「4℃」への過剰な批判に疑問 – いいんちょ

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“初アポがラーメン店”を嫌悪する婚活女子たち

最近友達のネット偵察班から聞いたのだけど、「婚活女子の界隈ではラーメンアポがNG」という、暗黙のルールがあるらしい。見知った彼氏や夫に連れて行かれるのはありだけど、大事な婚活の初アポでラーメン店とは何事だ、失礼ではないか、こんな男ムリ~、ということなのだそうだ。

まずそれがラーメン店に失礼だろという気持ちは置いておいて、果たしてラーメン店を選ぶことが、失礼に当たるのだろうか。

ラーメン店に連れて行かれて憤慨している女性たちはきっと、相手男性が「このレベルの女なら、ラーメン店で十分だ」とラーメン店を選んだと思っているのだろう。しかし、男性側だって婚活しているわけで、そんな相手を軽視した行動をとるはずがない。「初アポだし、ここは美味しい店に招待しないと」と熟慮の末、「よし、ここは、美味いあのラーメン店!(どどん)」となった可能性も十分ある。「美味しいお店に連れて行ってください!」と伝えただけで、シャレたフレンチやオープンカフェ、ホテルのアフタヌーンティーに連れて行ってくれるほど、「美味しいお店」について国民的な合意は取られていない。

“初アポがラーメン店”と“結婚相手に相応しいかどうか”は別問題

他人事ではあるけど、そういう女性を見ていると、やるせない気持ちにさせられる。どうか、「アポでラーメン店はだめ! 失礼!」というあなたに、ちょっと踏みとどまってほしい。そんなことで相手を見知った気になって切ってしまうのは、もったいない。

アポするのだってすぐに簡単にできるわけではない。こいつと会っていいのかとチャットやなんやで吟味した挙げ句、仕事や予定を割いて調整して、ようやくこぎつけた初アポである。そこでラーメン店に連れて行ったぐらいで、「なし」フォルダにその男を入れていいのだろうか? を考えてみてもらいたい。

というのも、「初対面でラーメン店に連れて行かれた不快感」は、「生涯のパートナーとして不適当」ということとは、実は全く別の次元の問題の気がするのだ。それは男があなたの好みをわかっていないだけ、だとは言えないだろうか。それならば、今からでもチューニング可能ではないだろうか。

それに、状況を深読みしなければならない。初アポがラーメン店ということは、女慣れしていない可能性がある。長期的な関係を構築していく上で、それは好材料になり得るではないか。

たかが初アポの場所がラーメン店だったぐらいで、その人の何が判断できるのだろう。あなたは雰囲気がいい、センスもいい、一緒に歩いていて恥ずかしくないメンズを探しているわけではなく、生涯の伴侶(仮)を探しているわけだろ。

SNSの価値観に踊らされる人たち

この話題と関連して、ジュエリーブランド「4℃」への、主にSNS上での風当たりも度を越していると思う。毎年、年末が近づいてくるにつれて、ダサいブランド、渡されたら末代までの恥と思え、とされるブランドとして、確固たる地位を確立した感がある4℃だ。プレゼントで4℃を渡されたら屈辱であるし、相手男性は「なし」の烙印が確定的とされている。

別にここで「4℃はダサくない」「洗練されているぞ」と、反論したいわけではない。物事に対してダサいと感じるのは人の勝手で「4℃がダサい」という人がいても当然だ。

問題は、「4℃=ダサい」という他人の価値観に対して、後からやってきて一緒に騒いでいる人たちの方である。共感、賛同が大きなムーヴメントになっていくSNS上には、得てしてこうした自分の価値観を他人に差し出してしまう人が少なくない。4℃をめぐる言説についても、同じことが言える。もともとは4℃について何の悪感情も持っていなかった、もしかすると好意的でさえあった人までも、訳知り顔で「4℃はダサい」の価値観に染まってしまっている可能性がある、

今一度、胸に手を当てて考えてみてほしい。あなたは本当に4℃をダサいと思っていますか? もしかすると、SNS上で支配的な価値観に踊らされているだけではありませんか?

あなたにとっての正解は、他のどこにもなく、あなたの中にしかないんだよ。

「今」に固執しすぎる人たちへ

初アポがラーメン店の話題も、4℃の話題も、婚活者に考えてみてほしいのだが、結婚後の人生には1ミリも関わってこないということだ。映画で言うなら、配給会社のロゴの部分。まだ本編に入ってすらいない場所だ。

初アポでどんな素敵な感じの良い店に連れていかれたとて、どんな高価で素敵な贈り物をプレゼントされたとて、結婚が上手くいくとは限らない。むしろ、初アポラーメン店や、プレゼントが4℃だったときのほうが、笑える思い出として語り継がれるだろう。二次利用は容易だ。

初アポラーメン店や4℃を忌避する気持ちは、圧倒的に「今」「この瞬間」の気持ちに比重を置きすぎるぐらい置いた価値判断だ。今一度、「婚活女子」という自分の肩書を思い返してほしい。結婚とは、気が遠くなるほど長く、果てしない旅路だ。「今」の気持ちに流されない選択をしてもらいたい。