【ペクチン】いちばんかわいい名前の食品成分を決めよう【ミラクリン】

デイリーポータルZ

デイリーポータルZのライター、編集者が5名集まり、「いちばんかわいい名前の食品成分」はなにかを考えてみた。

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの花屋。花を売った金で酒を買っている。

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事のおこりは2021年9月。『「ミラクルフルーツ」でキウイが高級フルーツの味になる』という記事を書いた。その中の一節をご覧いただきたい。

「ミラクリン」。ミラクルフルーツの不思議成分「ミラクリン」。この名前をつけた人に拍手を送りたい。
担当編集の石川さんに「ミラクリンて名前、すごくかわいくないですか」とメッセージを送ったところ、「ペクチンに並ぶかわいさですね」と返信がきた。

筆者は思う。
「ミラクリン」と「ペクチン」だったら、どう考えてもミラクリンの方がかわいいだろう、と…。
その考えを正直に伝えたところ、しばらくしてこの通知が筆者のスマートフォンを鳴らした。

「では戦いましょう」

 

……。

 

 

それでは、参加選手の紹介です

突然開催してしまい申し訳ない。
メッセージを交わしたほんの数秒で「ミラクリン」「ペクチン」というかわいい名前が挙がるくらいだから、きっと世の中には筆者の知らないかわいい名前の食品成分がたくさんあるはずなのだ。
今回は以下のメンバーをお招きし、各々が持ち寄った「最もかわいいと思う食品成分の名前」をプレゼンしていただくことにした。

加藤まさゆき
ライター。本業が理科教員であるため、「食品成分の名前」の引き出しは参加者の中で最も多いはず。

北向ハナウタ
ライター。『チーバくんばっかずるい! 都道府県キャラクターを考える会 』という記事を書くなど、「かわいいもの」について考えることに長けている。

パリッコ
酒場ライター。酒カルチャーや食べ物に精通しており、ニッチな食品成分を知っている可能性大。

石川大樹
デイリーポータルZ編集部。選手権前日に「ぜったいに勝てるスライドを用意しました」という宣戦布告を成した強者(つわもの)。 

JUNERAY
この記事を書いているライター。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。食べ物のことについてはちょっとよくわかっていない。

今回はこの5名で競わせていただきます

ちなみに「ミラクリン」は筆者の心の中でかわいい殿堂入りを果たしてしまったため、今回は別の単語で戦わせていただきたいと思う(編集・石川さんも、今回は「ペクチン」以外の単語で攻めにくるそうだ)。
 

皆さん、突然「かわいい食品成分名を持ち寄って戦いましょう」と声をかけたにも関わらず、よくぞお集まり下さいました。

「ペクチン」みたいなやつ、と聞いてすぐピンときたので大丈夫です。

「食品成分」というと幅広いですが、実在の食品に含まれていたらOKという認識でいいでしょうか?

そうです!かなり広い範囲から探していただいたと思うので、参加者皆さんの目の付けどころが問われます。

「かわいさ」を強調するプレゼン力も重要になりそうですね。

それでは石川さんから、JUNERAY→加藤さん→パリッコさん→北向さんの順でプレゼンしていただきましょう。それでは石川さん、どうぞ!

石川のプレゼン

僕が持ってきたかわいい栄養は…こちらです!

イヌリンです。

あははは

かわいい〜〜

急にくるかわいさ

もう、聞いた瞬間に「かわいい…」となりますよね。イヌリンって、「イヌ」たす「りん」なんですよ。

イヌ+りん=イヌリン

それは確かにそう。

まず「犬」といえば「人類最古のパートナー」。2018年の調査によると、日本には推定890万3千頭の飼い犬がいるそうです。

へえー!

めちゃくちゃいっぱいいる!

とにかく犬と人間の愛情はすごいんですよ。そこにさらに「りん」!これは「あーりん」「ゆうこりん」など、かわいい愛称の定番です。つまり「イヌ」も「りん」も、かわいさの実績があると。

理論上もっともかわいいイヌリン

単語を分解してかわいさの分析をしている…

つまり言葉の響きだけじゃなく、実績ベースで見てかわいいのが「イヌリン」です。歴史に裏付けされたかわいさがある。

「イヌリン」って、なんの食べ物に含まれてる成分なんですか?

