外の出身者は日本人とは違う───そんなメッセージを発信し続けてきたと言えます。

 「(安倍内閣は)白鵬の取り口に似ている。左手で張り手、右からひじ打ちを顔面に入れる。白鵬は覇道、邪道の相撲になっている。安倍政権も覇道、邪道、外道の政治だ」とは、現在は立憲民主党の最高顧問を務める野田佳彦の2016年の街頭演説における発言です。白鵬に準えられるのは名誉なことと言えなくもありませんが、野田に言わせれば覇道、邪道、外道を象徴するもののようです。

 外国出身者に向けたこうした視線が、排外主義者としてしかるべく白眼視されている人々からではなく、むしろ差別主義者からは毛嫌いされているメディアや政党関係者から飛び出してくるあたりに、我々の社会の地金を窺うことが出来るように思います。ともするとレイシズムとは距離があるように見える人々でも、こうした外国出身者への姿勢を見ればお里が知れると言ったところではないでしょうか。

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