静岡県伊東市に「伊豆シャボテン動物公園」という施設がある。
ははぁ、サボテンと動物があるのね、と思うだろう。ちょっと知っている人は「カピバラもいるよ」とおっしゃるだろう。
でも違うんですよ。それだけじゃなかったんですよ。
ちょっと見てもらえますか。
駐車場でクジャクに出迎えられる
伊豆シャボテン動物公園。どこにあるかというと伊豆半島のこの辺である。東京から車で2時間から3時間くらいといったところ。
ちなみに公式HPの「アクセス」によると、最寄り駅はJR伊東駅か、伊豆急行線の伊豆高原駅。どっちの駅からも車でちょっとかかる。
以前、伊豆に家族で訪れたとき、宿の近くに「伊豆シャボテン動物公園」があると知ったのだ。
伊豆・シャボテン・動物。まるで三題噺のような取り合わせ。昔、那須高原で「3Dメルヘン水族館」という施設を見かけたことを思い出す。
3Dでメルヘンで水族館ってなんなんだ、というのは今は置いておいて、伊豆シャボテン動物公園である。世間的には「カピバラの露天風呂」で有名らしい。確かになんかテレビで見たことある。
で、時間もあるしちょっと寄ってみようかね、という軽い気持ちで行ったのだった。
車を走らせ、道路に面した入口から入る。そこから駐車場までの道のりで、出会ったのがこれ。
道にクジャク。ただちに停車である。どうしたどうした?
あとでわかったことなのだけど、伊豆シャボテン動物公園では園内でクジャクを放し飼いしており、駐車場まで彼らのナワバリらしい。
確かに全然逃げない。「うちのナワバリになにか?」という佇まい。
これはただ事ではない、という予感を抱えながら、駐車場に車を止めいざ入園。
ゲートをくぐり、チケットをもぎられ奥へ進むと、ちょっとした広場に出る。
その広場から見る、入園して最初の景色がこれだ。
とても静かだ。静かなのだけど情報量が多くないか。
ひとつひとつ見ていきたい。
奥にでっかい山がある。でも、なぜか木が一本も生えていない。
この山、ここに来るまでにもチラチラ視界に入っていて気になっていた。実は伊豆シャボテン動物公園のものではなくて、隣に位置する「大室山」という山。
大室山の標高は580m。伊豆東部火山群のひとつであり、山全体が国の天然記念物。
かつては茅ぶき屋根でお馴染みの「茅(かや)」の採草地であり、雑草を処理するため山焼きが行われていたそう。木が一本も生えていないのはそのせい。
現在は茅を育ててはいないが、山焼きは「観光イベント」として毎年行われているという。
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で、最初に山焼きを観光に利用しようと考えたのが、伊豆シャボテン動物公園らしい(大室山登山リフトオフィシャルサイト より)。すごい。そこも絡んでるんだ。
よし。あの広場が大室山を借景としているのはわかった。
じゃぁこれはなんだ。
先に言っておくと、白いピラミッドみたいなのはサボテンの温室で、両脇にある遺跡(戦士の像)は詳しく説明します。
それ以外に、白ピラミッドの手前になにかいるのだ。カメラをのぞいてズームしてみる。
この動物公園には、無数の鳩を乗せた巨鳥がいるらしい。
でも、この場で得られる情報はここまで。「巨鳥がいるな……」と思いながら、我々は園内を回る。
フラミンゴが近すぎる。アロエがでかすぎる。
広場のそばに「バードパラダイス」というエリアがあった。
園内の一区画がネットで囲われており、その中で鳥たちが放し飼いになっているという。「じゃぁさっきのクジャクは?」と思いつつ、パラダイスに足を踏み入れてみる。
パラダイスの中は珍しい鳥たちでいっぱいだった。放し飼いということもあり、鳥たちと人間のあいだには何の仕切りもない。
するとどうなるかというと、こんなことになっている。
通路のそばでフラミンゴが何羽も立っているのだ。
みんな身体に首をつっこんでじっとしている。手を伸ばせば足がつかめそうなほど近い。フラミンゴと並んでのツーショット写真だって可能だ(撮り忘れたけど)
鳥たちが人類へ寄せる信頼を裏切らないよう、紳士淑女の振る舞いでパラダイスをあとにする。
その先は、動物たちが暮らしているエリア。
やっと一般的な動物園の感じになってきましたね、と思っていると、こんな光景にぶつかる。
「ロックガーデン」と名付けられたこのエリア、古代メキシコ文明の石像のレプリカがドドンと並び、植物も負けじとデカい。
「ロックガーデン」の「ロック」は、かつて溶岩だった岩壁。
約5000年前、さっきの大室山が噴火(大室噴火)した際、溶岩の流出口に「岩室山」という山ができた。その岩室山の上に、伊豆シャボテン動物公園はできてるという。
巨鳥の正体が明らかに
ロックガーデンを抜けると、プレーリードッグが暮らしていた。
このプレーリードッグ、どんなところに住んでいるかというと、こんなお住まいである。
写真をよくご覧いただきたいのだけど、ここ、檻になっていない。
プレーリードッグはとても小さく、周りを囲む壁を越えられない。そんなわけで周囲はとても開放的になっており、彼らの姿をじっくり観察することができる。いわゆる「行動展示」のひとつだろう。
ただ、あまりに開放的なぶん、こんなトラブルも起こる。
中から出られないかもしれないが、外から入り放題なのだった。
大自然ではおよそ起きえないコラボレーションを堪能しつつ、先に進む。
そんなこんなで動物たちのエリアを抜ける。
すると、目の前にアレが現れた。
広場から見えた巨鳥!