調べたところ、イヌリンは食物繊維の一種らしく、チコリやゴボウ、玉ねぎ等に多く含まれているそうです。

株式会社明治 水溶性食物繊維イヌリン より

 

「チコリに含まれているイヌリン」。

そう、「チコリ」も名前としてかなりかわいいですよね…。「イヌリン」は「チコリ」に含まれる成分として相応しいかわいさじゃないですか?

図解:かわいいものはかわいいものに宿る

ゴボウや玉ねぎはかわいいんでしょうか…。

玉ねぎはフォルムがかわいいかも?

ゴボウもちょっと野暮ったそうなところがかわいいじゃないですか。イヌリンを摂取する効果としては、腸内環境の改善などが期待されているそうです。つまり、腸の中でイヌリンが走り回るわけですよね…このように。

腸内をかけまわるイヌリン

このイメージ図で合ってる?

人体をドッグランに…?

我々の体内にあるドッグランで、イヌリンが走り回っているところを想像してください。かわいいでしょう…非の打ち所のないかわいさですよ。

イヌリンを摂取したくなってきました。

イヌリンって、授業でも習うんですよ。生物の腎臓のはたらきのところで。

へー!

授業中にイヌリンて単語がでてくると、みんなやっぱりハッとしますよね。かわいい名前だから。

やっぱり!イヌリンには知名度がある…テストでも正解率高いんじゃないですか?

まず忘れないですね。なんならそこだけ覚えてるくらいの勢い。

すごい!やっぱりイヌリンが優勝だと思います!

学生の心も掴むイヌリン。イヌ+りんのコンビネーションで、さっそく優勝候補か?

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JUNERAYのプレゼン

まずこれだけ言わせてください。石川さんのプレゼンを見て、勝利を確信しました。

どういうことですか?

私が推すかわいい食品成分は、こちらです!

「クマリン」

うわー!!!

イヌリンからのクマリン!

ライバル登場だ!!

そりゃあ後の方が有利ですよ!

「りん」という語尾がかわいいということについては、石川さんが “クマリンを引き立たせるために” ご説明くださいましたが…

くそー!ライバルに有利になってしまうとは…

クマもかわいいキャラクターの定番ですからね。「クマリン」の名から想像するに、見た目はきっとこうです。

「クマリン」想像図

あっはは このポーズ!

これは完全に「クマリン」だ。

見た目の強さにおののく

クマリンは何かというと…桜の葉っぱやシナモンなどに含まれる芳香成分です。

うわああ〜…!玉ねぎやチコリよりかわいい気がする…!

じゅるじゅる

「桜餅のにおい」なのはキャッチーでかわいい気がします。

この時点で素晴らしいんですけど、クマリンはかわいいだけでなく、なんと…

光るんですよ。

えええ〜〜!?

突然の展開に驚きを隠せない一同

ブラックライトを当てると光るので、石油などの燃料が混和されていないかのチェックに使われているそうです。 

へえ〜!!実用的だ、クマリン。

しかもかわいいだけじゃないんですよ。今どき、どんなキャラクターもかわいいだけではやっていけません。クマリンは…

たまに ひとを おそうよ!

多量の摂取で肝臓の障害を引き起こすことがあるそうです。こうした「取り扱い注意」な面も、多面性からくる魅力ですよね。昔大人気だったグルーミーなんかも人を襲ってたし。 

内側から破壊してくるタイプのクマ、怖すぎる

というわけで!かわいい上に実用性もあってちょっと怖い。明らかにイヌリンよりもクマリンの方が魅力的でしょう。

ちょっとイヌリンの悪口言うのやめてもらえます!?

「イヌリンの次のクマリン」という、後攻の利をフル活用するJUNERAY。イヌvsクマの決着はいかに。

〜加藤のプレゼン〜

開始早々この絵面の強さ

すごい!この画面、完全にオンライン授業だ…

私は理科の教員なんですけど、有機化学の授業でいつも気になってる言葉があるんです。それが、ムコ多糖が構成する「ムチン」。

ムチン…

聞きなれない名前だと思うので、順を追って説明していきましょう。まず糖類っていうのは、こういうグループ分けをされています。

「単糖類」はブドウ糖、果糖なんかね。で、「多糖類」になると、ちょっとイメージし辛いけどデンプンとか。

うわ〜〜!!先生!!

