巨大ミミズ!『ヤンバルフトミミズ』を探せ!

デイリーポータルZ

巨大なヒカゲヘゴが茂るやんばるの森

沖縄本島北部に広がる原生の自然を残した山林地帯、通称『やんばる』が世界自然遺産に指定された

やんばるといえば巨大生物の宝庫であり、とにかく「日本最大の○○」なる称号をもつ動植物たちが多い。

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日本最大の甲虫!ヤンバルテナガコガネ
日本最大のシダ植物!ヒカゲヘゴ
日本最大の淡水エビ!コンジンテナガエビ
日本最大のムカデ!リュウジンオオムカデ……といった具合だ。

いずれもその迫力から自然好きからは人気が高く、メディアで取り上げられることも多い。

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コンジンテナガエビ
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リュウジンオオムカデ

だがもうひとつ、やんばるには人目につきにくくSNSでも映えにくいタイプの巨大生物がいる。ミミズだ!!
その名も『ヤンバルフトミミズ』!

というわけで今回は巨大ミミズを探す旅に出るぞー。

わずかな記憶を頼りに…

とはいえ、実をいうと今回のターゲットであるヤンバルフトミミズを、僕はすでに何度か見たことがあるのだ。
何か別の生物を探している折に「やんばるでぶっといミミズを見かけた」記憶は複数ある。

ただ、そんなものを目撃しておきながら「『どこかで見かけた』と流すのはおかしい、SNSで報告してバズりの洗礼を受けておくべきだ」という意見もあるだろう。だが、これまでフォーカスしなかったのには理由がある。

まず、①たまに見かけても露出しているのは一部分のみでまともに撮影もできなかったし②まぁ、ミミズなんてまたいつでも見れるやろ…となめてかかっていたし、なによりも勉強不足ゆえ③まさかやんばる固有の希少な種とは思ってもみなかったためである。

上記③については、そもそも巨大ミミズはやんばるだけの専売特許ではなく、その他の地域にも複数種が分布していることに起因する。

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国産巨大ミミズの写真を持っていなかったので、参考までにブラジルの大ミミズを。ミニョカスー(ミニョッカ=ミミズ、アスー=大きい の意)

それこそ僕が生まれ育った長崎では雨上がりの山道を歩くと「シーボルトミミズ」なる青い大きなミミズが出没する。
小学生の時分から山へ遠足へ出向くたびにブルーでジャイアントなアースワームがのたうつ場面に遭遇したものである。苦手な人が見たら卒倒しそうな存在感だった。

さらに琵琶湖周辺の一部地域では「ハッタジュズイミミズ」というこれまた体長60cm以上に達するといわれる(ミミズはその時々でかなり伸び縮みするので、長さ○○cmと具体的に表記するのが難しい)大型ミミズが見られるという。
さらには奈良県の一部などにも正体不明の巨大ミミズが生息しているとされるなど、大きなミミズ話というのは意外とよく耳にするものなのだ。

それゆえ「あー。やんばるにもシーボルトミミズ的なやつがいるんだな!」とサラリ軽〜く受け流していたのである。

だが、最近になってやんばるならではの種であることを知り(沖縄の自然を紹介するテレビ番組でも取り上げられたらしい)、「あっ、やっぱちゃんと見ときたい!」とミーハーが発動した次第というわけである。

で、仕事がひと段落した深夜、気軽に鍬的なものを片手に秋のやんばるへ出発したのだった。

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すごくちっちゃいヤシガニ(世界最大の陸上節足動物)に遭遇。

路上には夏ほどではないものの、沖縄らしい生物たちが姿を現してくれる。
だが、そんなやんばるからの粋なはからいは関係ねえ。今回のターゲットは土中にいるのだから。

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天然記念物のイボイモリも
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日本最大の毒蛇・ハブの姿も

過去に何度も「どっかで見かけた」ミミズだが、残念ながら「どっか」がどこなのかという肝心なところを思い出すことができない。

だが!そんなもんはたいした問題ではない。
ヤンバルフトミミズの食べ物は落ち葉だというから、要は落ち葉が溜まっている場所を探せばいいのだろう。簡単な話だ。

だが沖縄は年中暖かく土壌中の微生物や虫が活発なため、落ち葉はガンガン分解されてしまいほとんど地表にたまらない。

しかし唯一、やたらと積もりに積もる場所がある。林道沿いの側溝だ。

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落ち葉のホットスポット、側溝。

コンクリート張りの側溝には本来土中に生息する土壌動物が少ないため、落ち葉の分解が遅いのだ。
ヤンバルフトミミズ、ここにいるだろ!俺がヤンバルフトミミズならここに住むね!!
迷わず落ち葉を掘り返す。よっしゃ、到着早々に取材終了だな!

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落ち葉をほじくり返すと…!
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ふつうサイズのミミズが…

…いない。
たまにノーマルサイズのミミズたちは出てくるが、それすら多くはない。読みが外れた。

いや、そもそも「コンクリート張りの側溝には本来土中に生息する土壌動物が少ない」と他ならぬ自分自身が書いているではないか。ヤンバルフトミミズだって典型的な土壌動物である。
ここにいないのは道理かもしれない。

さぁ困ったぞ!
ここで土壌動物の調査をしている知人から聞いたある話を思い出した。
「ヤンバルフトミミズは落ち葉を集めて地表に小さな落ち葉の山を作る」というのだ。

土の中から半身を乗り出し、落ち葉を口に咥えてよいしょよいしょと一ヶ所に運ぶのだろうか。想像してみると実にかわいい。

ならばと林床に「落ち葉の山」を探してみるが、それらしいものは見当たらない。
万策尽きた感じだが、まだ推理の余地はある。

わざわざ「エサとなる落ち葉を身のまわりに集める」ということは、積もった落ち葉の中ではなく粘土質の土壌(エサとして利用できない)に潜んでいるのではないだろうか?

というわけでそんなミミズ目線でいう「貧しい土」を探してみる。

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落ち葉はパラパラ落ちているが、そのすぐ下は硬い粘土質。俺がミミズだったらここには住みたくねえなぁ〜…。しかし!
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いたー!!

落ちている石をひっくり返すと、その下にぶっといミミズが!急いでひっつかむと、やはり「ヤンバルフトミミズ」だった。

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