デカい鳥……と思っていたが、後ろ足のほうをみると、なんだか恐竜っぽさもある。鳥獣だ。あとで調べてみると、かつて「高原竜ヒドラ」としてウルトラマンに登場したこともあるという。
しかしこの像、ただオブジェとして座っているのではない。伊豆シャボテン動物公園にとって、重要な役割を果たしている。
それはなんでしょう?
あの白ピラミッドの温室、ここから入るのである。前脚のあいだから地下にトンネルが延びているのだ。
「なぜここから……?」と思いながら歩を進める。
白ピラミッドは全部で5つ。それぞれ「南アメリカ館」「メキシコ館」「マダガスカル館」など地域に分かれており、世界中のサボテンを堪能できる。
メキシコの砂漠にあるような「あのサボテン」もあれば、地を這うように伸びるもの、モシャモシャした姿のもの、マリモみたいにまん丸のものと、同じサボテンでもこんなに種類があるのかと驚く。
特に、さっきの写真の右下にあるマリモ状のやつですが、
どうやらあの大きさになるまで50年ほどかかるみたい。そういえばサボテンの年齢なんて意識したことなかった。こんなにジワジワと大きくなるのか。
通路脇にポツンとたたずんでいたフクロウ。本物そっくりだなぁと思いきや本物である。
白ピラミッドのひとつが、フクロウ放し飼いエリアの「フクロウの森」になっていた。
もうひとつのバードパラダイスがここにもあった。そろりそろりと温室を抜ける。
5つの温室をすべて抜け、最後にたどりつくのが「シャボテン狩り工房」である。
エリア内にはサボテンや多肉植物がたくさん植えられている。それらを自由に取り、器を選ぶと、最後に寄せ植えしてお土産にできるのだ。
さっきは巨大なサボテンに圧倒されたが、小さな多肉植物たちは色も形もさまざまで、とてもかわいい。家族も目移りしながら選んでいた。
動物も見た。サボテンも見た。かわいいお土産も買った。
しかし、伊豆シャボテン動物公園はまだまだ終わらない。園内マップを確認すると、まだ全てのエリアの半分を回ったにすぎなかった。
本物の動物がいるジャングルクルーズ
「ちょっと寄ってみよう」というつもりで来たので、残りの全エリアを回る時間がない。体力もだいぶ使ってしまった。こんなに広いとは……。
残された力を振り絞り、やってきたのは「アニマルボートツアーズ」。
ディズニーランドに「ジャングルクルーズ」というアトラクションがあるじゃないですか。ボートに乗ってジャングルを探検し、野生動物たちを見つけたりするやつ。
その野生動物が「本物」なのがアニマルボートツアーズです。
大人10人乗りくらいの小型ボートに乗って、園内の運河を巡る。ジャングルクルーズと違うのは、説明のテンションはそこまで高くないこと。
逆に、あんなハイテンションで説明を繰り出したら、動物がビックリしてしまうだろう。リアルなジャングルのクルーズは息を潜めるのが正解である。
サルたちの島には、島を結ぶようにロープが渡されており、サルたちがロープの上をするすると移動できるようになっていた。
リスザルに至っては、そのロープが園内にも延びている。クジャクだけでなく、リスザルも園内放し飼いなのだった(別途「リスザルの森」というリスザルの冠がついたエリアまである)
大小8つの島をぐるっと巡って帰ってきた。希望すればサルの餌やり体験もできるそう。
これ本当にすごかったので、惜しげもなく公式のYouTubeも貼ってしまおう。
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もうすっかり満ち足りた気分でボートから下りると、目の前にあるのはインコの放し飼いエリアである。
もう何度この記事で「放し飼い」って書いたことか。
上からリスザルがちょっかいをかけてきて、キィキィとケンカしていたりする。よく逃げないなと思ったら……
最後に「レッサーパンダ館」に寄って、我々一家の伊豆シャボテン動物公園は終わった。
1日必要
こんなに写真を使ってレポートしたのに、まだまだ行ってないエリアがある。「アニマルショー」も「わくわくモンキーハウス」も「なかよし牧場」も「カンガルーの丘」もあったのに。
これから伊豆シャボテン動物公園に行かれる方は、1日予定を空けることをオススメします。