急に「授業」が始まり大喜びの一同。

そしてまず問題になる単語、「ムコ多糖」。

「ムコ多糖」

むこたとう…

声に出して言いたくなる、ムコ多糖…

この「ムコ」の部分が気になると。こういうイメージになってしまう。

あははは

ムコ多糖ゥ。

この「ムコ」について調べていくと、色々あるんですよ。皆さんがご存知の「グルタミン」とか、「ヒアルロン酸」とか。で、何に含まれているのかと言うと、動物の粘液成分である「ムチン」…。これを合成していると。

株式会社サンベールHP ムコ多糖とは より

ムチン…。

ムチン……

気になりますよね?ムチン…! 

ムチン…!

声に出して言いたくなる「ムチン」!色々なものに含まれていますが、語源は「動物の粘液」である「mucus」。それがなぜだかムチンと呼ばれるようになってしまったと。

普通に勉強になる…

オクラや山芋のねばねば成分らしい

で、胃の表面なんかにもよく分泌されているんで、ムチン、ムチン、ムチン…

胃壁から分泌され、胃酸から胃を守るムチン、ムチン、ムチン…

繰り返すのはずるい

じわじわ面白くなってきた

ヒトの正常な腸内では、病原菌を跳ね返す役目を負っています。こう…ムチーン!と跳ね返すわけですね。

名前と機能が一致してる!

ただ一つ悲しいお知らせがあって…2019年 ムチレージの乱。ここ覚えてくださいね。

ムチレージの乱!?

植物性の粘液成分は「ムチン」ではないという話がでてきて、それが浸透してしまった。だから「ムチン」という名前は、今は日本でしか使われていません。今後は植物性の成分はムチレージ、動物性の成分はムチンと呼ばれることになるでしょう。

ムチンからムチレージになるの、ポケモンみたいですね。

「ムチレージ」に取って代わられちゃったところも含めて、ムチンのかわいさなんじゃないかと思います。

「イヌ」や「クマ」なんかの既成概念に頼る必要はないと…!

人間の体内にもムチンがいるわけですからね。かなり身近な物質です。

そのムチンの上をイヌリンが走り回ってるとしたら、イヌリンの方がかわいくないですか?

ムチンの上を走り回るイヌリン

それはちょっとどうかな……
 

理科の先生らしい理論と、「ムチン」を連発するというパワープレイの合わせ技で行われたプレゼン。隙のなさは優勝候補か!?

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〜パリッコのプレゼン〜

いろいろリサーチしてみたんですけど、この単語がダントツでかわいいなと思いました。

パリッコが選んだ食品成分

オスモチン!?

こんなんあるんだ…!

もう聞いた瞬間に、皆さんの頭の中でイメージできたと思うんですよ。「オスモチン」がどんな姿か。

​​​​​「オスモチン」のイメージ

こうですよね。

爆笑

これは…!!

完全にこれです、オスモチン。

オスモチンについて見た目しか知らなかったので調べてみたんですけど、ジャガイモやトウモロコシに含まれる植物由来のペプチドだそうです。

ファイトケミカルということは、オスモチンは戦うこともできると。

そうです!しかも「クマリン」のような悪者ではなくて、守るために戦うんですよ。

オスモチンに期待される効能

インフルエンザまで!

かわいいだけでなく、強くてやさしいのがオスモチン。悪の「メタボリックシンドローム」を撃退する、ケミカルファイターなんです!

ハッケ ヨーイ!!
かわいい!!

キラシールのオスモチンだ!

これ出たら嬉しいなあ

皆さんの体内でも、こんな風に果敢に戦ってるんですよ…

体内世界 メタボリックシンドロームvsオスモチン

野菜を武器にして戦ってる!

メタボリックシンドローム、めちゃくちゃ悪そうな見た目だな〜

ここが腸内なら、カメラフレーム外でイヌリンが走り回ってるんですよね?

