英北部スコットランド・グラスゴーで開幕したCOP26(筆者撮影)
英首相「石炭、車、金、木について行動を起こそう」
[英北部スコットランド・グラスゴー発]地球温暖化対策に取り組む国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が10月31日、ジョー・バイデン米大統領ら世界の政治指導者約120人、各国の代表団など数千人を集めて英北部スコットランドのグラスゴーで開幕した。11月12日まで開かれる。
2015年に採択された国際的な枠組み「パリ協定」は産業革命前に比べ世界の平均気温の上昇を摂氏2度未満、できれば1.5度以内に抑えることを目指している。
ホスト国のボリス・ジョンソン英首相は11月1日の開幕セレモニーで「人類は気候変動の問題に取り組んできた。(気温上昇を1.5度以内に抑えるための最終列車が出発する)深夜零時まであと1分。私たちは今すぐ行動を起こす必要がある。日付が変わって子供たちが取り組んだとしても遅すぎる」と危機感を募らせた。
「私たちは石炭(脱石炭)、車(電気自動車への切り替え)、現金(気候変動対策資金)、木(光合成で二酸化炭素=CO2を吸収する森林破壊の阻止)について話し合いや議論から協調した現実的な行動に移らなければならない。希望や目標、願望ではなく、明確な約束と変化のための具体的なタイムテーブルが必要だ」
ジョンソン首相は、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(18)が温暖化対策に取り組むと誓ったこれまでの大人たちの言葉を「くだらない、くだらない、くだらない」と切り捨てたフレーズを引き、トゥンベリさんに代表される若い世代の期待を裏切らないようCOP26を意味ある会合にしようと誓った。
国連によると、現時点で各国が表明している排出量の削減目標では世界の平均気温は2.7度上昇する。しかし10月30、31日にローマで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言では「今世紀半ばごろまでに排出量のネットゼロまたはカーボンニュートラルを達成することの重要性を認識する」という表現にとどまった。
「カーボンニュートラル」は温室効果ガス排出量から植林、森林管理のほかCCSやCCUSなどCO2回収・貯留技術を含めた吸収量を差し引いて実質ゼロにすることを指す。排出量の正味ゼロを目指す「ネットゼロ」とは、まだ実用化のメドが立ったとは言えないCCSなどの吸収量を勘定に入れ、排出をある程度認めるか否かという微妙なニュアンスの違いがある。
石炭火力発電についてG20首脳宣言は「新しい排出削減対策が講じられていない石炭火力発電に対する国際的な公的資金の提供を2021年末までに終了する」としたものの、国内での石炭火力発電の段階的廃止には触れなかった。60年までに「カーボンニュートラル」を目指す中国や世界の原油確認埋蔵量の17%を占めるサウジアラビアなどに配慮するかたちとなった。
G20首脳宣言への失望感
世界の排出量の8割を占めるG20の首脳宣言に対し、アントニオ・グテーレス国連事務総長はツイートで「G20が地球規模の解決策に再コミットしたことを歓迎するが、希望が叶わないままローマを後にする。しかし少なくとも死んではいない。グラスゴーでのCOP26に向け1.5度目標を維持し、人々と地球のため約束を実行していこう」と失望感を隠さなかった。
「炭素(化石燃料)を燃焼させる古い開発モデルが自国経済と地球にとって死刑宣告だと認識する必要がある。今すべての国の全セクターで脱炭素化が求められている。アマゾンの一部では吸収量より排出量の方が多くなっている。海面上昇は30年前の2倍になった。未来と人類を救うため野心と連帯感をもって今すぐ行動しなければならない」と訴えた。
COP26でグテーレス事務総長は「私たちは墓穴を掘り続けている。失敗は死刑宣告を意味する。途上国を支援するため年1千億ドル(約11兆4200億円)の気候変動対策資金の約束を実現しなければならない。最も苦しんでいる人々、途上国や島嶼国は緊急の資金を必要としている」と呼びかけた。