ワイン D2C の ウィンク 、EC 急成長を追い風に早期IPOへ:収益構造のテコ入れも進める

DIGIDAY

D2Cの新興企業が1年間の爆発的な成長のあとで株式公開を目指すことは多い。ウィンク(Winc)もその一例だ。

ウィンクはロサンゼルスを拠点とするデジタルワインクラブで、2011年に設立され、ニューヨーク証券取引所にWBEVというティッカーで上場される。同社は今日までに5420万ドル(約61億8000万円)の資金を集めている。ウィンクにはカスタマーエクイティプログラムもあり、1月の時点で1600万ドル(約18億2000万円)を集め、それ以後は投資の受け付けを停止している。

米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)にウィンクが提出したフォームS-1によれば、同社はパンデミックの禍中で膨大な成長を達成した。2019年末から2020年末までの期間に売上は3640万ドル(約41億5000万円)から6470万ドル(約73憶8000万円)へと77.5%も増加した。さらに2021年の前半の売上は、前年比で20.4%増加した。ウィンクは2020年に、D2Cデジタルクラブで43万ケースのワインを販売した。これに対して、ウィンクの損失は2019年の800万ドル(約9億1200万円)から、2020年末には700万ドル(約7億9800万円)へと減少している。同社は継続的な成長と収益性改善のため、商品提供の拡大と、より多くの消費者が蒸留酒をオンラインで購入する方向性を目指している。

早期IPOの狙い

過去1年半にわたる急速な成長にもかかわらずウィンクは、最近株式を公開した、または公開のための書類を提出したほかのD2C企業よりはるかに規模が小さい。オネストカンパニー(Honest Company)とオールバーズ(Allbirds)はどちらも最近株式公開の書類を提出したが、2020年の売上はそれぞれ3億ドル(約342億円)と2億2000万ドル(約251億円)である。ウィンクは、1年間の爆発的成長のあとで株式公開を選んだ最新のD2C新興企業であり、まだ収益を上げておらず、キャスパー(Casper)やワービーパーカー(Warby Parker)などほかの著名なD2C企業と同等の規模にも達していない。

エッジバイアセンシャル(Edge by Ascential)のeコマースインサイトマネージャーを務めるケイト・カラス氏は、ウィンクのIPOは近年の「投資家が、現在収益を上げているビジネスモデルより、収益性への道を示している若い企業をより好むようになってきた」傾向に従ったものだとしている。

このIPOのタイミングは、ウィンクの規模が依然として、デジタルワインの分野のなかでも比較的小さいことを考慮すると、さらに興味深いものだ。たとえば、D2C競合他社のファーストリーフ(Firstleaf)は、同社によれば現在15万人のアクティブなメンバーを抱えている。ウィンクは2021年6月30日の時点で自社のクラブメンバーは約12万人だとしている。

コロナ禍で受けた恩恵を持続するために

ウィンクにとって、今後の消費者がパンデミック前の酒類の購入習慣に戻るかどうかが大きな不確定要素だと、カラス氏は語る。従来はワイン販売のほとんどがオフラインで行われていたが、シリコンバレーバンク(Silicon Valley Bank)によれば、オンラインで販売されたワインの割合は2018年の8.6%から2020年の16.2%へと大幅に増大した。

ウィンクの売上の大部分は従来型の蒸留酒の卸売チャンネルではなくD2Cチャンネルによるもので、カラス氏によれば「この点において、(eコマースへの浸透度が高い)ほかの分野のD2C企業よりも高い不確定要素に直面している」。

同社はIPOを公表するまでの1年に、自社のデジタルファーストのモデルを多様化しようと試みてきた。その一部が卸売業者との提携を増やしていることであると、共同創設者のブライアン・スミス氏は昨年米モダンリテールに語った

オーガニックワインや日本酒も発売

ウィンクは、より多くの加入者にアピールできるよう、ワインのポートフォリオの多様化も行っている。ウィンクは今年の夏、自然派、オーガニック、ヴィーガンのワインをホールフーズ(Whole Foods)やトレーダージョーズ(Trader Joe’s)などの小売業者に配送しているナチュラルマーチャント(Natural Merchants)を買収した。この買収により、ウィンクのワインSKUの半分近くが自然派ワインで占められるようになった。

この追加は、消費者が自然派ワインを好むようになったことに合わせて、ウィンクが2020年にワンダフルワインコー(Wonderful Wine Co.)ブランドを立ち上げたあとで行われた。ウィンクによれば、このラインは「オーガニックのブドウから作られ、カーボンフットプリントが低い方法で製造およびパッケージされた、サステイナブルで低糖のボトル」を提供している。

同社は8月に、新しいカテゴリの最初の商品として、日本酒のブランドを追加しており、今後もこのカテゴリの拡大を予定している。ウィンクはS-1で、自社のプラットフォームにはワイン以外のアルコール飲料を販売できるポテンシャルがあると述べている。同社は「当社独自のオムニチャンネルプラットフォームは、まったく新しいカテゴリにも適用可能であると考える」と記載しており、市場シェアを増やせる可能性がある商品として蒸留酒、ビール、ノンアルコール飲料を挙げている。

D2Cの株式公開がもたらすもの

アルバレズ&マーサル・コンシューマー・アンド・リテールグループ(Alvarez & Marsal Consumer and Retail Group)のマネージングディレクターであるトルエット・ホーン氏は、若く、デジタルネイティブの新興企業が自社の将来の財務に関する選択肢を考えるとき、IPOはより広範な流動性の基礎となり、拡大計画の資金を集めるのに役立つと、米モダンリテールに語った。

ホーン氏は、オンラインでのアルコール販売はコロナウイルス関連のロックダウンの恩恵を受けており、このカテゴリはさらに多くのエグジットが揃っていると注釈した。「ほんの数日前、ウーバー(Uber)がドリズリー(Drizly)を買収したときの終値は、アルコール配送がどのような方向に向かっているかを示す兆候だ」。

株式公開は信用度にも関係し、企業の認知度を向上させるとホーン氏は述べている。「(IPOにより)在庫、サプライチェーン、配送、全国や現地の小売業者と提携する能力の流動的なスケーリングが可能になる」。

[原文:Winc, encouraged by e-commerce growth, files to go public]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Winc

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