足元にムチンもいますよ。

これからはね、トウモロコシやジャガイモを食べるときはオスモチンのことを思い出していただいて。

野菜を食べないとメタボリックシンドロームがくるぞと。
 

 栄養で戦うヒーローが誕生してしまった。オスモチンはかわいさでも勝利を掴めるのか!?

〜北向ハナウタのプレゼン〜

いままで「イヌリン」「クマリン」「ムチン」そして「オスモチン」ときました。どれもかわいいですが、かわいさのベクトルが同じ向きだなと思うんですよね。そこで、ちょっと毛色の違うこいつを提案します。

「グァー」です。

あははは!

ああ〜なるほど…そんな手が…

意外なワードに、三者三様の反応

「グァーガム」とも呼ばれます。グァーって名前、ウルトラマンに出てくる怪獣「ウー」みたいなシンプルなかわいさがあるんですよね。

右画像は「ウルトラマン ウー」google画像検索結果より

グァーは間違いなく鳴き声でしょうね。

グァーがなにかっていうと、「増粘安定剤」。もともとグァーという豆があって、その豆から得られる多糖類だそうです。

缶ジュースの成分表で見たことあります。

そうそう、ジュースとか、アイスクリームに使われてるらしいです。

多糖類ってことは「ムチン」の仲間ですか?

多糖類いっぱいあるからなあ。かんたんに仲間と言っていいものか。

グァー、怪獣っぽい名前だけど実際できることは「ただ食品にとろみを付けるだけ」なんですよ。

それはかなりかわいい。

おそらく見た目もこんな感じだろうと。

かわいい〜!

かわいいなあ…こいつがとろみを…

小さくて動くのめっちゃ遅そう…

グァーに和む人々

グァ〜って言ってる文字もかわいい。

強めに押すと「グァ〜」って鳴くんでしょうね。

ポケモンのベトベターっぽいなと思ったんですけど、目の感じとか断然グァーの方がかわいいですね。

ベトベターはけっこう「やる目」をしてますもんね。

 弱さ=かわいさという新しい理論で「グァー」を推す北向。シンプルなかわいさが最も強いのかもしれない。

〜優勝成分はどれだ!?〜

さて、全候補が出揃ったわけですが…

「イヌリン」、「クマリン」、「ムチン」、「オスモチン」、「グァー」。正直ぜんぶかわいくて選べないですよね。

そうなんですよ。ここで話し合って第一回の優勝者を決めようとおもっていたのですが、全成分に愛着が湧いてしまって…

もう読者の方に選んでいただくのはどうですか?

いいですね、おひとり1票ずつ投票していただいて。僕たちはもう、この平和な世界に順位をつけられない。

あはは。かわいい話をしてたらこちらも士気を削がれてしまいましたね。

……ということで、第一回「かわいい栄養成分選手権」の優勝成分は、いまこの記事を読んでいるあなたの判断に委ねたい。
下にアンケートフォームを設置した。参加選手それぞれのプレゼンを聞き、最もかわいいと思った成分に一人一票まで投票していただきたい。

「かわいさの歴史と実績」イヌリン、「かわいいだけじゃない魅力」のクマリン、「連呼されることで力を増していく」ムチン、「ケミカルファイター」オスモチン、「弱さこそかわいさ」のグァー。第一回の優勝成分はどれだ!?

↓投票はこちら↓
(集計期間は記事公開日から3日間です。)

各選手のプレゼンをふまえ、どの食品がいちばんかわいいと思いますか?

〜おまけトーク〜

JUNERAY:みなさん、今回推した栄養素以外の候補ってありましたか?

加藤:それ聞きたかった。僕はパパイヤの成分、「パパイン」を考えてました。

北向:パパインはかなりかわいいな。「パ」の連続が強い。おれは「サポニン」、「バニリン」、「コハクさん」あたりも考えてました。

石川:危ない!バニリンはイヌリンへの第三の刺客じゃないですか。

JUNERAY:見た目はきっとうさちゃん。

パリッコ:ちょっとかわいいかどうかは別として、松茸の芳香成分が「マツタケオール」なのが好きなんですよね。

JUNERAY:それはかなりいい名前。

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